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【特集】気分はもうサイボーグ、体内埋込機器「インプランタブル」の時代へ <株探トップ特集>

ウェアラブル機器の進化は、「身に着ける」から「体内に埋め込む」へ向かい始めている。「インプランタブル」機器の潮流と日本企業の取り組みを追った。

―“身に着ける”から“埋め込み”へ、次の未来とマーケットの見方―

 スマートウオッチやスマートグラスなど、ウェアラブル機器は我々の生活にすっかり身近なものとなった。

 スマートウオッチを利用した音楽鑑賞やキャッシュレス決済、バイタルデータの記録による健康管理が広がっているほか、メガネタイプのスマートグラスでは、バイタルデータから目の疲れや居眠り運転の危険性の検知、倉庫作業で荷物の位置情報を表示するなどの利用も進む。更に、衣服タイプのスマートウェアでは、取得したバイタルデータのスポーツや医療、介護分野への応用が進められている。

 こうしたなか、近年ではウェアラブル機器 が進化し、「身に着ける」から「(体に)埋め込む」機器の開発が進められている。欧米などでは既に実生活で用いられているものもあり、今後、世界的に普及する可能性も大きい。「埋め込む」機器である「インプランタブル」機器への関心が今後高まりそうだ。

●スウェーデンでは鉄道の乗車券代わり

 インプランタブル機器とは、体内に埋め込み、通信機能を持った電子機器のこと。ウェアラブル機器は顔に付ける、手首にはめるなど体の外側に装着して使用するが、インプランタブル機器は主に人間の体内に入り込んだ形で利用される。例えばSF映画などでは、手をかざすだけでオフィスのドアを開閉錠するシーンがあるが、これは既に実用化されている。

 インプランタブル機器の先進国といわれているのが、スウェーデンで、同国に本拠を置くバイオハックス・インターナショナルが手掛ける埋め込み型通信マイクロチップは、北欧を中心に約4000人が使用しているという。現在は、オフィスの入退室管理に使われているほか、スウェーデン鉄道(SJ)では、乗車券の代わりに利用できる検札システムを導入している。

●米国などでも導入進む

 また米国でも、一昨年にウィスコンシン州の自動販売機メーカーが希望する従業員に対して、体内へバイオハックス製のマイクロチップを埋め込み、社内の入退室管理や少額の決済に利用できるようにするなど普及が始まっている。

 一方、日本では個人がバイオハックス製マイクロチップを埋め込み、自分が経営する企業の入退室管理などに用いるケースが出ているが、まだ少数にとどまっている。通信規格の違いやマイクロチップの埋め込み方法などで問題があることに加えて、体内に埋め込むことに対する心理的な壁があることなども指摘されている。

 ただ、スウェーデン、米国ともに使用されたマイクロチップは、体に埋め込まれた後でも注射器で簡単に取り出すことができるほか、チップ内のデータは暗号化されており、安全性が配慮されている。また、GPS機能は搭載されておらず、プライバシーも保護されている。欧州や米国でインプランタブル機器の普及が始まっていることからも、日本もそれに追随する可能性が高く、関連銘柄には注目しておきたい。

●大塚HDが世界初のデジタルメディスン開発

 インプランタブル機器については現在、前述のマイクロチップに加えて、「スマートコンタクトレンズ」や「デジタルメディスン」などの開発が進められているが、関連銘柄はまだ少ない。そうしたなか注目されるのが、大塚ホールディングス <4578> だ。

 傘下の大塚製薬は、米国のベンチャー企業のプロテウス・デジタル・ヘルスと組んで世界初のデジタルメディスン「エビリファイ マイサイト」を製品化し、17年11月にはFDA(米国食品医薬品局)が承認した。

 同製品は、大塚製薬の抗精神病薬エビリファイ錠剤に、プロテウス社が開発した極小センサーを組み込んだ製剤とパッチ型のシグナル検出器及び専用アプリを組み合わせたもの。抗精神病薬は、服薬の管理が難しい分野だが、「エビリファイ マイサイト」では患者の服薬状況を記録し、スマートフォンなどのモバイル端末を通じて医療従事者や介護者との情報共有を可能にした。米国は精神疾患の治療費を主に政府が負担しており、正しい服薬は医療費の削減にもつながることから注目されている。

●スマートコンタクトレンズにも注目

 シード <7743> と資本・業務提携するユニバーサルビュー(東京都千代田区)は現在、スマートコンタクトレンズの開発に取り組んでいる。スマートコンタクトレンズについては、米アルファベット(グーグル)が無線チップと血糖測定センサーを備えた医療用の製品の開発を行っているが、ユニバーサルビューが開発中の製品もブドウ糖センサーなどを搭載。早ければ24年の実用化を目指す。

 ソニー <6758> は16年5月、米国でコンタクトレンズ式のカメラの特許申請を行った。コンタクトレンズ型カメラはグーグルやサムスンなども特許申請を行っており、製品化への期待も高い。

 最後に、日特エンジニアリング <6145> [JQ]も関連銘柄として注目したい。同社は人間用ではないものの、ペット用のマイクロチップを展開している。6月12日に犬や猫へのマイクロチップ装着の義務化などを柱とした改正動物愛護法が成立した際にも同社への関心が高まったことから、思惑含みで注目されそうだ。

 いずれにしてもまだこれからの分野であるために、今後更なる銘柄が加わる可能性は大きい。新たな関連銘柄発掘のためにも「インプランタブル」「埋め込み型」などのキーワードには敏感になっておきたい。

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