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【特集】上昇気流に乗る「J-REIT」、初の敵対的買収劇にどよめく市場 <株探トップ特集>

活況に沸くREIT市場は2016年4月以来の高値圏に突入した。軟調に推移する日経平均を横目に強力な上昇トレンドを構築しマーケットの視線を釘付けにしている。

―世界的金利低下機運を背景に3年ぶり高値圏浮上、NAV倍率低く際立つ割安感―

 米中貿易摩擦への警戒感で東京株式市場は、不安定な動きとなっている。日経平均株価も上値の重い状況にあるが、そんななか上昇基調を強めているのが日本の不動産投資信託「J-REIT」だ。高利回り商品として個人投資家に人気だが、都心のオフィスビル需要は堅調なほか、世界的にも金利低下機運が膨らむなど市場環境は良好だ。更に、初となる敵対的買収の動きも顕在化するなか注目度は一段と高まっている。

 ■東証REIT指数は年初から10%上昇、全般相場と逆行高演じる

 REIT市場が活況に沸いている。21日は反落したが、東証REIT指数は前日まで7連騰。20日には一時1952と16年4月以来、3年1ヵ月ぶりの水準にまで値を上げ、年初からの上昇率は約10%に達した。特に、5月に入ってから日経平均株価は4%強下落しているのに対し、REIT指数は3%近く上昇している。全般相場が軟調に推移するなか、逆行高を演じていることが分かる。

 この背景として、第1に都心を中心に堅調なオフィス需要が続いていること、第2には米国で年後半の利下げ期待が膨らむなど世界的に金利低下機運が強まっていることがある。 都心のオフィスビルなどへ多くの投資を行っているREITにとって、ビル需給の引き締まりは好材料だ。また、低い金利で資金を調達して、オフィスビルなどの不動産に投資することは、投資採算の改善につながる。REITを取り巻く良好な収益環境を評価し、外国人投資家は4月こそ売り越したものの、昨年9月から今年3月まで7ヵ月連続買い越しており、この間、約3000億円を買っている。また、3月以降は投信も買い越し基調を強めている。REITなど不動産への投資は、米中貿易摩擦の影響が小さいことも安心感を呼んでいる様子だ。

 ■さくら総合リートに合併提案、初の委任状争奪戦に発展も

 更に、10日にスターアジア不動産投資法人 <3468> [東証R]の運用会社がさくら総合リート投資法人 <3473> [東証R]に対して合併提案を行ったことも注目を集めている。さくら総合リートは、スターアジアのからの合併提案に対して反対の意思表示をしているため、日本のREIT業界にとって初の敵対的買収となる可能性がある。

 さくら総合リートの分配金利回りは5.7%前後、NAV(ネット・アセット・バリュー)は0.95倍前後の水準にある。NAVは株式のPBRに相当するもので1倍割れは純資産価値を下回る割安状態を意味している。スターアジアは、さくら総合リートの投資主総会(株主総会に相当)の開催許可を関東財務局に申し立てた。認可されれば7月にも総会が開催され、REITで日本初となる委任状争奪戦(プロキシーファイト)が繰り広げられる可能性もある。

 東京市場に上場しているREITの平均分配金利回りは約3.8%で、NAV1倍割れの銘柄も少なくない。割安水準にあるさくら総合リートに敵対的買収が仕掛けられたことは、他のREITの危機感を高めることになり、今後、価値向上策が打ち出されるとの期待も高まっている。このなか、REITの上昇は今後も続くことが予想されている。以下、注目5銘柄を紹介したい。

●MCUBS MidCity投資法人 <3227> [東証R]~三菱商事とUBSをメインスポンサーに3大都市圏のオフィスビルなどに投資。物件入れ替えで含み損益率は改善傾向。分配金利回りは5.1%。

●ジャパン・ホテル・リート投資法人 <8985> [東証R]~海外企業や共立メンテナンス <9616> などがメインスポンサー。ホテル特化型。ラグビーW杯や東京五輪などによるインバウンド需要の一段の拡大に期待。分配金利回りは4.1%。

●ユナイテッド・アーバン投資法人 <8960> [東証R]~丸紅 <8002> がスポンサー。グリーン適格資産に投資する初の個人向けグリーンボンドを発行。分配金利回りは3.9%。

●三井不動産ロジスティクスパーク投資法人 <3471> [東証R]~三井不動産 <8801> がスポンサーで物流施設を中心に投資。三井不のサポートによる成長に期待。分配金利回りは3.6%。

●大和証券オフィス投資法人 <8976> [東証R]~中型オフィス系のREIT。東京のオフィスを中心に投資しており業績は順調に拡大。分配金利回りは3.1%。

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