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【特集】攻めるIT企業に勝機、「デジタルガバナンス」“特進候補株”総ざらい <株探トップ特集>

「デジタルガバナンス・コード」を国が策定し、この指針に基づき企業を格付けする制度が導入される方向にある。これは企業のデジタル化推進の呼び水となる可能性がある。

―2025年の崖を克服し、Society5.0に向けた架け橋となる銘柄群を追う―

 政府は15日、「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定した。これは企業に老朽化したITシステムの刷新や業務のデジタル化による経営の効率化を求める指針(デジタルガバナンス・コード)を国が策定し、この指針に基づいて企業を格付けする制度を導入することが主な内容となっている。高い格付けを得た企業は、投資家や取引先にデジタル技術の運用が進んでいることをアピールできるほか、政策的措置として税制面や金融面での優遇を得られる可能性があることから、企業のデジタル化が更に進みそうだ。

●年間12兆円の経済損失

 経済産業省が9月17日に公表した「デジタルガバナンスに関する有識者検討会」のとりまとめ資料によると、国内企業は部門単位で異なるシステムの運用を行っているケースが少なくなく、こうした企業ではシステムが老朽化・複雑化し、保守運用が非効率になっていたり、データ利活用が難しく事業環境の変化に応じた柔軟なビジネスが困難になっていたりするという。これが人工知能(AI)IoTビッグデータなど最先端技術を活用して新たなビジネスモデルを創出するデジタルトランスフォーメーション(DX)の足かせになっていると指摘している。

 同省が18年9月に発表したDXレポートは、老朽化したシステムを使い続ければ事業機会を失い、2025年以降に最大で年間12兆円の経済損失が生じる恐れがあるとしている。政府は新たなデジタル技術や多様なデータを生かして経済発展と社会的課題の解決を両立していく「Society5.0」を実現する目標を掲げているが、そのためにはデジタル面での制約となる“2025年の崖”を克服することが不可欠で、国内企業全体のデジタル化に向けた取り組みの底上げを図るのが「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律案」だ。海外で米国のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)や中国のBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)を中心にデータ・デジタル技術を利用したビジネスが誕生するなか、国内企業は攻めのIT投資が求められている。

●「攻めのIT経営銘柄」に注目

 経産省と東証は15年度から、中長期的な企業価値の向上や競争力の強化といった視点で上場企業の中から積極的なIT利活用に取り組んでいる企業を「攻めのIT経営銘柄」として毎年度発表している。4月に発表された今年度の企業は29社で、そのうちアサヒグループホールディングス <2502> 、ブリヂストン <5108> 、ジェイ エフ イー ホールディングス <5411> 、三井物産 <8031> 、東京センチュリー <8439> 、JR東日本 <9020> は5年連続で選ばれた。

 また、パソナグループ <2168> 、エーザイ <4523> 、JXTGホールディングス <5020> 、大日本印刷 <7912> 、ユニ・チャーム <8113> 、丸井グループ <8252> 、MS&ADインシュアランスグループホールディングス <8725> 、三井不動産 <8801> 、三菱地所 <8802> が初めて選定され、最もデジタル時代を先導する企業として今年度から新設された「DXグランプリ」にはANAホールディングス <9202> が選ばれた。

●ITコンサル関連株に商機

 企業がデジタル化を進めていくうえでは、ビジネスとテクノロジーの双方を深く理解し、プロジェクトを導く人が必要となるが、現実には社内でこうした人材を確保することは容易なことではない。そこで活躍が期待されるのがITコンサルタントだ。

 エル・ティー・エス <6560> [東証M]は成長戦略策定や事業開発、IT導入からIT構想策定、業務改革、人材開発などを支援しているほか、ライトアップ <6580> [東証M]は経営課題解決エンジン「Jエンジン」を主軸に業務IT化などの解決策を提案。マネジメントソリューションズ <7033> はシステム要件定義工程やシステム開発工程といったプロジェクトの各工程における進捗予実や課題状況を可視化して管理するなどのプロジェクトマネジメントの実行支援をするサービスを提供している。

 これ以外にも、三菱総合研究所 <3636> 、システム情報 <3677> 、ULSグループ <3798> [JQ]、野村総合研究所 <4307> 、ドリームインキュベータ <4310> 、フューチャー <4722> 、シグマクシス <6088> 、ベイカレント・コンサルティング <6532> などに商機が見込まれる。

ERP、RPA関連にもビジネス機会

 業務効率化の観点からは、企業が持つ資金や人材、設備、情報などの経営資源を統合的に管理するERPや、バックオフィスの業務を自動化するRPAの関連銘柄からも目が離せない。

 ERPではテクノスジャパン <3666> 、システムインテグレータ <3826> 、オロ <3983> 、アイ・ピー・エス <4335> [JQ]など。RPAではテリロジー <3356> [JQ]、AGS <3648> 、ノムラシステムコーポレーション <3940> 、RPAホールディングス <6572> などのビジネスチャンスが広がりそうだ。

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