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【特集】燃費規制強化待ったなし、「車体軽量化」関連が株高アクセル全開へ <株探トップ特集>

環境規制が強まるなか、燃費向上につながる車体軽量化は自動車メーカーにとって最重要課題のひとつ。車体の軽量化は重い電池を搭載するEVで特に求められている。

―EVの航続距離延長でも重要なファクター、車重軽減に寄与する企業に商機―

 地球温暖化対策の一環として、自動車から排出される二酸化炭素(CO2)に対する規制が世界的に年々強化されている。パリ協定で制定された「産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑える」という目標に向け、各国ではガソリンやディーゼルなどの内燃機関から電気駆動にシフトする過程の真っただ中にあるが、重い電池を搭載する電気自動車(EV)にとって車体重量の軽減は航続距離を延ばすために欠かせない要素のひとつ。2021年から燃費規制がより厳格化されることからガソリン車などの「車体軽量化」も更に求められることになり、素材など関連企業の存在感は一段と高まりそうだ。

●21年から強化される排ガス規制

 欧州で21年から厳しい排ガス規制が導入される。これは21年以降(段階的に20年から)欧州で販売するすべての車種の平均値としてのCO2排出量を走行距離1キロメートル当たり95グラム以下(従来は1キロメートル当たり130グラム以下)にするというもので、基準を達成しないと自動車メーカーに罰金が科せられる。人気の高いSUV(スポーツ多目的車)など車両重量が重いクルマは規制の対応が難しく、そのCO2排出量を相殺するため各メーカーは環境負荷の低い電動車の投入を急いでいる。

 また、日本でも20年4月に新基準が施行され、30年度を目標にガソリン1リットル当たりの走行距離を25.4キロメートルと16年度実績から32.4%改善することを義務付けた。燃費基準の達成判定は従来通り企業別平均燃費基準(CAFE)方式で行うが、内燃機関車に加えてEVやプラグインハイブリッド車(PHEV)も算出対象となり、EVなどの表示項目は21年4月から適用される。米国でもパリ協定に復帰する姿勢を示しているバイデン次期米大統領が各国と同様に燃費規制を強化する可能性があり、自動車業界は課題克服に向け対応を迫られている。

●UACJ、アーレスティなど注目

 こうしたなか、自動車用アルミニウム事業の強化を図っているUACJ <5741> は20年10月、設計部門と開発部門を統合した新組織「モビリティテクノロジーセンター」を設立。一貫体制を構築することで競争力を高めるのが狙いだ。

 ダイカスト大手のアーレスティ <5852> は電動化対応部品の受注活動を積極展開しており、23年には受注量を19年に比べて倍増させダイカスト売り上げの約2割まで高める計画。更に25年には売り上げの3割以上を電動化対応部品で構成するよう進めている。

 加えて、自動車に関わるあらゆる樹脂部品を提供するダイキョーニシカワ <4246> 、樹脂成形で豊富な知見を持つ森六ホールディングス <4249> 、ホットスタンプ一体形成技術やハイテン材加工技術を有するジーテクト <5970> 、鋼材の表面硬度を強化する焼き入れ加工など金属の熱処理加工を手掛けるオーネックス <5987> [JQ]、高張力鋼板の活用などで軽量化ニーズに対応するエイチワン <5989> などのビジネス機会も広がりそうだ。

●1月に軽量化技術展が開催

 これ以外では、21年1月20~22日にかけて東京ビッグサイトで開催される「第11回 クルマの軽量化技術展」に出展を予定している企業にも注目したい。住友化学 <4005> は金属より軽量かつマグネシウム合金以上の剛性を発現する「スミカスーパー SCG-380A(R&D)」などを紹介するほか、タカギセイコー <4242> [JQ]は熱可塑性樹脂と 炭素繊維の複合材で大型構造部品を軽量化した「樹脂製バンパービーム」を展示する見込み。

 荒川化学工業 <4968> は炭素繊維用水系強度向上剤、ノリタケカンパニーリミテド <5331> は自動車軽量化部品用加熱炉、ウシオ電機 <6925> は樹脂を硬化させるスポットタイプ紫外線照射装置、フクビ化学工業 <7871> [東証2]は炭素繊維複合材「タフジット」をアピールする計画だ。

●有力素材のひとつCFRP

 CO2排出量を削減するためには車両製造の技術革新が重要なカギとなるが、軽量化の有力素材のひとつが炭素繊維強化プラスチック(CFRP)だ。これは炭素繊維とプラスチックを組み合わせた素材で、鉄と比べて比重は5分の1程度、強度は同等、剛性は約2倍といった優れた特長を持つほか、衝撃吸収力や設計自由度が高く、熱膨張率が低いといったメリットもある。

 直近では三菱ケミカルホールディングス <4188> グループの三菱ケミカルが、熱可塑性樹脂を用いた炭素繊維複合材料(CFRTP)のパイロット設備を福井県内に新設し、21年中の稼働を予定していると発表した。熱硬化性樹脂を使ったCFRPに対して、CFRTPは部品製造に要する時間を短縮できリサイクルも容易で、同社はモビリティー分野に向けて最適なソリューションをタイムリーに提供するとしている。

 また、帝人 <3401> は10月、独アーヘン工科大学の関連組織が主催する自動車軽量化などに寄与する技術開発のための産学共同のオープンイノベーションプログラムに参画することを明らかにした。このプログラムには熱硬化性・熱可塑性複合成形材料などの高機能材料のエキスパートが集結しており、このなかで同社はEV用バッテリーボックスの開発・製造に携わるという。

 日本アビオニクス <6946> [東証2]は10月、保有技術である精密接合機器技術を応用し、炭素繊維強化熱可塑性樹脂(熱可塑性CFRP)とアルミニウム合金を締結部品や接着剤を使わずに、直接接合する異種材接合技術を開発したと発表。これまで金属と熱硬化性CFRPを接合するには、接着剤による接着接合やボルトなどで締結する機械的な接合が主流だったが、新たに開発した接合工法では更に高い接合強度を得ることが可能だ。

 北川精機 <6327> [JQ]は9月、CFRTP一方向連続繊維(UDテープ)素材の自動積層装置を開発した。同社の大型多段プレスと組み合わせることで、サイズ・構成自由度に加え、高い生産性を併せ持ったCFRTP積層板成形ラインを構築することができる。

 このほか、CFRTP「CABKOMA」を展開している小松マテーレ <3580> 、CFRP「CARMIX」を手掛ける阿波製紙 <3896> 、CFRPの製造設備や成形品を提供する栗本鐵工所 <5602> 、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と小型ロボットタイプのCFRP曲面積層機を開発した津田駒工業 <6217> 、熱硬化性・熱可塑性の2種類で炭素繊維の強度を生かす成形技術開発に取り組んでいる三光合成 <7888> などにも商機がありそうだ。

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