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【特集】窪田朋一郎氏【新春特別編・ずばり20年相場はこう動く】(2) <相場観特集>

窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)

―米国発「超強気相場」の行方は? 上値の可能性と下値リスクを読む―

 2020年相場はどういう軌跡を描くのか。昨年は日経平均株価がバブル崩壊後の高値奪回にあと一歩というところまで迫った。米中貿易交渉の第1段階合意の署名を控え、両国の対立の構図は和らいでいる。ただ、日経平均は年明けの大発会で中東情勢の緊迫化を受けて波乱含みのスタートを余儀なくされた。果たしてこの先にはどういった相場シナリオが待っているのか。今回は相場観特集のスペシャル版として、市場第一線で活躍する識者2人にずばり年間の相場見通しを聞いた。

●4月に2万6000円チャレンジ、秋口以降は調整へ

窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)

 東京株式市場は2020年に入っても、当面の間は上値指向が継続しそうだ。年初から中東情勢が緊迫化し波乱含みの大発会となったが、日米ともに株高に誘導されやすい地合いが続くとみる。背景にあるのはFRBの緩和的金融政策を背景とした過剰流動性相場だ。FRBは昨年、それまでの利上げから一転して利下げに政策スタンスを方向転換した。更にT-Bill(国庫短期証券)を継続的に買い入れるなど量的緩和ともいえる政策を打ち出しており、これが株式市場にポジティブに働いている。米国主導の緩和政策はECBなどにも影響を与え、世界的な緩和モードが続くなかで、今後も東京市場はその好環境を享受する。

 日経平均は年前半に上値追いの局面を迎え、4月には瞬間的に2万6000円をうかがうような場面が訪れるのではないかとみている。企業業績は決して良いとはいえず、日経225ベースのPERで判断しても今は過去のアベノミクス相場における高値ゾーンに近づいている。その点では上値を買いにくい要素は否定できないが、来期(21年3月期)以降の業績改善を前倒しで織り込むという形で金融相場を満喫できそうだ。

 リスク要因を挙げるとすれば米中対立の構図が深まる場合で、例えば単純な貿易摩擦問題ではなく、知的財産に絡む問題で両国の交渉が暗礁に乗り上げるといったケース。また、イラン問題が激化し原油価格が高騰するケースや、11月の大統領選で仮にトランプ米大統領が敗北を喫した場合には、株価急落の懸念も出てくる。

 もっとも、そのリスクシナリオが回避できたとしても、日米ともに春ごろに高値を形成した後は株価の動きが鈍くなるだろう。年央から秋口にかけて全体相場はもみ合い局面に移行するとみている。そして、大統領選が近づくにつれ、トランプ大統領は選挙対策を意識して米中対立を再び煽るような政治姿勢を強める公算がある。NYダウはこれを嫌気して軟化傾向をたどることが予想される。更に、選挙後はトランプ大統領が勝利した場合でも、その後は株高誘導のインセンティブが低くなることで株式市場は調整局面を迎えそうだ。米中対立がエスカレートすることで深押しもあり得る。東京市場も当然ながら米国株に連動する形で売り優勢の地合いとなり、日経平均は12月には瞬間的に2万円近辺まで調整色を強める可能性があるとみている。

 なお、個別株物色の方向性については、投資テーマとして5G やビッグデータ、東京五輪関連などが注目されそうだ。5Gでは半導体関連と並走する形でソニー <6758> 、東京エレクトロン <8035> 、村田製作所 <6981> などを牽引役に物色の裾野が広がっていくだろう。また、ビッグデータ関連ではNTTデータ <9613> 、野村総合研究所 <4307> 、ブレインパッド <3655> などが存在感を示す。東京五輪関連としてはスポーツ用品を手掛けるミズノ <8022> やゴールドウイン <8111> といった銘柄にマーケットの視線が向かいそうだ。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券へ入社後、マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。


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