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【特集】カリスマ個人投資家、ふりーパパさんに聞く-前編 <新春特別企画>

今は大化け成長株発掘の好機

ふりーパパ
  ふりーパパさん

 「下げに始まり、下げに終わった」感のある昨年の株式相場。2019年相場も、米減税効果の一巡、米中貿易摩擦の長期化懸念、Brexit(英国の欧州連合離脱)の混迷、そして日本の消費税率引き上げ――と景気に対するリスク要因がある中で、落ち着かない環境は続きそうだ。

 厳しい局面が予想される中で、個人投資家はどうしたらいいのか。

 「今は一休みの時期。ただこういう時こそ、次なる大化け期待銘柄を見つける絶好の機会になる」。こう語るのは、テクニカルとファンダメンタルズを組み合わせた「テクノファンダメンタルズ投資」で成長株に投資し、資産拡大に成功したふりーパパさん(ハンドルネーム、以下パパさん)だ。

 パパさんは国内外の金融機関を渡り歩いた後、04年に独立し、10年から個人投資家向けに投資ノウハウを伝授する「ふりーパパ投資塾」を運営している。その塾生には億トレさんも多く、最近は「教え子」であるDUKE。さん(ハンドルネーム)と共著で『新高値ブレイクの成長株投資法』(パンローリング)を出版している。

 今まさに厳冬期の局面にいる中で、未来の大化け株をどうやって探せばよいのか。パパさんの投資手法や特徴、成功の秘訣などを本人から聞いた。

狙い目は幼児期から思春期の銘柄

 成長株投資といっても様々だが、パパさんの投資法は景気拡大の追い風に乗り、相場全体を引っ張る存在となる成長株を見つけて順張り投資していくやり方だ。

 銘柄選びで中核に据えるのは、企業を人間の成長に置き換え、「3~4歳の幼児期から15~16歳の思春期を迎えるまでの大きく成長するステージにある銘柄を狙う」(パパさん)。

 時価総額が小さい時期から着目し、何らかのヒット商品やサービスが生まれることで利益が大きく拡大し、株価も飛躍的に伸びる企業を狙う。これは米国の成長株投資の大家であるウィリアム・オニール氏の考え方を踏襲しているという(記事下の囲み記事を参照)。

 成長株の定義は業績が大きく拡大する株のことで、具体的には「経常利益の増加率が年率20%以上を続けていく可能性のある会社」だ。これだけの高成長を支えていく事業基盤の裏付けがあるかを観察しながら、銘柄を絞って集中投資していく。

 「木と同時に森を見るのも重要」と、個別企業だけでなく成長産業(市場)なのか、景気が上向き、株式相場も強気に動く時期なのかも、注意を払っている。投資用語でいうモメンタム(勢い)だ。

 モメンタムに気を配るのは、大化け成長株は、2000年前後のITバブル時や、03年頃からの小泉景気の時期、そして直近のアベノミクス景気など、景気が上向きになり株式相場が大きく上昇する時期に生まれやすいからだ。

 冒頭で紹介したように、パパさんが「今は投資を一休みの時期」と言うのは、景気先行き懸念から相場のモメンタムが揺らいでいるためだ。しかし事業環境が厳しい時ほど、次なる成長ドライバーを生み出すために必死になって新たな事業モデルや技術・サービス開発に挑戦している企業がある。

モメンタムはリーダー株から見極める

 そうした企業がモメンタムを回復したときに、次なる大化け成長株の最有力候補になる。ではどうやってみつけるのか? ここからはパパさんが実践する「テクノファンダメンタルズ投資」の各論に入っていこう。

 まずは市場全体の勢い(モメンタム)の見極め方法について触れていく。それは、「『これだ』と思うようなリーダー株の動きを見ること」とパパさんはいう。リーダー株とは、相場全体を引っ張っていく存在で、先導株や主導株と呼ぶ投資家もいる。

 リーダー株は、成長産業で好業績を続けると期待を集める銘柄なので、その相場ごとに顔ぶれが違う。見つけ方は簡単な方程式では表しづらいが、17年後半の大相場で代表的だったのは、1年で株価が3倍にも膨らんだ安川電機 <6506> のような存在だという。

■安川電機の週足チャート
安川電機の週足チャート

 パパさんはリーダー株を定める際の一つの物差しとして、日経平均株価よりも継続的に強い株価上昇をする銘柄で、国策やその時注目されるテーマに沿い、一種のブームを引き起こす素地がある銘柄が対象になると捉えている。

