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【特集】カーシェアとマイカー、30年の支出差は「800万~2100万円」+αの例も

清水香の「それって常識? 人生100年マネーの作り方」-第13回
清水香(Kaori Shimizu)
FP&社会福祉士事務所OfficeShimizu代表
清水香1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランナー(FP)業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任。2019年よりOfficeShimizu代表。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、テレビ出演も多数。 財務省の地震保険制度に関する委員を歴任、現在「地震保険制度等研究会」委員。日本災害復興学会会員。

前回記事「賃貸住宅の火災で自室が延焼被害、あなたの失った家財や部屋の原状回復義務は?」を読む
人生の3大支出の費目の1つに「クルマ」があります。平成バブルの頃までは、住宅もクルマも保有するのが人生の一大目標で、ステータスでもあるというのが常識でした。
しかし、2000年代に入り、デフレ経済が浸透、賃金が右肩上がりで伸びにくくなる時代に、長期のローンを組んで自宅やクルマを保有するのは、もはやリスクに。
こうした経済環境の変化にネットの普及が加わり、クルマも「所有から利用」の流れが進み、会員同士でシェアして使うカーシェアリング・サービスが浸透してきました。
このカーシェアリングは、クルマを購入するよりも支出を減らすことになるのでしょうか。今回はこれがテーマです。
【タイトル】
始まりはスイス、米国では会員の7割がクルマの購入をやめたという調査も
カーシェアリングは、1980年代にスイスで始まったと言われています。車の台数が減るため交通渋滞が緩和され、二酸化炭素(CO2)および排出ガス削減などの地球環境保全に役立ちます。
米国のカーシェアリングの社会的効果に関する調査では、シェアリング会社の会員になった3割が入会後にクルマを売却、約7割は新たな購入をやめたといいます。さらに会員の走行距離は5割減り、徒歩や自転車での移動が増加したこともわかっています。クルマの走行距離を減らし、徒歩や自転車の移動が増えれば、移動にかかる家計の支出は減ったはずです。
日本でカーシェアリングは2000年代初頭から始まり、事業者が運営する会員向けサービスとして展開されています。会員数および車両台数は2010年あたりから急増しており、2020年は200万人の大台を突破しました(出所:公益財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団)。
2010年以降、日本ではスマートフォンが急激に普及してきましたが、それと歩調を合わせるようにカーシェア会員も増え続けています。スマホの登場によって、カーシェアリングの使い勝手が劇的に向上したこと、同時にカーシェアリングに関わる月会費などのコストが下がってきたことも、その要因でしょう。
こうした状況もあり、自動車メーカーのトヨタ自動車<7203>も、カーシェアリング事業に本格参入、所有から利用への時代に適応を図っています。
■国内のカーシェアリング・サービスの会員数と車両台数の推移
【タイトル】
出所:公益財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団
注:2002~05年は4~6月調べ。06~14年は1月調べ。15年以降は3月調べ。

自家用車は各種税金や保険料が固定費に
では、今回の本題のカーシェアと自家用車を保有する場合と、支出額はどの程度、異なるのでしょう。まず保有する場合に発生する支出を整理しましょう。
新車を購入する場合、購入代金と消費税がかかります。新車登録時には、自動車税と自動車重量税がかかり、さらに車両登録や車庫証明、納車費用などが別途必要になる場合があります。そのほかに自賠責保険料と任意保険料が必要となります。
維持費用ではどうでしょうか。税金では、自動車税が毎年度、重量税は車検時に必要になります。さらに任意保険料、定期点検料金、車検費用が定期的にかかります。また自宅に駐車場がなければ駐車料金も必要になります。そして購入時にローンを利用すれば、金利を加えたローン返済額を負担することになります。
自家用車の税金や自賠責保険は必ず負担が発生するので、固定費と捉えられ、月にならすと何がしかの費用を負担している計算になります。
カーシェアは利用しなければ、月の支出がゼロないしは1000円程度に
一方のカーシェアリングはどうでしょうか。
大まかにいうと会員登録時にかかる初期費用、月額基本料金、利用料金の3つとなりますが、サービス事業者によっては初期費用がかからないケースもあります。下の表はカーシェア・サービス大手3社のサービス地域や会員数、代表的な料金内容を整理したものです。
具体的には、パーク24<4666>系の「タイムズカーシェア」、オリックス<8591>系「オリックスカーシェア」、三井不動産<8801>系の「カレコ・カーシェアリングクラブ」の例になります。
■カーシェアリング・サービス大手3社のサービス体制と主な料金比較
サービス名 タイムズ
カーシェア
オリックス
カーシェア
カレコ・カーシェア
リングクラブ
事業者 タイムズ
モビリティ
オリックス
自動車
三井不動産
リアルティ
実施地域 全国 37都府県 12都府県
車両ステーション数 1万2969カ所 2016カ所 2408カ所
車両台数 2万7586台 3453台 4219台
会員数 137万6871人 27万3291人 17万7387人
初期費用 1650円 無料 無料
主な利用
プラン
個人プラン・
家族プラン
個人Aプラン 注4 ベーシックプラン 注6
月額基本料 880円 注1 840円 980円
利用料金
時間 15分毎 注2
ベーシック 220円
ミドル     330円
プレミアム  440円
15分毎 注5
スタンダード 210円
ミドル      250円
デラックス   440円
10分毎 注7
ベーシック      140円
ミドル          160円
プレミアム      270円
プレミアムプラス 500円 
距離 1kmごと
16円 注3
1㎞ごと
16円
1㎞ごと 注8
ベーシック16円
ミドル18円
その他20円

出所:各社のウェブサイト。
注1. ほかに月額基本料が無料の学生プラン、法人プランがある。注2. ナイトパック料金もある。
注3. 6時間以上利用した場合に適用。注4. 月額基本料が無料の「個人Bプラン」「学生プラン」もある。
注5. 他のプランは料金が異なる。注6. 月額基本料が無料の「月額料金無料プラン」もある。
注7. 6時間以上はパック料金。 注8. 6時間以上の場合


利用料は10~15分の利用で200~500円程度の従量制、併せて距離料金がかかるなど、料金設定は事業者によっても異なります。レンタカーのように、6時間など長めに利用できるパック料金の設定もあります。
カーシェアの場合、利用しなければ、概ね1000円以内の月額基本料金のみで、プランによってはゼロ円にすることもできます。
ちなみに筆者はカーシェアリングの合理性に大いに共感し、長年にわたりウオッチしてきました。サービスを始めた頃と比較すると、利用料金は劇的に下がっています。
日本初のカーシェア・サービス「CEVシティカーシステム(個人利用)」の利用料金は、2006年当時の資料によれば、初期費用として会員登録手数料が1万500円で、さらに利用に必要なICカードが1枚1575円でした。
月額基本料金は5250円、15分単位の利用料金は105~157円。費用によっては現在と桁が1つ違います。この料金では、会員登録をするか、ちょっと悩むかもしれません。
では、もう少し自家用車とカーシェアのコスト比較を深堀りしてみましょう。車種にもよりますが、環境性能の高いコンパクトカーの場合、試算すると30年間で800万~2100万円+αの負担額を抑えられる結果になりました。


 

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