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【特集】世界連鎖株安、“パンデミック暴落”の行方を探る <株探トップ特集>

新型コロナウイルスの感染拡大による世界連鎖株安が続いている。今回の株式市場の波乱は、新型コロナの世界的流行を背景にした従来とは“異質の暴落”との見方が出ている。

―日経平均株価は2年11ヵ月ぶり安値、バイオ株に反騰の芽も―

 日経平均株価 が下げ止まらない。12日の東京株式市場で、日経平均は一時1000円超安と連日の急落。新型コロナウイルス による感染拡大の影響が懸念され、世界連鎖安の流れが続いている。今回の株価急落は、「新型ウイルスとの闘いを背景にした未知の領域のもの」との見方もあり、不安感から売りが売りを呼ぶ展開となっている。そんななか、市場にはバイオ株 などに次の反騰の芽を探す動きも台頭しつつある。

●トランプ演説を機に株価急落、米国への欧州からの渡航を制限

 12日の東京株式市場で日経平均は前日比856円安の1万8559円で取引を終えた。一時、下落幅は1000円を超え17年4月以来、2年11ヵ月ぶりの水準にまで売り込まれた。前日のNYダウ が1464ドル安と急落するなか、世界連鎖安の流れは断ち切れないでいる。特に、この日の日経平均株価の急落のキッカケとなったのは、日本時間の午前10時に行われたトランプ米大統領の国民向けテレビ演説だ。同大統領は、新型コロナウイルスの感染拡大に対する対応策を発表し「英国を除く欧州から米国への渡航を30日間大幅に制限する」と表明した。

 このトランプ大統領の発表を受け、日経平均は一気に下げ幅を拡大し、為替市場ではドル安・円高が進行した。個別株では日本航空 <9201> やANAホールディングス <9202> といった空運株などが急落した。市場関係者からは「米国と欧州間のビジネスが大幅に縮小する」ことを警戒する声が上がった。また、「期待された財政対策は打ち出されなかった」ことも失望売りを呼んだ。この日の下落で日経平均は1月のザラ場高値2万4115円からの下落率は20%を超えた。NYダウも2割を超える下落となり「弱気相場」入りした。今回の下落の特徴は、2008年のリーマン・ショックを上回るスピードにある。この急落が意味するものとは何だろうか。

●NYダウ、日経平均ともに高値圏から急落に

 ブーケ・ド・フルーレット代表の馬渕治好氏は「米国株は明らかに割高に買われていた。新型コロナの感染拡大は買われ過ぎを調整する引き金になったと思う。NYダウは2万3000ドルがほぼ適正で、オーバーシュートしても2万2000ドル近辺が下値メドとみている。ただ今後、米企業業績が大幅に悪化することを考慮した場合、PERで底値を予想するのには限界がある。外部環境的には、夏までに新型コロナが終息するかどうか、これがカギを握ると思う」と話す。

 暴落直前までNYダウは最高値圏にあったほか、日経平均も20数年来の高値に接近する水準にあった。それだけに「コロナショック」の直撃を受け、株価は高値圏から急落した面は大きい。しかし、市場からは今回の急落はリーマン・ショックのような金融システム不安による下落とは違う「異質の暴落」とみる声も出ている。

●世界市場が発展するなか未経験のパンデミック相場に突入

 キャピタル・パートナーズ証券の倉持宏朗チーフマーケットアナリストは「未知のウイルスに脅えマーケットがパニックに陥ったような事態は、過去に経験したことがないのではないか」という。新型コロナが蔓延するなかでは、ヒトとヒトの接触は避けられ、これまでは当たり前だった個人に対する商売や企業間のビジネスに支障をきたしてしまう。特に、グローバル化が進行し緻密なサプライチェーンが築かれたなかでの反動は図りしれない。03年にかけ発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)は、新型コロナのようなパンデミック(世界的な大流行)に至ることはなく終息した。しかし今回、世界保健機構(WHO)は「パンデミック宣言」を行った。金融市場が極度に発達したなかでの、今回のような新型ウイルスの世界的流行に端を発する暴落は初の事態といえるだろう。

 この過去の経験則が通じない状況のなか「市場参加者はポジションを閉じ、いち早く現金化しようとしている」と倉持氏はいう。このキャッシュ化の動きが、株価の急落となって表れている。

●新型コロナの感染状況が焦点、米バイオ株反騰に期待感膨らむ

 ただ、金融市場はなすすべも無く立ち尽くしているわけではない。「日米欧の中央銀行による金融政策が、相場の下支え役を果たすことへの期待は大きい」(ネット証券の情報担当者)という。今晩の欧州中央銀行(ECB)理事会や来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)に加え日銀金融政策決定会議が相場の反転役を果たすことができるかどうかが注目されている。

 とはいえ、焦点はやはり新型コロナの世界的な感染拡大の状況だ。これから春本番を迎え世界的な感染拡大は落ち着くのか。また、どれほどの経済への悪影響があったのかを確かめる局面になりそうだ。特に、日本の場合は東京五輪 が開催できるかどうかが高い関心を集めている。東京五輪が中止となった場合の損害は7兆円を超す規模に達するとの試算もある。

 全般相場は全面安が続くが、反転攻勢に向けた手掛かりも徐々にだが見え始めている。米国市場では、大手バイオ医薬品メーカー、ギリアド・サイエンシズの株価が新型コロナ治療薬への期待で逆行高している。また、ワクチン開発に取り組む米イノビオ・ファーマシューティカルズやモデルナの株価も堅調だ。日本ではアンジェス <4563> [東証M]が新型コロナの感染を防ぐDNAワクチン開発に乗り出している。今後、バイオ株を中心に新型コロナによるパンデミック相場に対する反騰を開始することも期待されている。

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