 個別企業の業績や株価が拡大しやすい相場好調期には、こうした明確なリーダー株が登場する。そして、この株の動きを旗印として投資を進めていくのだ。特に、リーダー株の動きに変調があった場合は、全体相場の上昇のピークアウトを警戒すべきシグナルとする。

 2018年のケースでは、リーダー株の安川電機は1月19日に最高値を付けた後、下落トレンドに転換。そのすぐ後に日経平均株価も大きく調整し、何回かリバウンド局面はあったものの上昇トレンドに転じることができないまま、現在の大幅調整に至っている。結局は「安川の下落転換が全体の上昇相場終焉の目印になっていたと思う」と、パパさんは振り返る。

市場の評価を信じて効率を上げる「新高値」

 では個別銘柄の投資はどう進めればいいのか。このノウハウは、パパさんの共著『新高値ブレイクの成長株投資法』にて詳しく紹介されている。

 ここで特に肝としているのは、主に二つ。まず一つ目は本のタイトルにもあるように、買い出動を株価が「新高値」を付けたタイミングで行う「新高値ブレイク投資法」を用いること。二つ目は、買い出動の後は、順張りのスタイルで株価の上昇トレンドに乗り、出来高を伴って株価がボックス圏の水準を切り上げるなどのタイミングで買い増しを行い、利益を最大限に増やす取り組みをしていくことだ。

 この手法の大きな強みは、「新高値」にこだわることで、投資の効率性を高めると同時に、今後成長する期待感の大きい銘柄を掴む確率も高められることだ。パパさんは共著書でも「新高値は成長株を発掘するためのレーダー(電波探知機)のような役割」と位置付ける。

 投資効率が上げられるというのは、成長株を探すのに市場の力を利用できるからだ。成長銘柄を見つけるには、その企業の事業基盤や依拠する市場の動向、経営者の質、知的財産の強みなど数多くのチェックポイントがある。

 それらの見極めには膨大な知識が必要で、4000に迫る上場銘柄のすべてを完璧に分析することは不可能に近い。新高値をつけた銘柄は他の投資家がこれから成長すると見込んだ銘柄である可能性があり、その判断をきかっけに分析すれば、すべての銘柄に目配りする手間が省ける。

 一方、株式は美人投票というように、ファンダメンタルズが有望な銘柄を発掘しても他の投資家が同調してくれなければ、株価が一向に上がらないまま時間だけが過ぎてしまうこともある。こうした時間を無駄にせぬよう、すでに株価を上げるカタリストに気づいている投資家がいて、動きが出始めた銘柄に「便乗」すれば無駄な時間を省ける可能性が高まる。

 今後の業績を大きく変えるような「何らかの事象が起こっていること」を素早く見極めるには、新高値ブレイク銘柄を追っていくのが手っ取り早い方法だというのがパパさんらの見立てだ。

「やれやれ売り」の圧力と無縁

 需給面でも今後の株価上昇の追い風になりやすいというメリットもある。本著で「新高値」とは、その年で一番高い株価を付けた「年初来高値」と定義しており、新高値更新銘柄は、少なくともその年でその銘柄に投資した人は損をしている人がいない状態となる。

 今の株価より高い株価で買った投資家が多い下げ基調の銘柄を選ぶと、少々株価が上がっても、それを待っていた投資家による「やれやれの売り」に押されて株価上昇の勢いがそがれやすいが、新高値ブレイク銘柄はこの売り圧力がかかりにくい。テクニカル面でも上値を抑える抵抗が少なく、利益を伸ばしやすいという点も強みと言えそうだ。

 重要な銘柄選びはどうすればいいか。難しいのは、新高値銘柄を買えば、何でもかんでもその後に株価が伸びるというわけではない点。運用益を大きく伸ばすには、銘柄数を絞り集中投資していく必要もある。

 パパさんによると「極力1銘柄集中を目指しており、最大5銘柄程度に絞るのが理想」という。銘柄を分散させ過ぎると、株価上昇時に買い増す資金が乏しくなり、運用効率が下がってしまうからだ。

4つのステップで銘柄発掘

 パパさんは著書で、銘柄を絞り込む段取りを4ステップで解説する。ステップ1は日々の新高値更新銘柄をチェックする作業、ステップ2は株価チャートのチェックによるテクニカル面での優位性の見極め、ステップ3では新高値銘柄のファンダメンタルズの深掘り、ステップ4では絞り込んだ銘柄の目標株価設定を行う。

