明日の株式相場に向けて=ホルムズの濃霧が晴れる日
きょう(12日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比572円安の5万4452円と3日ぶりに反落。日替わりで株式市場を取りまく景色も目まぐるしく変わる。情報が入り乱れるなか、マーケットも揺れに揺れている。きょうは取引時間中も戻るかとみせては売り直され、下落スピードが加速して緊張が走ると、次の瞬間には下げ渋るという投資家心理を弄(もてあそ)ぶような地合いが延々と続いた。日経平均は後場寄りに1200円超の急落を強いられたが、そこがこの日の最安値地点でターニングポイントとなり、それ以降は上下動を繰り返しながらも下げ幅を縮小していく流れとなった。後場だけを見れば高値引けで、その点では前日と真逆で引け味は悪くなかった。
中東を巡る報道に敏感な地合いが続くが、そのニュースフローを一つ一つ拾っていくのも難儀であり、やはり数値化されたものの方が株価に与えるベクトルとして分かりやすい。これはつまり、外国為替市場と原油先物価格のグローベックスを含めたリアルタイムの値動きがニュースフローの代理を担う。もっとも、原油と為替の上下動に株価が振り回され続けるというのも困った話で、やはり今は中東情勢にメドがつくまでは、基本は資金を手元に置いて激流に身を置かず、眺めている側に回った方が賢明といえる。きょうも日経平均は下げ渋ったが、個別株をみるとプライム市場の92%が下落。全面安という形容以外になく、保有株が少ないほど利を得ている勘定となる。
「落ちてくるナイフはつかむな」というが、今は四方八方からナイフが飛んでくるような地合いである。ナイフをつかもうとする(リバウンドを狙う)という行為以前に、横から飛んでくるナイフから身を躱(かわ)す方に神経を使うような状況だ。例外的に追い風が吹いているセクターは 防衛と エネルギー関連ということになるが、基本的には打診買いにとどめ、キャッシュポジションを維持することが大事である。
原油に関しては前日に国際エネルギー機関(IEA)の加盟国が、石油備蓄の協調放出で合意したことが伝わった。放出量は4億バレルでこれは過去最高規模という。ロシアのウクライナ侵攻の時も原油高騰で同じような場面に遭遇したが、この時は1億8000万バレルの放出であった。今回はその時の2倍以上で、今の戦争がもたらす原油市況への影響力の大きさを物語っている。ちなみに4億バレルというのは、リッター換算では636億リットルで、これは東京ドーム50杯分という膨大な量である。そして驚くべきは、これだけ備蓄放出をすると報じられた後の原油市況の反応であった。WTI原油先物価格はいったん下がったものの、すぐに再上昇に転じた。1バレル=120ドル近辺から87ドル前後まで下がったのも束の間、再び90ドル台を超えてきた。
株式市場を含め「相場」は思惑で動くが、それでもその思惑の下に合理的な思考は常に底流しているものだ。備蓄放出に関して物量でイメージすると膨大だが、世界の原油の消費量から換算すると4億バレルはわずか4日で使い切ってしまう量である。4億バレルを1回ぶち込んだところで焼け石に水、とマーケットは言っている。ホルムズ海峡の封鎖がもたらす影響はそれほど大きい。また一方で、これは瞬間的に解決する手段が存在する。「トランプ米大統領がイランへの攻撃をやめて対話すると宣言すれば、瞬く間にホルムズの霧は晴れる」(ネット証券ストラテジスト)というものだ。何はともあれ、今回ばかりはトランプ氏に一刻も早くTACOってほしいと考えている政治家や運用関係者は多いはずである。
個別株の9割以上が下落するような相場環境下、ここで買い出動することに合理性はないが、こういう相場環境ならではの需給を原動力とするモメンタムな銘柄はある。直近ではジャパンディスプレイ<6740>が27円前後から112円(前日の高値)までわずか3営業日で4倍以上に大化けした。ほとんどマネーゲームの世界だが、日本円で約86兆円の対米投融資の新たな候補として、政府が米国での最先端ディスプレー工場の運営をJディスプレに打診したという報道が株価を突き動かす材料となった。きょうは急反落したが、続報が期待されるところで、場合によってはもうひと回りスケールの大きい相場に発展する可能性も念頭に置きたい。防衛関連では、電子・通信機器の防衛事業向けが急伸長し、売上構成比の57%に達したとされる多摩川ホールディングス<6838>。また、エネルギー関連では日本製鉄<5401>を筆頭株主に、第2位株主の住友商事<8053>を合わせ3社連携体制を構築している日本コークス工業<3315>も超低位ながら全員参加型材料株の素地がある。
あすは、株価指数先物・オプション3月物の特別清算指数(メジャーSQ)算出日にあたる。また、前場取引時間中に3カ月物国庫短期証券の入札、10年物クライメート・トランジション国債の入札が行われる。個別企業では神戸物産<3038>の26年10月期第1四半期(25年11月~26年1月)決算が発表される。海外では1月のユーロ圏鉱工業生産指数が開示されるほか、米国で重要経済指標の発表が相次ぐ。1月の米個人所得・個人消費支出、個人消費支出物価指数(PCEデフレーター)にマーケットの関心が高いが、それ以外に25年10~12月期米実質国内総生産(GDP)改定値、1月の米雇用動態調査(JOLTS)、1月の米耐久財受注額、3月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・速報値)などが注目される。(銀)