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【特集】“直近IPO”を見直せ! 動乱乗り越える成長企業を追え <株探トップ特集>

上場予定15社中、14社がIPO取り止め――。前代未聞の混乱の渦中にあるIPO市場で、直近上場銘柄の価値はむしろ高まっている――。

―上場中止14社の異常事態も見直し人気集中余地―

 新型コロナウイルス の感染拡大はまだ収束の気配を見せないものの、株式市場では、コロナショックに対する市場の警戒心が和らぎ始めたようにみえる。欧米で新規の感染者がピークに達しつつあるとの見方が広がり始めたためだ。

 また、米国では3月27日に現金給付や雇用支援など2兆ドル規模の経済対策を成立させ、更に追加対策の検討を始めるなど、各国の大規模な経済対策の効果への期待も高い。足もとの経済指標は悪いものの、年後半には景気は回復するとの期待感も出ている。

 市場参加者の心理を表すVIX指数も、米株式市場で3度目のサーキットブレーカーが発動した3月16日には高値83.56を付けたが、その後は徐々に低下し、4月15日には終値で40.84となった。引き続き警戒領域である30を上回っているものの、市場の心理は明らかに改善しているといえる。

 これを受けて、NYダウは3月23日の安値1万8213ドルを底に回復に転じているほか、日経平均株価も3月19日安値1万6358円を底に反発に転じている。もちろん、新型コロナウイルスの感染拡大に収束の兆しが見えないなか油断は禁物だが、株式市場は徐々に落ち着きを取り戻しているといえよう。

●IPOは中止が相次ぐ

 こうしたなかで、いまだ混乱から完全に抜け出ていないのがIPO市場だろう。

 当初、4月は2日付でマザーズ市場に上場を予定していた実演販売のコパ・コーポレーション(東京都渋谷区)をはじめとして、30日にマザーズ市場に上場を予定していたGMOフィナンシャルゲート(東京都渋谷区)まで15社の上場が予定されていたが、うち14社が中止した。例年、IPOの中止・延期は年間で2~3社であることを考慮すると、異常事態であることがわかる。

 こうしたなか、4月6日に上場をした松屋アールアンドディ <7317> [東証M]も、公開価格910円に対して初値838円でスタートするなど厳しい船出となった。投資家がリスク資産への投資を手控える動きを強めるなか、ハイリスク・ハイリターンの代表格ともいえるIPOは、その影響の直撃を食らった格好だ。

●新興市場は徐々に明るさが戻る

 ただし、東証マザーズ指数が3月13日の年初来安値527.30から4月16日終値730.88まで回復しているように、新興市場も明るさを取り戻している。今後、IPO企業数も再び増加が見込まれるが、こうしたなかで見直しが進んでいるのが、直近IPO銘柄だろう。前出の松屋R&Dもスタートこそ冴えなかったが、4月14日高値1990円に上昇している。

 一方、今年に入ってから上場したIPO銘柄まで広げると、事業内容や業績などを考慮する間もなく、全般市場につれ売られたものも多い。新規上場が手控えらえているなか、こうした今年に入ってIPOした銘柄の見直しが進む可能性は十分にある。直近IPOならではのロックアップ解除の規模や時期などは十分留意する必要はあるが、事業内容のユニークさや成長期待などに注目して、銘柄を選別したい。

●ジモティー、AHCグループには見直し余地

 ジモティー <7082> [東証M]は、2月7日にマザーズ市場に上場し公開価格1000円に対して、10日に初値2300円でスタート。2月13日には高値2665円をつけた後、3月13日には安値992円をつけるまで下落していた(4月16日終値1588円)。

 同社は、地元情報プラットフォーム「ジモティー」の運営が主な事業。「地元の掲示板」として地域のさまざまな情報をやり取りしており、利用者はスマートフォンやパソコンから、家電や家具、子ども用品など不用品の売買を呼びかけたり、求人や不動産を探したりできる。一般的なフリマアプリは、利用者はオンラインで決済し、手数料や送料が必要となるが、ジモティーは掲載料が無料で、取引する際に基本的に現金で決済するのが特徴。新型コロナウイルスの影響はあるものの、ユニークな事業内容は注目余地が大きい。

 AHCグループ <7083> [東証M]は2月25日にマザーズ市場に上場し、公開価格2200円に対して3550円の初値をつけた。順調なスタートに見えたが、その後軟化し、4月3日には安値1030円に下落していた(4月16日終値1557円)。

 同社は福祉事業、介護事業、外食事業が事業の3本柱。福祉事業では放課後等デイサービスや児童発達支援事業、介護事業ではデイサービス事業を展開。更に外食事業では居酒屋やカツカレー専門店などを展開している。新型コロナウイルスの感染拡大で外食店舗を一時休業しているものの福祉、介護事業は現在のところ通常通り運営している。また、学校の臨時休校を背景に放課後等デイサービスの重要性が増しているだけに、要注目だ。

 Kids Smile Holdings <7084> [東証M]は3月4日にマザーズ市場に上場し、公開価格2260円に対して2732円の初値をつけた。翌日には高値3495円をつけ上々のスタートだったが、4月3日には安値1280円にまで売られていた(4月16日終値1950円)。

 同社は、保育園運営や幼児教育プログラムの開発を行い東京、神奈川、愛知で認可保育所55園や認可外のプレスクール一体型保育所4ヵ所、幼児教室1施設を展開している。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて一部施設の休園や規模縮小などを行い業績への影響も警戒されているが、他の保育所とは異なり、子育て支援ではなく幼児教育に重点を置いた運営に対するニーズは高い。

 きずなホールディングス <7086> [東証M]は3月6日にマザーズ市場に上場し、公開価格2320円に対して2220円の初値をつけ、冴えないスタートとなった。その後、3月23日安値1618円まで売られたが、株価は緩やかに戻り歩調にある(4月16日終値1940円)。

 同社は、直営ホールでの 葬儀施行が主な事業で、「家族葬のファミーユ」などのブランドで葬儀を施行。そのほか公営斎場などを活用した委託モデルの展開や仏壇などアフター商材販売なども手掛けている。新型コロナウイルスの感染拡大で小規模葬儀への関心が高まるなか、同社の家族葬に対する思惑も働く。

 コンピューターマネージメント <4491> [JQ]は、3月11日にジャスダック・スタンダード市場に上場し、公開価格2750円に対して4360円の初値をつけるなど好調なスタートを切った。ただ、2日目以降は冴えない展開となり、4月2日には安値2410円にまで下落した(4月16日終値3325円)。

 同社は、関西を地盤とする独立系のITベンダーで、金融業や産業・流通向け受託開発・運用保守を中心に、ERPパッケージ製品の導入支援などを展開している。拠点拡充効果などもあり、業績は拡大基調にある点が注目されている。

 ミアヘルサ <7688> [JQ]は、3月17日にジャスダック・スタンダード市場に上場し、公開価格2330円に対して1748円の初値でスタートするなど、冴えないスタートとなった。その後も軟調な動きで、4月6日安値1020円まで下落した(4月16日終値1447円)。

 同社は、「日生薬局」を首都圏で41店舗運営する調剤薬局(医薬)事業を主力とするほか、介護事業や保育事業を展開している。足もとでは新型コロナウイルスの感染拡大で一部施設の休園や規模縮小を行っており、業績への影響が懸念されているが、上場時に明らかにした第3四半期累計(19年4-12月)業績で、営業利益が通期計画を上回っていたことから、達成確度は高そうだ。

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