■ふりーパパさんの銘柄選択のステップ
ふりーパパさんの銘柄選択のステップ
注:『新高値ブレイクの成長株投資法』(パンローリング)を参考に作成

 特にハードルが上がるのが、ステップ3以降。ファンダメンタルズ分析は単純な公式で甲乙を見分けるのは難しく、十分な勉強や訓練が求められる。見極めのポイントの一つとなるのは、『会社四季報』などに掲載される業績予想の伸び率が高いかどうか。特に、前述した成長株の定義とされる経常利益の伸びが、前四半期や前年同四半期に比べて伸びているかに注目していく。

 これと同時に、新高値をつけるまでに株価を押し上げた材料は何だったのかをニュースや四季報のコメント欄などで確認。「決算や中期経営計画発表等で予想経常利益の引き上げが行われるなどの材料により、新高値をつけるケースも多い」というが、その業績拡大の裏付けになる要因を探っていく。

 この要因は、例えば新商品や新サービスの開発、業態変更や提携等によるビジネス拡大などがあてはまる場合が多く、これが後のブームを引き起こすエネルギーがあるものかどうかを意識して有望性があるかを見極めていくのだ。

 18年5月中旬にストップ高で新高値を付けたSECカーボン <5304> の例では、この前日に発表になった決算予想にサプライズ感があったことで株価は大きく上抜けた状態に。

■SECカーボンの日足チャート
SECカーボンの日足チャート

 その後にパパさんは四季報やインターネットで情報収集を行い、同社が主力商品としているカーボンブラックから作られる黒鉛電極の価格が高騰していることを知る。この後、カーボンブラックに需要ブームが起こることを予想して、この銘柄のさらなる成長性を感じたという。

 もう一つ訓練が必要になるのは、株価の上昇トレンドに乗り、順張りで買い増していく手法だ。パパさんは、成長株の株価は常に一本調子で上昇するのではなく、大きく3つのステージを経て上昇すると想定する。

 ちょうど階段の踊り場を経て、さらに上の階に上っていくイメージだ。この動きにファンダメンタルズとテクニカルの両面から、当初描いたシナリオ通りに進んでいるかに注目しながら乗っていく。

 具体的に見ていくのは、株価が上昇トレンドを描く過程で形成されるボックス圏での株価の動き。ボックス圏は階段の踊り場のような位置づけで、この間を行き来していた株価がボックスを抜ければ、さらなる上昇に弾みがつく可能性がある。ここが買い増しのタイミングだ。

 反対にボックス割れのタイミングは、一旦利益確定を検討したい時期。ボックス上抜け時はファンダメンタルズで何か好材料が出た場合、割り込みだと悪材料が出たケースが多いため、ここは見逃さずに注意したいポイントになる。

 ここまでが、パパさんの手掛ける成長株投資の骨格とメリットだ。ただ、実践で大きな果実をつかむには、投資の時期ややり方でさらに工夫するべきポイントがある。記事の後編では、注意点も含めてさらに突っ込んだ内容を紹介していく。

●著書『新高値ブレイクの成長株投資法』(パンローリング)
著名投資家・ウィリアム・オニール氏の提唱する『オニール式成長株投資法』を踏襲して成長株投資を行うすご腕投資家のふりーパパさんとDUKE。さんによる共著。2部構成に分かれる本著は、DUKE。さんが担当する第1部では「過去の大化け株分析」を掲載し、重ねてその事例を紹介。アベノミクス相場の期間に焦点を当て、どういう性質の銘柄が大化けしやすいかを探っている。ふりーパパさん担当の第2部では「成長株の発掘&売買法」として新高値に注目した具体的な投資手法を解説している。

●ウィリアム・オニール
投資本のベストセラー『マーケットの魔術師』の中で紹介された、米国を代表する成長株投資家の一人。時価総額が小さい段階で、今後急成長しそうな企業を探し出し、短期間で利益を上げる手法で運用成果を上げたことで名を馳せた。証券会社時代に蓄積した投資知識と資金をもとに、30歳の時にニューヨーク証券取引所の会員権を取得。その後、機関投資家向けの投資情報会社を設立。代表的な著書の『オニール式成長株投資法』では、市況の良しあしに関わらず、成長銘柄を発掘するスクリーニング手法を紹介している。


筆者:福島 由恵
金融機関出身のフリーライター。株式、投資信託、不動産投資などを中心とした資産形成に関連する記事執筆を主に担当。相続、税金、ライフプラン関連も数多く執筆。

構成/真弓重孝=みんかぶ編集部

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

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