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【特集】働き方改革が追い風、新たな商機捉える「シェアオフィス関連」 <株探トップ特集>

個人や複数の法人会員が共同利用するオフィス形態である「シェアオフィス」を開設する動きが相次いでいる。シェアオフィスやコワーキングスペース業界の動向とその関連銘柄を追った。

―求められる多様なオフィス形態、シェア型のワークプレイスが現在のトレンドに―

 安倍政権の重要施策である「働き方改革」に呼応するように、シェアオフィスを開設する動きが活発化している。ワーク・ライフ・バランスへの意識の高まりとともに、時間や場所を選ばずに働けるテレワークが徐々に広がり、“いつでもどこでも働ける場所”へのニーズが高まっていることが背景にある。シェア型のワークプレイスがオフィス市場のトレンドとなるなか、新たに同事業へ参入する企業も増えている。

●既存不動産の価値向上につながる面も

 シェアオフィスとは、個人や複数の法人会員が共同で利用するオフィスの形態。原則としてレンタルオフィスのような専有空間はないものの、ひとりで作業ができる個室や打ち合わせができるスペースを設けるなど、通常のオフィスに近い多様な用途に対応できるところが多い。ひとつの空間を共有するという点でシェアオフィスと類似する施設にコワーキングスペースと呼ばれるものがあるが、シェアオフィスが作業の場として捉えられているのに対し、コワーキングスペースは利用者同士が交流を図ったり、連携や協業を促進したりする場として利用されている。

 2019年4月に働き方改革関連法案が施行されることに加え、スマートフォンの普及やパソコンの軽量化などでモバイルワークの環境が整備されていることもあり、テレワークを導入する企業は一段と拡大することが予想される。例えば、東京都は都内企業の導入率を20年度までに35%(17年度は6.8%)に高める目標を掲げており、ワークスタイルの変化が多様なオフィスを求める動きにつながっている。三菱地所 <8802> グループの三菱地所リアルエステートサービスでは、17年から18年にかけて東京のシェアオフィスやコワーキングスペースの床面積が爆発的に拡大し、空室率上昇が懸念される既存不動産に新たな価値を創出していると指摘しており、こうした流れは今後も続くことが見込まれる。

●三井不は20年度中に50拠点に拡大

 不動産大手では、三菱地所がサービス付きコワーキングスペース「FINOLAB(フィノラボ)」、東京建物 <8804> がシェアオフィス「+OURS(プラスアワーズ)」を展開しているほか、三井不動産 <8801> は今年1月、17年4月から展開している法人向け多拠点型シェアオフィス「ワークスタイリング」を現在の33拠点から20年度中に50拠点に拡大すると発表した。「ワークスタイリング」の会員企業数は現時点で300社を超え、毎月延べ約5万人の会員が利用しており、拠点を拡大することで利用者の増加に対応するとともに、利便性の向上を図るとしている。

●スリープロは子会社を通じて展開

 このほか、APAMAN <8889> [JQ]が子会社のfabbitを通じてコワーキングスペース事業を手掛けており、現在23ヵ所の直営数を更に拡大させる計画。ITを中心としたBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業を主力とするスリープログループ <2375> [東証2]は、子会社のアセットデザインが都内を中心に昨年11月末時点で56拠点のシェアオフィス・コワーキングスペースを運営しており、同社では新規に開設したオフィスの収支状況及び投資余力を確認しながら、更に拠点を増やす方針だ。

 ソーシャルワイヤー <3929> [東証M]はプレスリリース配信代行を手掛けるとともに、レンタルオフィスブランド「CROSSCOOP(クロスコープ)」を国内外で展開。今年に入り、シンガポールで日系企業初となるコワーキングスペースの提供を開始した。

●ヨーカ堂は3月下旬から店舗内に導入

 需要増を映してシェアオフィス事業に関心を寄せる企業が増えており、JR東日本 <9020> はシェアオフィス「STATION WORK」の事業展開に乗り出す計画。また、クラウドソーシング大手のクラウドワークス <3900> [東証M]は定款の事業目的に、レンタルオフィス及びレンタルスペースの企画・賃貸・管理・運営事業を追加した。

 セブン&アイ・ホールディングス <3382> 傘下のイトーヨーカ堂は、不動産業のザイマックス(東京都港区)と共同で3月下旬から店舗内でシェアオフィスを展開する予定で、20年2月末までに約10店舗に導入する。商業施設にオフィスを開設する動きは丸井グループ <8252> などでもみられており、新たなテナントを確保するとともに、オフィスに訪れる人が買い物をする効果などが期待されているようだ。

●第一興商はカラオケルームを活用

 テレワークが進んでいくと必然的にモバイルワーカーも増えていくが、外出先では周囲に気兼ねなく話をしたり、秘匿性のある情報を扱ったりすることが難しいといった面がある。こうした需要に着目したのが第一興商 <7458> で、運営するカラオケルーム「ビッグエコー」の防音機能などをアピールポイントに17年4月からビジネスプランを導入。ブイキューブ <3681> がレノボ・ジャパンと組んで17年8月に売り出した簡易オフィス「テレキューブ」の商機拡大も期待される。

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