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【特集】本番突入「半導体関連」逆襲高のステージ、EUV技術が開拓する新たな地平 <株探トップ特集>

東エレク、アドバンテなどが年初来高値圏を走るなど半導体関連株が上昇基調を強めている。果たして今、半導体市場に何が起きているのか。マーケットの最前線を追った。

―「5G」による設備投資需要が追い風、新型iPhoneの増産も支援材料に―

 2018年に高値を付けた後、年初にかけ軟調地合いが続いた 半導体株の復活が鮮明となっている。米国の半導体株の値動きを示すフィラデルフィア半導体株(SOX)指数は過去最高水準で推移しているほか、日本でも東京エレクトロン <8035> やアドバンテスト <6857> が高値を更新し上昇基調を強めている。半導体株の逆襲高をもたらしたものとは何か。半導体市場の最前線を探った。

●20年の半導体設備投資は推計比3割増に、「5G」対応iPhoneも需要喚起

  半導体製造装置および材料に関する業界団体である「国際半導体製造装置材料協会(SEMI)」は、19年9月版「World Fab Forecastレポート」に基づく最新の予測として、半導体メーカーの設備投資の大半を占める前工程の設備投資が20年に最大で500億ドル(約5兆4000億円)規模に迫るとの見通しを明らかにした。19年の推計(380億ドル)に比べ32%増となり、18年後半から冷え込んでいた半導体メーカーの設備投資が、20年には回復する見通しとなる。世界景気の悪化や米中貿易摩擦などが減速要因となり、半導体メーカーの投資意欲が冷え込む可能性はあるものの、19年に15件、20年に18件の前工程の工場が着工される見込みだ。

 また、最近では米アップルが9月に発売した新型3機種の「iPhone」の生産台数が上方修正されたことが明らかになり、村田製作所 <6981> やTDK <6762> 、太陽誘電 <6976> といった関連銘柄に見直し買いが向かった。アップルはiPhoneのパーツ作成や組み立てなどを行っているサプライヤー各社に、最大で10%の増産を要請している。米トランプ政権はスマホを含む約1500億ドル相当分の中国製品に対する追加関税の発動を12月に先送りしたことも背景にあるとみられるが、それ以上に、販売低迷を予想するなど慎重過ぎる見通しの反動面が大きいだろう。

 iPhone11は、特にバッテリー寿命の長期化や「iPhone11 Pro」に搭載された3台のカメラが高い評価を受けている。更に、5年前に発売され、販売サイクルで過去最大を記録したiPhone6は、9月にリリースされた基本ソフト(OS)「iOS13」に対応していないため、買い替えを考えているユーザー数は相当存在するとみられている。加えてiPhone11は、アップルが待望の次世代通信規格「5G(第5世代移動通信システム)」対応iPhoneを来年発売するまでの「代理」との見方が多い。5G対応を見据えた半導体メーカーの増産対応が一段と加速すると見込まれる。

●微細化の最先端技術「EUV」が新市場を開拓、大幅な製造コストの低下も実現

 SEMIによると、新工場の建設が最も多いのは半導体の国産化政策を進める中国で、半導体受託生産(ファウンドリー)の大手企業が集積する台湾も堅調とされる。ファウンドリー世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)では5G開発が世界的に増加することにより、世界の主要市場で5Gネットワークの展開と5Gスマートフォンの導入が加速すると予想。これに伴い、5nmと7nmチップ(nm=ナノメートル:10億分の1メートル)の需要が従来の予測よりも増加すると見込んでいる。同社は19年第2四半期決算の発表時に、19年の設備投資を増額して、20年の5nm生産に向けてツールの導入を早める必要もあるかもしれないと述べている。同社の最大顧客であるアップルが、20年にリリースする「iPhone」向けプロセッサに5nmプロセスを適用する可能性がある。

 そして、最先端半導体デバイス製造のために次世代技術として導入が進められているのが極端紫外線(EUV)露光技術である。オランダの半導体製造装置メーカー、ASMLホールディングスによるEUV露光装置の生産動向が注目されているが、TSMCは微細化を進めていくことで、重要な層にEUVリソグラフィを適用する。また、米エヌビディアの次期GPUの製造を韓国サムスンが行うと今年7月に韓国誌が報じており、先進的GPUの製造をサムスンのEUVを用いた7nmプロセスを用いて行うことになるようだ。電子機器の革新を可能にする半導体デバイスの進歩は、その電子機器の心臓部であるICチップを構成する電子回路の微細化によって実現する。この半導体デバイスを微細化する最先端技術が「EUVリソグラフィ」となる。

 EUV露光技術の導入によるメリットは、現行の最先端露光技術である「ArF液浸露光」では、露光や現像、エッチングなどの工程が数回は必要であるのに対し、EUV露光では1回で済むという。製造コストは15~50%減となり、最も微細な薄膜層の加工に必要な時間は3分の1~6分の1に短くなるとされる。更に、電子基盤の配線図のようなマスクパターンの形状の忠実度が著しく高まることにあり、複雑な回路パターンを、EUV露光では実現できる。

●ニューフレアやウシオ電、トリケミカルなどにも活躍妙味

 半導体マスクブランクスのトップメーカーであるHOYA <7741> は、ブランクスに占めるEUV向けの構成比は上昇している。同社は半導体メーカーのEUV量産適用に対応し、EUVリソグラフィ向けマスクブランクスの新ラインをシンガポールに設置。AGC <5201> は、グループのAGCエレクトロニクスにおいて、EUVマスクブランクスの生産能力を増強している。半導体検査装置メーカーのレーザーテック <6920> は、EUVマスクブランクス欠陥検査技術の確立に成功。同製品は同社の独占製品であり、20年6月期から本格出荷されるとみられている。

 ウシオ電機 <6925> は、EUVリソグラフィを量産技術として確立するために必要な、マスク検査装置向けの光源を7月に納入。JSR <4185> や東京応化工業 <4186> 、信越化学工業 <4063> が回路焼き付けに使うレジストを生産。フォトレジストはJSRを含む国内メーカーが市場シェアの約9割を握る日系優位の市場である。ホロン <7748> [JQ]は、電子ビーム技術を生かし、半導体及びナノテクノロジー分野への検査・計測技術を提供。ニューフレアテクノロジー <6256> [JQ]は、EUVリソグラフィやナノインプリント技術への対応など、5nm世代以降のデバイスのための描画装置開発を行っている。

 東洋合成工業 <4970> [JQ]は、次世代半導体リソグラフィ用感光材(レジスト材料)の開発を推進。樹脂をモールド(型)と基板で挟み込み、ナノメートルオーダーのパターンを転写する微細加工技術であるUVナノインプリント技術に取り組んでいる。トリケミカル研究所 <4369> は、半導体製造用の高純度薬剤・配線材料が主力の化学メーカーであり、低誘電率の絶縁膜材料で高いシェアを持つ。半導体の微細化ニーズが高まるなか、多品種小ロット生産を強みとする同社に有利との見方がされている。その他、パッケージ基板やプリント配線板などのイビデン <4062> や新光電気工業 <6967> などは、米インテルの設備投資増が追い風となろう。

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