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【特集】生活防衛ならお任せ! 景気後退で再び輝く「100円ショップ」関連 <株探トップ特集>

中国景気の減速は日本経済にも多大な影響を与えている。10月に予定される消費税率10%への引き上げに対する警戒感は以前にもまして強まっているが、こうした環境だからこそ収益チャンスを広げる銘柄群がある。

―「戦後最長景気」も何処へやら、消費増税を前にすくむ市場、そして現れる正義のヒーロー百円仮面―

 きょうの東京株式市場は、米国株急落の余波を受け波乱展開を余儀なくされ大幅反落。世界経済の先行き不透明感が強く意識されるなか、じわり日本経済に景気後退の波が及んでいる。政府は20日に発表した3月の月例経済報告で、3年ぶりに景気判断を引き下げた。「緩やかに回復している」との表現は継続しているものの、「このところ輸出や生産の一部に弱さもみられる」とした。日本経済に暗雲漂う状況下、10月には消費税の8%から10%への引き上げが予定されており、消費者の財布の紐は、いっそう固くなりそうな気配だ。こうしたなか、100円ショップ ディスカウントショップを展開する、いわゆる「生活防衛関連株」に注目が集まる可能性がある。関連銘柄の現状と、今後の展開を探った。

●景気の後退局面入り?

 景気判断引き下げの背景には、中国経済の減速がある。これにより、日本からの輸出が鈍化、日本経済に大きな影響を及ぼしている。中国の景気鈍化などを背景に、厳しい業績を発表する企業はここにきて少なくない。今年の春闘においても、わずかとはいえ賃上げ率の縮小が伝えられるなど、景気後退ムードが日本経済を覆い始めている。

 更に、日本経済の行方に大きく影響しそうなのが、今年10月に予定されている消費税率の10%への引き上げだ。景気の潮流変化もあり、消費増税延期論議も噴出しそうな気配だが、既に延期をしてきた経緯もあり、政府としても“増税”を予定通り行う可能性が高い。ただ、こうなってくると消費者の生活防衛意識が高まるのは必然で、1円でも安い商品を求めることになる。

●消費増税でスポットライト

 かつて、2014年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられた際に、株式市場で脚光を浴びたのが「100円ショップ関連株」だった。安倍首相は、13年10月に消費税率8%への引き上げを正式に表明、ここを境に関連銘柄への注目度がアップし株価も上げ足を速めることになった。財布の紐が締まるなか、株式市場では消費者のニーズを捉えた100円ショップ銘柄に加え、「ディスカウントストア関連株」にも物色の矛先が向かうことになる。加えて、訪日客が急増するに伴い、100円ショップ、ディスカウントストアも“爆買い”の好影響を受け、いつしか生活防衛関連株からインバウンド関連株の一角へと変貌することとなった。しかし、景気後退ムードに加え消費増税を背景に、再び「生活防衛関連」として見直される可能性がある。

 いわゆる100円ショップは、販売価格帯が200円、300円と幅を広げ商品も拡充、ただ安いだけではなく、消費者ニーズを捉えることにも懸命だ。業績は、まだら模様の状況だが、今後消費増税を背景に思惑買いを誘う可能性もあり、中・長期の視点で活躍場面が期待される。

●セリアは4000円奪回を視野

 そのなかセリア <2782> [JQ]は1月31日に発表した19年3月期第3四半期累計で、経常利益(単独)が前年同期比1.0%増の130億5600万円となり通期計画の170億円に対する進捗率は76.8%となっている。同社は、商品テイストの多様性とともに、バランスのとれた商品ポートフォリオを構築するなど、持続的なシェア拡大に向けてまい進している。株価は、1月15日につけた直近安値3100円を底に3700円近辺でもみ合う展開で、まずは4000円奪回を視野に入れている。

