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【特集】働き方改革で変わる風景、株価の居どころも変わる「シェアオフィス関連」 <株探トップ特集>

シェアオフィスやコワーキングスペースの増加が顕著となるなか、株式市場でもこれに絡み新たな収益機会を手にする銘柄群に投資資金が向かい始めた。

―“働く場所”の多様化がもたらすビジネスチャンス、見直し機運高まる関連株を追う―

 ここ数年、シェアオフィスやコワーキングスペースが増加している。両者に共通しているのは働く場所を“シェア”するビジネスであるということ。働き方改革で“働き方”が多様化するなか、“働く場所”も多様性をみせるようになっていることが背景にあり、今後も更なる広がりが見込まれている。また、開幕まで1年を切った東京オリンピック・パラリンピック開催期間の交通渋滞の解消策としても活用が期待されており、関連銘柄には注目が必要だ。

●大企業の利用で市場が拡大

 シェアオフィスは、レンタルオフィスサービスの一つで、自社だけではない複数の利用者がフリーアドレス形式で使用するスペースのこと。従来からあるレンタルオフィスが個別の占有スペースがあるのに対して、シェアオフィスには原則として個別の占有スペースはなく、その分、利用料が割安となっているのが特徴だ。一方、コワーキングスペースはシェアオフィスと明確な線引きはないものの、定期的に利用するメンバー以外に不特定多数の人が一時利用するスペースが多くあり、コミュニティーを形成することで新たなビジネスを後押しすることもできるのが特徴といえる。

 これまでシェアオフィスやコワーキングスペースの利用は、個人やスタートアップ企業がオフィスコストを抑える目的で利用するケースが多数を占めていた。ただ近年は、大企業が新規事業創出などで社外のリソースを取り込むためや、都心部の空室率の低水準から移転先が確保できないために利用するケースが増えており、業界関係者によると特に働き方改革が本格化した2017年以降、増加ペースが加速しているという。

 今後も、起業数の増加や稼働率が高止まりするなかでのオーナーのリーシング戦略や、リモートワークの必要性などからシェアオフィス・コワーキングスペースの増加が見込まれる。市場も当面、拡大が続く見通しで、関連する企業には成長性への期待が高まっている。

●TKP、ギグワークスなどに注目

 ティーケーピー <3479> [東証M]は、関連銘柄の代表格といえる。同社は8月16日、今年5月に連結子会社化した日本リージャスホールディングスの業績動向や台湾リージャス社の子会社化による影響、更に運営する貸会議室・宴会場・レンタルオフィス・コワーキングスペースなどのフレキシブルオフィスや宿泊施設の需要が引き続き旺盛であることを理由として、中期経営計画の見直しを発表。22年2月期の営業利益目標を113億1200万円から124億7100万円(20年2月期予想76億700万円)に修正した。

 第1四半期(3-5月)も、労働需給の逼迫による企業の採用活動の積極化・通年化や、社員教育研修などの増加を背景にフレキシブルなオフィススペースの需要が増加したことで、同20億8700万円(前年同期比18.2%増)と第1四半期として過去最高を記録した。

 ギグワークス <2375> [東証2]は子会社アセットデザインがシェアオフィス・コワーキングスペースを57拠点展開し、利用企業数も4000社を突破している。直営拠点の開設など現在は先行投資段階であることから、第2四半期(18年11月-19年4月)のコワーキングスペース事業はセグメント損益が赤字だったが、高水準の稼働率で直営店の収益が向上しており、計画よりも早く黒字化を達成すると会社側では見込んでいる。

 ソーシャルワイヤー <3929> [東証M]は、「CROSSCOOP(クロスコープ)」のブランドで海外・国内にシェアオフィス・コワーキングスペースを展開。第1四半期(4-6月)の国内のシェアオフィス稼働席数累積は3855席(前年同期比10.6%増)に拡大し、稼働率は85.3%と高水準で推移している。今月にはオフィス690席と貸会議室、コワーキングスペースなどを設置した大型の新橋拠点もオープン。20年3月期は成長投資先行で営業利益は2億7000万円(前期比33.4%減)を見込むが、21年3月期以降の利益成長はほぼ見えているとしている。

 クラウドワークス <3900> [東証M]は18年11月に定款の一部変更を行い、事業目的に「レンタルオフィス及びレンタルスペースの企画、賃貸、管理及び運営事業」を追加した。同社は17年にステラリンク(東京都千代田区)と共同で長野県駒ケ根市にテレワークオフィスを開設・運営しているが、クラウドソーシングの会員はフリーランスや個人事業主が多いことから、シェアオフィスやコワーキングスペースとの相性は良く、今後の展開が注目されている。

●電鉄大手も参入相次ぐ

 大手不動産では、三井不動産 <8801> や三菱地所 <8802> 、東京建物 <8804> などが法人向けにシェアオフィス・コワーキングスペースの展開に力を入れているが、ここ最近増えているのが鉄道会社の参入だ。

 京王電鉄 <9008> は18年10月、京王プラザホテル多摩内に「KEIO BIZ PLAZA」を開業。京浜急行電鉄 <9006> は今年7月、品川駅近くにMaaS専用シェアオフィス「AND ON SHINAGAWA」を開設した。西武ホールディングス <9024> も9月、西武線練馬駅構内に学童保育を併設したシェアオフィスを開設する予定だ。

 更に、JR東日本 <9020> は今月、東京・新宿・立川の各駅で、ブース型シェアオフィス「STATION BOOTH」を設置し、駅ナカシェアオフィス事業を本格展開させた。同サービスの筐体にはブイキューブ <3681> のスマート電話ボックス「テレキューブ」が使用されており、ブイキューブでは駅以外にも、同ボックスの展開を進める方針だ。

 このほか、APAMAN <8889> [JQ]はグループ会社のfabbitが国内21ヵ所、海外22ヵ所(19年6月末時点)でコワーキングスペース・レンタルオフィスを展開。19年6月末で43ヵ所、約6000人の会員を有しており、関連銘柄として注目される。

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