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【特集】コロナ危機で急浮上、特選「デジタル・セキュリティー精鋭株」 <株探トップ特集>

AI・IoT社会が進展するなか、サイバーセキュリティーや生体認証を手掛ける企業に市場の熱い視線が向けられている。ウィズコロナ時代に一段と活躍余地が高まっている有望株を選出。

―AI・IoT社会に不可欠、成長性に満ちた生体認証&サイバー防衛関連を追う―

●米大統領選接近でサイバー防衛が緊急テーマに

 AI IoT 社会の到来がいわれて久しいが、技術立国といわれる日本はデジタル化の波には大きく乗り遅れた。もはや待ったなしの局面といっても過言ではない。欧米や中国にキャッチアップすべく、政府はデジタル・ニューディールやスーパーシティ構想などを掲げ、官民を挙げてデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進していく必要性に迫られている。しかし、効率性や利便性を追求するだけでは落とし穴にはまってしまう。デジタル化を進めるうえで極めて重要となるのが、悪意のあるサイバー攻撃への対応だ。ここをおろそかにしてインフラを構築しては本末転倒となる。

 そうしたなか次世代高速通信規格5Gの商用サービスが世界的に離陸している。今後、5G環境でネット空間とつながるIoT機器が加速的に増加することは必然の流れとなり、それに比例する形でサイバー犯罪対策へのニーズも急速に高まっていくことになる。

 また、サイバーセキュリティー は国家安全保障の観点からも重要な位置づけにある。今年11月の米大統領選を前にトランプ政権はサイバーテロ対策にかなりの力を注いでいる。2016年の大統領選では、ロシアがサイバー攻撃を仕掛けた可能性は濃厚とみられているが、現在はこれに倣って中国が近隣諸国への“サイバー政治介入”に向けた技術開発を進めているとの観測が強い。当然ながらトランプ政権にとっては、大統領選に向け中国の仕掛けを封じることが大命題となっている。日米の株式市場でサイバーセキュリティー関連が投資テーマとして脚光を浴びるゆえんである。

●テレワーク導入加速とタッチレス認証で新局面

 更に、株式市場でここにきてサイバーセキュリティー関連が注目されている背景には新型コロナウイルスの感染拡大による影響も大きい。感染を防ぐためには“3密”を回避することが重要だが、それを目的とする企業のテレワーク 導入が加速している。テレワークを進めるうえで必要なVPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク)の構築やクラウドの活用において、セキュリティーの拡充は必須となる。内閣サイバーセキュリティセンターは政府機関やインフラ事業者に対しテレワークに対する注意喚起を行っているが、官民一体となった防衛体制の整備は喫緊の課題となっている。

 一方、サイバー空間のセキュリティーとは若干領域が異なるが、AI・IoT社会の進展によりリアル空間のセキュリティーにも高度なデジタル技術が活用されるようになってきた。代表的なのは顔認証 や静脈認証などの生体認証 だ。これもまた、ヒトやモノとの接触を回避するタッチレスの流れと合流し、新型コロナがもたらした社会の枠組みの変化に歩調を合わせ普及が加速する方向にある。

●iPhoneXを起点に進化する認証技術

 米アップルが17年9月に発表した「iPhoneX(テン)」は顔認証技術を搭載した端末として世界の注目を集めたが、その後も同分野の技術は世界が鎬(しのぎ)を削る形で進化を続けている。中国では昨年、スマートフォンを必要としない顔認証決済が普及の緒に就いた。アップルも直近、顔認証機能を改良し、新型コロナ仕様ともいうべきマスク姿でも素早くロック解除できるようにするなど、現在進行形で技術を進歩させている。米国では、アップル以外にもマイクロソフトやフェイスブックなども顔認証技術の開発を積極化させている。

 日本では、ローソン <2651> がスマートフォンなどの端末不要で電子決済が行える無人店舗の実証実験を進めている。これは、富士通 <6702> が開発した顔認証と手のひらの静脈認証を組み合わせた生体認証技術を導入したもので、今後の展開が待たれるところ。また、政府はマイナンバーカードの利便性向上に本腰を入れているが、カード機能をスマートフォンに搭載した場合は、顔認証などの生体認証による本人確認システムを導入する方向で検討を進めている。

 今後は、防犯カメラに映った不特定多数の中から人物を特定するといった顔認証分野における「非積極認証」への対応など、リアルセキュリティーの切り札として随時進化を遂げていくことになる。

