市場ニュース

戻る
 

【特集】伊藤智洋が読む「2020年マーケット・シナリオ」 <新春特別企画>

NYダウ <日足> 「株探」多機能チャートより

「投機的な値動きが示唆するNYダウ・日経平均株価の展開」

◆強気の年、弱気の年には典型的波動パターンがある

 投機的な値動きという場合、通常、極端に振れ幅の大きな動きになっていることを示しているように考えられていますが、実際に投機筋が積極的に参加している銘柄の典型的な値動きは、急激な変化ではありません。

 典型的な展開は「毎年、似た時期に似た動きを繰り返している」「毎年、十分な利益を得られる程度に一定の振れ幅がある」というものです。

 投機は一定期間に利益を得なければならないのですから、当然、理由があって必ず上昇、下降を繰り返している動きがあれば、その場所へ参加します。そして、投機が積極的になることによって、毎年、似た時期に振れ幅の大きな動きが表れることになります。

 ここでいう「上昇、下降を繰り返している」は、一定のレンジでの動きという意味ではありません。実需が経済活動の必然から積極的に動くことで、毎年、同じ時期に上昇、下降の流れが作られるということです。

 投機は、その振れ幅を大きくする作業を担当しています。1年を通じた上昇の動きは、上昇しやすい時期に上げ幅が大きくなって、下降しやすい時期にあまり下げないという流れの中で作られます。

  NYダウ日経平均株価は、投機的な値動きになっています。

 NYダウの強気の年の典型的な展開は、「年の前半に上げ幅の大きな動きが表れて、8月から10月の期間で上値重く推移しても、年前半の上げ分のすべてを押し戻されずに、10月以降に再上昇を開始する」というパターンです。

 一方、弱気の年の典型的な展開は、「1~3月、5~6月、8~10月の時期に、下げ幅を拡大する」というパターンとなっています(20年のNYダウは弱気の展開を想定しています)。

 1~3月は、極端に値幅の大きな下げ場面になることがあります。急落することで下げ幅を拡大します。

 5~6月は、急落して極端な下げ場面になる展開ではなく、ジグザグに日柄をかけて、はっきりとした下げの流れを作り、応分の下げ幅を経過する展開になりやすいといえます。

 8~10月、11月に価格が下げる場合、極端に値幅の大きな下げ場面になることが多く、急落して一気に下げる展開、ジグザグに日柄をかけて下げる展開のどちらの動きも表れます。

◆1月の値動きで年間の下げ幅がみえてくる

 年間が弱気に推移する場合でも、NYダウの下げが2000~3000ドル幅程度で終わるなら、1~3月、8~10月のどちらかで一気に下げて終わることが多くなります。

 5~6月だけ下げて、年間が弱気パターンの年の展開になるという動きにはなりにくいと言えます。

 年間が5000ドルを超すような値幅の大きな下げ場面になる場合、1~3月、8~10月のどちらかの時期に一気に下げるような動きになりにくいと言えます。1~3月と8~10月、5~6月と8~10月、または、3つの時期のすべてで下げの流れを作る展開となって、下げ幅を拡大していきます。

 NYダウは、金融、財政政策ともに出し尽くし、その効果が最大限に生かされた年が2019年だったため、20年の期待値は19年よりも低くなります。個別銘柄なら、1年を通じて上昇する展開も考えられますが、株式市場全体では、年間が弱気に推移すると推測できます。20年の下げは09年3月以降の上げ幅全体の修正の動きである可能性があります。

 したがって、07年10月高値1万4198ドルから09年3月安値6469ドルまでと同程度の値幅(7729ドル)の下げ場面になることも十分に考えられます。

 極端な下げ場面になる場合、下げる時期のパターンは、前述した3通りになりますが、20年だけでいえば、日経平均の事情から、下げていなければいけないと考えられる時期があります。それは、1月です。

 政府は、来年の通常国会の召集日を1月20日として、1月中に大型の経済対策などを盛り込んだ令和元年度補正予算を成立させる日程を考えているようです。1月末頃に補正予算が成立すると、日経平均はその内容が意識される動きになる可能性があります。

 NYダウ、日経平均ともに3月、4月は上昇しやすい時期です。

 日経平均が上昇の流れを作る場合、両指数の連動性からNYダウも上値を試しやすい動きになっていると推測できます。

 NYダウ、日経平均とも、1月に価格が下げないか、下げたとしても下げ幅が限られると、日本の景気刺激策によって、2月以降、上げやすい時期へ向かう流れの中で、3月、5月へ向けて年初来高値を更新する動きになる可能性が出てきます(経済対策に即効性があるのではなく、下げ難い、上げやすい時期を前に価格が下げない動きの中で、ほんの少しだけ、後押しをしてくれるということです)。

 そのような動きになる場合、NYダウは20年の価格が下げる展開となっても、その下げ幅は特別に極端な下げではなく、例年の弱気の展開になる年に表れる範囲内の下げ幅で終わるという見方が有力になります(過去の経験則からです)。

 逆に、NYダウが2020年に7729ドル幅の下げを経過するなら、1月末頃までには、戻り高値から2000ドル幅以上の下げ場面を経過していると考えられます。

 以上の予測は、必ず1月に2000ドル幅以上の下げ場面が表れると予測しているわけではありません。そういう下げを経過しなければ、20年は7729ドル幅の下げ場面にはならず、通常の弱気パターンの年の展開を想定しておけばよいことになります。

 日経平均が1月に2万2000円程度まで下げるなら、1万6000円以下を目指す可能性を考えておく必要が出てきます。一方、1月に底堅く推移するなら、どんなに価格が下げても、1万8000円前後が下値の限界という見方が有力になります。

2019年12月30日 記


 ⇒⇒ 株探プレミアムでは「伊藤智洋が読むマーケット・シナリオ【週間展望】」を毎週日曜日の朝に配信しています。

【伊藤智洋 プロフィール】
1996年に投資情報サービス設立。メールマガジン、株価、商品、為替の市況をネット上で配信中。最新刊「勝ち続ける投資家になるための 株価予測の技術[決定版]」(日本実業出版社)、「儲かる! 相場の教科書 ローソク足チャート 究極の読み方・使い方」(日本実業出版社)など著書多数。


★元日~6日に、2020年「新春特集」を一挙、“26本”配信します。ご期待ください。
        →→ 「新春特集」の記事一覧をみる

株探ニュース

株探からのお知らせ

    日経平均