 キャンドゥ <2698> の業績は苦戦しているものの、反転攻勢の兆しも出ている。11日に発表した2月度の月次売上高速報で、既存店売上高は前年同月比0.1%減と3ヵ月連続で前年実績を下回ったものの、ほぼ前年並み水準に減収率を縮小させている。また全店売上高は同2.4%増だった。株価も昨年12月25日の1500円割れを底に切り返し上値慕いの展開、商い薄が難点だが現在は1700円台をにらむ展開にある。また、「ワッツ」「ワッツウィズ」「ミーツ」「シルク」など多くのブランドで100円ショップを展開するワッツ <2735> にも目を配っておきたい。業績は芳しくはないが、生活防衛意識の高まりとともに、見直し買いを誘う可能性もある。

●パルはスリーコインで100均の穴株!?

 また、ヤングレディス向け衣料を展開するパルグループホールディングス <2726> は面白い存在だ。同社は300円を中心とした雑貨を幅広く扱う「3COINS(スリーコインズ)」なども展開、業績も好調だ。1月8日に発表した第3四半期累計連結決算が、営業利益が前年同期比9.5%増の68億1200万円、純利益は同20.3%増の39億8200万円と増収増益、“スリーコイン”だが、100円ショップ関連の穴株として注視しておきたい。

 100円ショップを展開する、ある企業の広報担当者は「今回の消費税引き上げは2%(前回は3%)であることに加え、引き上げのタイミングも10月(前回は4月)と異なっており、駆け込み需要とその反動の影響は前回ほどではないと考えている」としたうえで、「全体需要の変化はあると見込んでおり、前回同様に変化があるときこそ商機と考えている」と話す。また、別の業界関係者は「消費増税がビジネスチャンスかと聞かれると、名前(社名)を出して『はい、そうです』とは言いにくい。ただ、攻勢をかける場面ではあるのは事実だ」と微妙な心理を語った。

●パン・パシはドン・キとユニーで攻勢

 100円ショップを展開する企業以外に、活躍期待が高まるのがディスカウントショップ関連銘柄だ。そのなか、やはり期待が高まるのが「ドン・キホーテ」を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス <7532> だろう。まさに、インバウンド銘柄の中核的存在だが、ディスカウントストアの雄であることを忘れてはならない。1月には総合スーパーのユニーを完全子会社化し新たな攻勢をかけている。

 業績も絶好調、2月5日取引終了後、19年6月期の連結業績予想を発表。営業利益は前期比22%増の630億円、最終利益は同32%増の480億円とした。昨年8月に発表した業績予想からは、営業利益で100億円、純利益で110億円上振れしている。ユニーとドン・キホーテの共同運営店「MAGAドン・キホーテ UNY」も好調。市場からは、ユニー効果による業績拡大に期待する声が出ている。株価は、1月16日につけた直近安値6080円を底に切り返し7000円台乗せ、昨年11月26日につけた高値7800円奪回もジワリ射程に入れている。

●神戸物産に再び活躍の舞台

 消費税引き上げに伴い軽減税率制度も導入されるが、「1円でも安く」という消費者心理は、食品に関しては生活に密着しているだけに特に敏感だ。「業務スーパー」で急速に成長する神戸物産 <3038> には、活躍のステージが再び広がりそうな気配だ。株価は、14年中盤から上げ足を速め400円近辺だった株価が15年の7月には3400円を突破、まさに時代の要請のなか、株価も駆け上がった。現在は3月22日に昨年来高値4065円を更新した後、全体相場の急落を受けさすがに一服も、しばらく注目の場面が続きそうだ。14日に発表した19年10月期第1四半期の連結経常利益は、前年同期比19.8%増の40億4500万円と好調。業績に加え思惑も絡み、株価を高値奪回から一段高へ向かわせる可能性もある。

 ここにきての2%の消費増税は消費者心理を冷やしかねず、再び“デフレの罠”にはまるのではないかとの声も出始めている。景気後退ムードを背景に、消費全般の弱含みも懸念されるなか、「1円でも安く」が消費者心理で、そうなるとやはり100円ショップ、ディスカウントストア関連株の出番となりそうな気配だ。

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