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【特集】空の移動革命が新時代を拓く、「空飛ぶクルマ」離陸前夜で注目の株 <株探トップ特集>

ドローンと旅客機の中間のような位置づけである「空飛ぶクルマ」の開発競争が熱を帯びてきた。世界に出遅れていた日本もここにきて大きく動き出しており、関連銘柄から目が離せない状況となってきた。

―ウーバーを追う日本企業、劇的に変わる物流と交通手段が新サービス創出の原動力に―

 空の移動革命といわれる「空飛ぶクルマ」の開発競争が熱を帯びてきた。米配車大手のウーバーテクノロジーズをはじめ、世界の航空機メーカーや自動車メーカーが商用サービスを視野に入れた取り組みを加速させるなか、出遅れ感のあった日本も“離陸“に向けて動き出し始めている。法整備などクリアしなければならない課題は多いが、市場が立ち上がれば新たな部品産業の創出にもつながるだけに、今後は関連銘柄への関心が徐々に高まりそうだ。

●住友商は20年代半ば頃の実用化を目指す

 住友商事 <8053> は4月3日、「空飛ぶクルマ」の製品開発力を持つ米ベル・ヘリコプター・テキストロンと業務提携したと発表。エアモビリティ分野での新規事業の創出を目的に、市場調査や共同研究に乗り出す。両社は米ベルが開発する無人物流ドローンやエアタクシー機材を用いたサービス提供の検討を開始するとしており、2020年代半ば頃の実用化を目指して他の企業にも参加・協力を呼びかける意向だ。

 米ベルとはヤマトホールディングス <9064> も18年10月に、将来の新たな空の輸送モード構築に向けて協力することで合意している。両社は陸と空のノウハウを融合させ、「空飛ぶトラック」を活用した物流でグローバルリーダーとなることを目標に、米ベルが機体の設計・開発・製造を担当し、ヤマトHDは荷物を積む容器を開発する。早ければ19年中にデモンストレーションを実施し、20年代半ばまでに実用化する計画を掲げている。

●機体開発の中心を担うカーティベーター

 「空飛ぶクルマ」はドローンと旅客機の中間のような位置づけで、深刻な渋滞問題を抱える都市部での移動にかかる時間の短縮、離島や山間部での移動の利便性向上、災害時の救急搬送や迅速な物資輸送、観光促進などの効果が期待され、移動手段や都市交通の一大転換点となる可能性を秘めている。こうした構想を具体化し、新しいサービスとして発展させていくためには、民間企業の技術開発とともに政府が適時適切に支援する体制が求められ、18年夏には経済産業省と国土交通省が主導するかたちで「空の移動革命に向けた官民協議会」が発足した。同年末には実現に向けたロードマップが公表され、19年から試験飛行や実証実験を行うほか、機体の安全基準や運送事業のルールづくりに着手する計画。23年までに制度整備を終えて事業をスタートさせ、30年代から実用化を加速させていく方針が示されている。

 この中心的存在として注目されているのが、同協議会のメンバーでもある有志団体「CARTIVATOR(カーティベーター)」だ。同団体は空飛ぶクルマ「SkyDrive(スカイドライブ)」の20年デモフライトを目指して機体開発を進めており、第一目標として東京五輪の聖火台に火を灯すことを掲げている。支援企業にはトヨタ自動車 <7203> 及び同グループ各社、NEC <6701> 、富士通 <6702> 、パナソニック <6752> のほか、ベリサーブ <3724> 、ヴィッツ <4440> [東証M]、UACJ <5741> 、双葉電子工業 <6986> 、バンダイナムコホールディングス <7832> などが名を連ねている。

 海外では欧州航空機大手エアバスと独自動車メーカーのアウディなどが共同で「Pop.Up Next」と呼ばれる空飛ぶクルマのプロジェクトを進めているほか、米航空機大手ボーイングは今年1月に試作機の試験飛行に成功している。日本では緒に就いたばかりだが、官民が一体となって機運が盛り上がりつつある。

●センサー、電池、軽量化素材関連にも注目

 「空飛ぶクルマ」の開発を進めるうえで重要となるのが、航続距離の延伸につながる機体の軽量化となる。そこで注目したいのが、内閣府の革新的研究開発推進プログラム「ImPACT」で開発が進められている「タフポリマー」と呼ばれる高機能ポリマーだ。従来の限界を超える薄膜化と強靭化を同時に達成できる素材とされ、同プログラムには東レ <3402> や住友化学 <4005> などが参加している。

 また、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「次世代構造部材創製・加工技術開発プロジェクト」のもと、複合材料の開発などを行っているイビデン <4062> や豊田自動織機 <6201> 、津田駒工業 <6217> などにも商機がありそうだ。

 このほか、「空飛ぶクルマ」の実現には自動運転技術や電動化が欠かせないことから関連需要の拡大も期待され、UAV(小型無人航空機)などの画像処理ソフトウェアを販売するイメージ ワン <2667> [JQ]、航空機用蓄電池を手掛ける古河電池 <6937> 、各種センサーを展開する北陸電気工業 <6989> 、地図データに強みを持つゼンリン <9474> などにも注目したい。

 これら以外では、東京海上ホールディングス <8766> 傘下の東京海上日動火災保険が今年3月から、「空飛ぶクルマ」の試験飛行・実証実験を目指す企業向けに保険の提供を開始している。

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