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【市況】【村瀬智一が斬る!深層マーケット】 ─ パニック的なアンワインドの流れは一巡

RAKAN RICERACA 代表取締役 会長 村瀬智一

「パニック的なアンワインドの流れは一巡」

●東京都の外出自粛要請による封じ込め効果を見極め

 3月第4週(23-27日)の日経平均株価は、前週末につけた1万6358円を安値に強いリバウンドをみせ、一時1万9500円に乗せるなど、日銀が保有するETFの損益分岐点を回復した。 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気悪化を避けるため、米トランプ政権と与野党の議会指導部は総額2兆ドル(約220兆円規模)の経済対策で大筋合意したほか、米連邦準備制度理事会(FRB)が米国債や住宅ローン担保証券(MBS)の買い入れ量を当面無制限とする緊急措置を決めたことが材料視された。

 これにより、前週まで続いていた現金化を急ぐパニック的なアンワインド(ポジション解消)の流れも落ち着きをみせている。また、今週については日銀のETF買い入れ額が倍増している影響はもとより、期末要因による一部年金資金の流入のほか、配当期末に伴う配当再投資(約8000億円程度)に絡む需給要因が下支えとなっているとの見方が大勢である。そのため、市場では新年度入り後の動向を不安視する声が多い。

 ただし、グローベックスの米株先物でのサーキットブレーカー発動の影響により23日寄り前につけたシカゴ日経225先物の1万5060円が“幻の安値”となり、目先のボトム水準として意識されるだろう。各国が打ち出した大規模な金融政策によって金融市場の混乱は落ち着いてきており、新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込めるか行方を見極めたいところである。

 とりわけ東京都の外出自粛要請による封じ込めが効果を発揮できるのかが注目されよう。足元では米国の新型コロナウイルスの感染者数が中国を上回り、世界最多となった。一方で、日本と中国は新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込めているとの評価もみられる。しかし、自粛疲れによる警戒の緩みからか、ここにきて東京都では2日連続で40人超の感染が確認されるなど、その感染者数は北海道を抜きオーバーシュート(爆発的な感染拡大)が生じる恐れが浮上してきている。

 米国や欧州が危機的な状況にある中、先進国では唯一、日本が封じ込めの成功例として評価されていた。世界的なリスク回避姿勢の中で、売り込まれた日本株への資金シフトも次第に意識されてくる可能性もあるとみられるだけに、封じ込めの成否が重要となる。一方で、東京都の小池知事が発言した「ロックダウン(都市封鎖)」ともなれば、海外勢のシェアが6割超を占める日本市場においては、AIアルゴリズムによる機械的な売買も含めて売り圧力が強まることには警戒しておきたい。

 このような状況ではあるが、個人の需給状況には改善傾向もみられている。これまでの下落局面において株価が半値水準となった銘柄は少なく、市場から退場した投資家も多いだろうが、新たに参加してくる投資家も増えている。ここにきてネット証券の口座開設数も伸びており、中長期スタンスでみたボトム圏として意識する投資家が参戦してきている。

 また、3月はIPOシーズンでもあったが、軒並み上場初値が公開価格割れとなったほか、上場を延期する企業も相次いでいる。ただ、その中でも26日に上場したアディッシュ <7093> [東証M]、サイバーセキュリティクラウド <4493> [東証M]はいずれも公開価格を大きく上回る好スタートを切っている。 AISNS セキュリティといったテーマ性のある銘柄とはいえ、投資家のセンチメントの改善がうかがえる。

 引き続き、食品や医薬品、マスクテレワークといった新型コロナウイルスの感染拡大をキーワードとした物色が継続することになりそうだが、大きく売り込まれた銘柄についても中長期スタンスで物色する動きもみられてきそうである。このほか、経済活動がストップする中で業績下方修正の流れは今後も強まると考えられ、これを乗り切る資質を備えたキャッシュリッチ企業にも関心が集まりそうである。

●今週の活躍期待「注目5銘柄」

◆内田洋行 <8057>
オフィス家具や企業向け基幹業務システムのほか、学校向け備品・システムを手掛けており、教育ICT関連として位置づけられる。4月から新学期が始まるものの学校休校の流れなどが長期化する可能性があるほか、4月からは小学校でプログラミング教育が必修化されるなど情報教育に力が注がれることもあり、関連物色が再燃する可能性がありそう。

◆ストライク <6196>
日本国内の中堅・中小企業を対象としたM&A仲介業務を行っている。足元では2020年8月期第2四半期累計業績予想の上方修正を発表。事業承継ニーズを中心にM&A市場が順調に拡大しており、計画を上回る案件の成約が見込まれる。新型コロナウイルスの影響により事業の持続を断念する企業も今後増えてくる可能性があり、需要が高まりそうである。

◆イグニス <3689> [東証M]
恋愛・婚活マッチングサービス「with」が主力。バーチャルライブプラットフォームの企画・開発・運営などを手掛けている。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛が広がる中、マッチングアプリの利用が増加する可能性がありそうだ。人は長く隔離されればされるほど、人づき合いが恋しくなるようであり、登録無料の婚活・恋活・出会いアプリの需要が高まりそうである。

◆Jストリーム <4308> [東証M]
動画配信に必要な機能とワークフローを一元的に提供する動画ソリューションを展開。講演会・セミナー、株主総会をはじめとするIRイベントのライブ配信、視聴者限定イベント(ファン限定イベントなど)を手掛けており、外出自粛ムードの中、動画配信を行う企業などが増えてくる可能性が高い。

◆ソニー <6758>
業績面で安心感のある主力企業の1社。自動車メーカーにおいて生産停止の動きなどがみられるが、4月以降に売り出される新型乗用車にはヘッドライトの自動点灯・消灯機能の搭載が義務化されるため、センサー等の需要に期待。また、ソニー・ミュージックエンタテインメントの100%子会社であるアニプレックスでは、人気テレビアニメ「鬼滅の刃」のゲーム化プロジェクト2本が進行中である。

2020年3月27日 記

株探ニュース

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