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【特集】すご腕投資家さんに聞く「銘柄選び」の技 すぽさんの場合-第1回

暴落前に先回りで全保有株を現金化、"神判断"した人の技とは?

登場する銘柄
BuySell Technologies<7685>、じげん<3679>、アイ・アールジャパンホールディングス<6035>、エスプール<2471>


文・イラスト/福島由恵(ライター)、構成/真弓重孝(株探編集部)

すぽさんすぽさん(ハンドルネーム、40代・男性)のプロフィール:
幼いころから企業分析が大好きな、自称「企業分析おたく」。確定拠出年金(DC)をきっかけに会社員時代から株式投資を行う中、リーマン・ショックで運用資産の半分以上を吹き飛ばすという苦々しい大ヤラレを経験。以降、「高成長」「優れたビジネスモデル」「割安」にこだわった独自の投資方法を編み出す。その後は爆発的&安定的な資産拡大に成功し、約6年で資産10倍超を遂げる。2018年7月から勤めていた会社を退職し専業投資家に転身。会社員の頃から継続している『すぽさん投資ブログ』では、読者参加型で個別の企業分析などの意見交換ができるスタイルが好評。自身も有効な情報収集&投資スキル向上のツールとなっている。数々のマネー誌等に登場するのと並行し、19年には『10万が100万になる株の本当の探し方』(ぱる出版)を出版。現在運用資産額は数千万円、億り人に向かって邁進する日々だ。

 「自分が考えたことが現実のものとなってしまうなんて。ちょっとゾッとするような気持ちで相場を眺めていました」。

 日本でも7都府県に緊急事態宣言が発令されるまでの状況になったコロナショックで、株式市場は2カ月のうちに取引時間の直近高値から、一時は30%も大暴落する事態に陥った。この異常事態に巻き込まれ、含み損を膨らませてしまった人もいるだろう。

 だが今回登場する個人投資家のすぽさん(ハンドルネーム)は、大暴落が始まる直前の1月末時点で現金比率を100%の状態にしていた。おかげで、現在も保有資産を無傷の状態にしたまま乗り切ることができている。

 後で詳しく述べるが、注視している米国株の動きと、最近自身が注目していた理論を基に、「今後大きな株価調整がやってくる」と判断して、ポジション整理を断行した。すぽさんは自身のSNS(交流サイト)では1月末に投資戦略を変えたと宣言しており、また取材陣はコロナショックが深刻化する前に、これが現金比率を100%にしたことであると確認している。

■すぽさんのツイート
【タイトル】

 すぽさんは、この新型肺炎がこれほどの衝撃になるとは思いもよらなかったようで、見立て通りの調整が現実になったことに、冒頭に記したゾッとする感覚を抱いたそうだ。

 まさにすご腕&すご読みの投資家さんの投資手法や遍歴などを、『株探』プレミアムでは今後4回にわたり紹介していく。まずは自身も驚く結果になった、大調整への警戒からポジションの整理に動いた背景について見ていこう。

バブルの米国株を警戒、異常サインを見極める

 「この暴落相場に先回りして現金比率100%にしていたなんてスゴ過ぎる」
 「すぽさんに脱帽」

 SNS界隈では、この相場で大きくやられてしまった投資家を中心に、賞賛の声が飛び交っている。もう一度おさらいすれば、株式相場の暴落が加速したのは2月半ば頃になるが、すぽさんはその1カ月前の1月末にノーポジションの状態にしていた。

 いったいどんな思考プロセスで、大胆というか慎重過ぎる行動に出ることができたのか。それは先に少し触れたが、「米国株がバブル的状況になっているのではないか」という警戒感を、2019年末頃から持ち続けていたことになる。その根幹にはファンダメンタルズ、経済状況や企業業績は悪化しつつあるのに、株高が進んでいることへの違和感があった。

 別の回で詳しく触れるが、すぽさんの投資戦略は企業分析を徹底的に行い、中長期の業績成長やそれを実現するビジネスモデルに着目するファンダメンタルズを重視するものだ。現在は専業投資家に転身しているが、18年夏までは会社員として忙しく働きながら株式投資を行う上で、自分に適した投資スタイルを磨き上げてきた。その選択が間違っていなかったことは、投資に本腰を入れ始めてから、約6年で資産を10倍化させた実績が物語る。

 メーンの投資対象は日本株だが、日本株の先行きを見極める上でベンチマークとして注視してきたのが、世界の経済および株式市場をけん引する米国の政治経済および米国株だ。各方面から過熱警戒感を指摘されてきた米国株が「そろそろ限界。これはヤバい」というサインを、すぽさんは今年1月に入ってから感じ取り、現金化に踏み切ったのだ。

二度の大ヤラレを教訓に対策を打つ

 保有株を全て手仕舞うというのは、過熱感や投資家心理などの各種の指標を基に売買するテクニカル派に比べると、すぽさんのようなファンダメンタルズ派には容易でない面がある。

 というのも経済の先行きや全体の株価水準といったマクロ的な懸念があっても、投資対象の企業業績や成長ストーリーに陰りが明確に見えない段階で手放すのは、自分の投資スタイルや判断を否定することにもつながるからだ。実際、これまでのすぽさんは「自分がしっかり企業研究して有望と思った銘柄は売らない」というスタイルを貫いていた。

 すぽさん以外のファンダメンタルズ重視&中長期投資家にも、全体相場が下がっても、自身が選んだ銘柄のファンダメンタルズに変わりがなければ、手放さずに長期保有するという信念を掲げている人は多い。

 それが今回、すぽさんが大なたを振るうに至ったのは、過去十数年の間に起きた二度の相場大暴落に巻き込まれ、運用資産を大きく減らした苦い経験があったからだ。一度目は2008年のリーマン・ショックで、二度目は18年末に襲ったFRB(米連邦準備理事会)ショックともいうべき暴落だった。この二度の暴落で、リーマン時には50%以上、18年末には30%に当たる資産を"溶かす"ことをしてしまった。

 いくら有望銘柄を選んでいても、リーマン時のような世界的な信用収縮に陥る事態では巻き添えを食うのは避けられないのだ。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。



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