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【特集】M&Aによる復活、買い妙味十分の建設株をロックオン <株探トップ特集>

建設業界は東京五輪の反動が懸念されているが、実際は豊富な受注残が収益を支える。そしてM&Aにより業容を拡大させる建設会社が市場で脚光を浴びることになりそうだ。

―建設需要は東京五輪後も旺盛、積み上がる受注残と底流する買収思惑―

 建設業界が活況に沸いている。これまで好景気の要因は、自民党の政権復帰に伴う経済活性化策が多く打たれたことや国土強靱化を背景とした建て替え需要、加えて東京五輪 開催までの完工を目指したことなどが重なったことによる。

 上場している大手ゼネコン4社合計の20年3月期受注見通しは前期比7%減となった。足もとで都心マンション需要には限界が見えてきており、景気減速の兆しが出はじめたことが原因で、直近では大手ゼネコンを中心に建設株が軟調に推移している。

 大手ゼネコンでは2019年3月末時点で、受注した未完成工事が各社2兆円前後積み上がっており、建設需要が五輪後もあと数年は困らないとの見方がある。しかし、絶頂期にも関わらず建設業界の休廃業・解散数は多い。18年には9000件超え(東京商工リサーチ)と高い水準にある。人手不足・後継者不在で高齢化と若者離れが深刻な状態にあるためだが、その建設業界に再編の波が起きている。M&Aにより業容拡大し収益力を向上させる準大手や中堅ゼネコンに注目する場面だ。

●絶好調なのに「身売り」が多発中

 建設業界のM&Aニーズは、これまでになく高い水準にある。日本M&Aセンターによると、18年の国内建設業のM&A件数は過去最多を記録した。こうしたなか、後継者不在や技術者を確保するための買収が盛んだ。

 過去のM&Aはメインバンク主導で救済目的を主眼に置くものが多かったが、直近では仕事があっても人手不足で取りに行けない、そんな状況を打開するために攻めの戦略的要素を帯びたことが一番大きな変化だ。少なくとも五輪後あと1年は業界再編の動きが進むとみられている。

 18年の建設業界におけるM&Aの代表例は、業界準大手の戸田建設 <1860> による福島県を地場とする名門、佐藤工業(福島市)の完全子会社化だ。東日本大震災の復興需要がピークアウトするなか、県内の建設市場の縮小を見据えて戸田建との交渉を決意。1年超の手続きを経て18年10月に株式譲渡契約を結んだ。継承者不在の佐藤工業の社名と社員を丸ごと受け入れることを引き換えに、戸田建がこの買収を足掛かりにして、比較的受注が手薄な東北地方で事業基盤を確立する。これは注力している事業多角化のひとつである、エネルギー事業を進めるうえでもメリットがあったとみられる。

 また、中堅ゼネコンの高松コンストラクショングループ <1762> が8月6日、79.08%を保有する子会社、青木あすなろ建設 <1865> の株式公開買い付けによる完全子会社化を目指すと発表した。グループ間の人材交流や建築技術の共有などを見込み、完全子会社化することで少数株主との利益相反も少ないようにするのが目的だ。発表後、青木あすなろの株価がTOB価格にさや寄せる形で前日終値から3営業日で一気に50%を超える上昇をみせたことが話題となった。

●異業種・隣接業種からの参入も激増

 さかのぼって17年11月、ハウスメーカー大手の住友林業 <1911> と、準大手ゼネコンの熊谷組 <1861> が資本・業務提携することを発表した。パナソニックホームズを傘下に置くパナソニック <6752> も同月には松村組(東京都千代田区)を完全子会社化し、住宅事業を強化してきた。更に今年の5月、パナソニックはトヨタ自動車 <7203> と住宅事業の統合を発表し、20年1月をメドに同額出資する新会社「プライム ライフ テクノロジーズ」に双方の持つ住宅メーカーや建設会社を移管する。トヨタホーム(名古屋市東区)やその子会社のミサワホーム <1722> も傘下に入る予定だ。建設業界は今、デベロッパー、ゼネコン、ハウスメーカーの垣根を越えたボーダレス化の時代を迎えている。

 施工管理技士などの人材引き抜きよりも、ゼネコンを丸ごと買収する。建設業界のみならず、パナソニックの松村組買収劇の影には、ゼネコンの人材とノウハウを渇望している背景があることが明るみに出たといえる。数年後には、建設業界は更なる淘汰の波を見据えた合従連衡が加速し、業界地図は大きく変わることになるだろう。

 要注目となる建設会社をピックアップした。

 飛島建設 <1805> はダムやトンネルなど大型土木が得意とする中堅ゼネコン。バブル崩壊後は長期に渡り経営不振に苦しんだ同社は阪神淡路大震災以降、「防災のトビシマ」の異名をもつほどに、防災関連工事に力を入れている。17~18年にはそれぞれ千葉の地場建設会社と水質保全事業絡みに強みを持つ企業2社を、後継者問題に悩むオーナーから取得している。今後その買収先の水草除去技術で海外市場への取り組みを強化する。

 金下建設 <1897> [東証2]は公共工事を主体とする京都地盤の総合建設事業者。同社は1月、オムロン <6645> 子会社のオムロンフィールドエンジニアリング(OFE、東京都目黒区)や京セラ <6971> と共同出資した特別目的会社の「丹後太陽光発電合同会社」(京都府宮津市)を設立し、宮津市や舞鶴市など丹後・若狭地域の計7ヵ所で太陽光発電所を開設したと発表。全量を関西電力に売電するという。

 京成電鉄 <9009> が4月、式田建設工業(千葉市若葉区)の全株式を取得し子会社化することにより既存事業の強化をすすめている。また、首都圏地盤に建売住宅の建築などを手掛ける三栄建築 <3228> は同月、事業再生を決めたウィズ・ワン(東京都港区)から建築工事事業及びリフォーム事業を譲受した。

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