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【特集】暴落の連鎖――止まらない世界株安は“終わりの始まり”なのか <株探トップ特集>

暴落の連鎖が止まらない。10月に入って次々に浮上する“懸念材料”を前に、世界株高の歯車は逆回転を始めた。マーケットはいま、何を織り込もうとしているのか――。

―焦点は世界景気、陰り始めた企業業績の行方―

 25日の東京株式市場では日経平均株価が800円を超える暴落となり、2万1200円近辺まで下落、3月29日以来7ヵ月ぶりの安値水準に沈んだ。東証1部の値下がり銘柄数は2000銘柄を上回り、全体の98%が下落するという記録的な売り一色の地合いが演出された。

 前日の米国株市場ではNYダウ が600ドルを超える下げをみせたほか、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数については約330ポイントの下落で5月初旬以来の7000トビ台まで売り込まれる暴落となった。この米国で発生したリスクオフの大波が東京市場にも押し寄せてきた。これまで、米長期金利の動向に神経を尖(とが)らせていたマーケットだったが、これに米中貿易戦争などを背景に企業業績に対する懸念が絡みついたことで、世界景気減速へと売りのステージを変えた。トランプ米大統領の打ち出す「アメリカ・ファースト」のマイナス要素がにわかに色濃くなってきた。

 それにしても、波状的に売りが押し寄せる10月相場には嘆息するよりない。振り返れば東京市場は今月2日の取引時間中までは強気ムードに完全支配されていた。この日に日経平均2万4448円の高値まで買われ、連日で27年ぶりの高値圏をひた走っていたのだから、それも当然だ。27年前と言えばバブルの余韻冷めやらぬ1991年の秋のこと。その後、日本株は長期にわたるデフレ相場に突入したが、その長いトンネルからの完全離脱を果たすとともに、アベノミクス相場における最高値到達で意気上がる局面であったはずだ。そして米国株市場でも10月3日にNYダウが2万6951ドルの史上最高値に買われている。ところが、そこからわずか20日あまり、予想だにしなかった暴風雨に晒されている。

 日本株は米国株市場と一蓮托生にあるが、9月から10月初めにかけてはこれがこのうえなく良い形で反映されていた。しかし、歯車が逆回転する時も同時進行となることを今回思い知らされている。これは他の先進国や新興国マーケットもそれぞれタイムラグはあるとはいえ、同様の時間軸にあるといってよい。世界株市場はまさに負のスパイラルに巻き込まれようとしている。

 前方視界不良の極みにある東京市場。マーケットのプロの目には今何が見えているのか。日本株、米国株、為替動向などについて第一線で活躍する市場関係者5人に緊急アンケートを実施した。

<日本株>

●「米長期金利上昇が下げの本質ではない」

太田千尋氏(SMBC日興証券 投資情報部部長)

 これまでは米長期金利上昇のせいにしていた部分があったが、実際には企業の業績見通しと投資家の期待とのギャップが株価下落の背景といってよい。日米ともに景気や企業業績への懸念が浮き彫りとなっている以上、この不安材料は今後の経済指標などを逐次確認していく必要があり、すぐには払拭できない類いのものだ。目先のリバウンドはあっても、大勢トレンドが上向きに変わるには数ヵ月の時を要するとみている。

●「9年半にわたる長期上昇トレンドの終焉」

植木靖男(株式評論家)

 日本も米国も2009年3月を起点とした9年半にわたる長期上昇相場が終了した、ということははっきりしたと考えている。米国株市場では、NYダウが10月3日の高値2万6951ドル81セントで大天井を打った可能性が高い。今後リバウンドはあるはずだが、これは2番天井をつけに行くプロセスといえるだろう。当面はどこで下げ止まるかだが、企業業績が減益に転じるというコンセンサスが強まれば、PERなどの株価指標はあまり役に立たない。

●「日経平均の下値メドは2万800円水準」

大谷正之氏(証券ジャパン 調査情報部長)

 NYダウがここにきて下げ足を速めているのは、米中貿易摩擦や中東の地政学リスクに加えて、米企業に具体的な業績不透明感が加わってきたためだ。日本の株式市場は、急落に伴う極端に弱気な地合いに支配されて、決算内容を冷静に株価に反映し難い状態にある。日経平均は今年3月にPER12倍まで売り込まれたが、これを現状に当てはめると約2万800円という水準が弾き出され、ここが下値メドとなりそうだ。

<米国株>

●「FRBの引き締め姿勢の転換が焦点に」

 益嶋 裕氏(マネックス証券マーケット・アナリスト)

 米株急落の背景には、金利上昇のなかFRBの金融引き締め姿勢が続くと、本当に景気悪化を招くことになりかねないという警戒感がある。もちろん、米中貿易戦争や中国経済の失速に対する思惑が株価の重しとなっていることは確かだ。NYダウの当面の下値メドは2万4000ドル、あるいは春先の安値である2万3500ドル前後だろう。株価の下げ止まりにはFRBの引き締め姿勢の転換が必要だと思う。FRB高官の発言や米経済指標などに注目したい。

<為替動向>

●「リスク回避のドル買い流入し底堅い」

神田卓也氏(外為どっとコム総研、取締役調査部長)

 米株式市場が急落するなかドル円は比較的底堅い動き。これはリスク回避の点で、円買いだけではなくドル買いの需要が強いからだろう。原油安により資源国通貨からドルに移る動きもある。特に米国金利はオーストラリアなどよりも高くなっている。今後、米株安が一巡し米金利が一段と上昇すれば、ドルは年末にかけ1ドル=115円を目指すとみる。一方、株安が世界景気後退の発火点となれば108円の円高もあり得る。しかし後者の可能性は小さいとみている。

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