●デジタル・ウィズコロナ時代の有望5銘柄

 今回はサイバー防衛や生体認証など、デジタル・ウィズコロナ時代に株価を飛躍させるセキュリティー関連有望5銘柄をエントリーした。

◎富士通フロンテック <6945> [東証2]

 富士通系電子機器メーカーで金融・流通業界向け端末で実績が高い。セキュリティーソリューションでは手のひら静脈パターンを利用した本人認証システムを手掛けており、手のひらをかざすだけの非接触方式で最高水準のセキュリティーを実現、直接触れないため衛生的であり、新型コロナ対策の面でも幅広いユーザーからの需要獲得が見込まれる。また、RFIDタグを利用した重要書類管理などでも優位性を持っている。今年4月には生体認証を手掛ける米フルクラム・バイオメトリックス社を買収、富フロンテクの手のひら静脈認証センサーとフルクラム社のソリューションを融合させて付加価値を高め、海外展開を加速させる方針だ。足もとの業績は構造改革に伴う損失計上などで厳しいものの、既に最悪期は脱しており、来22年3月期は収益急回復に向かう公算が大きい。

◎テクノホライゾン・ホールディングス <6629> [JQ]

 レンズ技術に強みを持つFA・光学機器メーカーで、監視カメラでも高い実力を持っており、リアルセキュリティー関連の有力銘柄。認証分野での展開力にも期待が大きい。子会社を通じ世界最先端のビデオ監視ソリューションを手掛ける中国Dahua社と連携。同社が提供する非接触型人体測温と顔認証を同時に行える「AI顔認証付きサーマルカメラ」の国内代理店を務めている。一方、政府主導で教育ICT化の動きが加速するなか、 電子黒板をはじめ教育関連分野の需要開拓も進んでいる。直近ではGIGAスクール構想で整備される端末活用を意識した授業支援機能を搭載し協働学習に対応する電子黒板の新モデルを今月上旬に発売予定で、株価を刺激する形となった。業績は急成長が続いており、20年3月期は営業利益27%増、21年3月期も伸び率は鈍化するものの増益基調は続く見込み。

◎セグエグループ <3968>

 ITインフラ及びネットワークセキュリティー製品の設計や販売、構築・運用・保守などをワンストップで提供するビジネスを展開している。セキュリティーでは脆弱性診断や管理、認証ソフトなど幅広く手掛ける。ライセンス販売している自社開発プロダクト「SCVX」は外部ネットワークと内部ネットワークの分離を仮想ブラウザ方式で実現し高度なセキュリティーを提供する。NEC <6701> が開発した統合型システムにセグエの中核子会社が開発したソフトを組み込み、ネット閲覧時におけるマルウェア感染リスクを排除する装置など、大手との連携で時代のニーズを捉えた製品も展開している。業績は前期まで4期連続でトップライン、利益ともに2ケタ成長を達成、20年12月期も増収増益トレンドは確保される公算が大きい。

◎エコモット <3987> [東証M]

 建設情報化施工支援システムを主力にIoTインテグレーション事業を手掛ける。IoTで収集したデータをクラウド上に蓄積し、AI分析など活用してリアル空間にフィードバックする。KDDI <9433> が同社株式の20%強を保有する大株主で、緊密なビジネス関係を築いている点もポイント。AI顔認識と高機能サーモグラフィーカメラにより最大16人の体の表面温度を同時測定するシステムを開発、4月から新千歳空港で導入されており、今後は駅やイベント会場、オフィスビルなど多方面で需要を獲得する可能性が高い。業績は足もと厳しい状況で変則決算となる20年8月期は新型コロナの影響直撃で赤字転落が予想されるものの、累計契約数の増加が続くGPSソリューションの回復に加え、新製品の貢献などが予想される21年8月期は黒字に復帰する見込み。

◎セラク <6199>

 ITインフラ構築のほか、デジタル人材の派遣ビジネスを展開しており、サイバー攻撃に対応できるハイスキルな人材育成事業に傾注している。ファイアウォールをはじめとするセキュリティー運用監視やマルウェア・標的型攻撃などの対策支援サービスでいかんなく実力を発揮。企業のDX投資需要は旺盛で、新型コロナ感染拡大を契機にテレワーク導入の動きが加速するなか、それに伴うセキュリティーニーズの取り込みが進んでいる。このほか、温室内環境遠隔モニタリングシステム「みどりクラウド」も同社の看板商品で農業ICT関連として側面も持つ。業績はトップラインの伸びが高水準で、利益面も19年8月期営業利益が前の期比34%増、20年8月期も上期時点で前年同期比2.3倍の4億4100万円と急拡大、会社側通期予想の7億7000万円は増額含みだ。

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