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【特集】ゲームストップ騒動が知らしめた需給の威力、ならば今の日本は下がりにくい!?

元・証券ディーラーに聞く、需給で考えるウィズコロナ相場~第1回

~株探プレミアム・リポート~
文/福島由恵(ライター)、編集・構成/真弓重孝(株探編集部)

たけぞうさん(ハンドルネーム)のプロフィール:
たけぞうさん証券会社に30年間勤務し、ディーラー歴25年で50億円を稼ぎ出した相場の大ベテラン。場立ちや平成バブル相場の隆盛と崩壊を目の当たりにしてきた自称「株好きのおっさん」。現在は独立し、個人投資家としてバリバリ投資を続けつつ、セミナー講師として登壇し投資のノウハウを個人投資家向けに伝授する。
最近は『50億稼いだおっさんが教える月5万稼ぐ株投資』(ぱる出版)を出版。毎朝4時に起床して日本経済新聞を読み込み、同じく毎日発信するボリューム満点のメルマガも好評だ。

特定銘柄の空売りをめぐるヘッジファンドと個人投資家の攻防が、世界の株式相場の混乱を招いた米国のゲームストップ株騒動。その余波は、日本株にも及んだ。

相場を動かす「需給の力」を、まざまざと見せつけられたこの混乱を踏まえ、今後のどのような投資態度を持つべきなのか。

「現在の日本株相場は、需給要因から下がりにくい面がある」。こう語るのは、証券ディーラー歴25年の経験を持つたけぞうさん(ハンドルネーム)だ。

1990年代の平成バブル崩壊など、株価の激しい変動を何度も目の当たりにしてきた大ベテランが指摘するのは、ゲームストップ株とは逆に、大量の信用買い残の積み上がりの解消が、価格の押し下げではなく、押し上げ要因になる銘柄があることだ。

いってみれば、ゲームストップとは逆だけど、相場には反対の現象をもたらすことになる。それはどういうことなのか?そして"下がりにくい相場"の中で、今後の投資戦略とは?

これらについて、原則インタビュー形式で4回にわたり紹介していく。

米ゲームストップ事件による需給崩れで波乱はあるが、土台は変わらず

―― 日経平均株価は年明けから30年ぶり高値の更新を続けていた中で、1月末に大きく続落、そして月が変わるとその反発と、乱高下しています。足元の相場をどう見ていますか?

たけぞうさん(以下、たけぞう): 日経平均は1月末の最終2日間で3%半ばの下落となり、久々の波乱相場となりましたね。これは米国のいわゆる「ゲームストップ株騒動」が発端となった調整と考えられます。

もともと米国そして日本株とも、急ピッチで株価が上昇して高値警戒感がある中で、ボラが急騰するような出来事が起き、市場心理に不安を呼び込みました。

2月に入り、先月末の混乱から多少のリバウンドは見せていますが、今回の事件のあおりで需給のバランスが崩れ、日本株もしばらく混乱に巻き込まれる可能性はまだ残ります。

ただし現時点では、「世界的な大規模金融緩和が続く"カネ余り"が株価を支えている」という昨年春からの状態に全く変わりはありません。これを念頭に置きながら、慎重さを持ちつつ冷静に対応していく必要があると思います。

足元の混乱だけにとらわれて近視眼的になり、もともとあった大局的な流れを見失ってはいけないということです。

■日経平均株価の日足チャート(2020年8月~)
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注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同

―― 当面は何に気を付けるべき?

たけぞう: まず、おさらいで「ゲームストップ株騒動」を簡単に整理します。これは、もともと米国のヘッジファンドをよく思っていなかった個人投資家たちが、ファンド勢をぎゃふんと言わせてやろうと起こした反乱みたいなものですね。

個人投資家がSNS(交流サイト)上で集まり結託して、ヘッジファンドがショート(売り)を仕掛けている銘柄を狙い、一斉に集団で買いを入れるというやり方で踏み上げを狙ったのです。

つまり、集団の力で大きな買いを入れて株価をつり上げれば、ショートで攻めていたファンド勢は、ショートの分は手仕舞いして買い戻しを迫られる。それによってさらに株価は上昇し、個人投資家は儲かってウハウハ。一方のファンド勢は大損を被る―― という構図です。

このイベントによって、米国株は、それまで買われていた銘柄が売られ、安値で放置されていた銘柄が買われるという逆流の動きが起こりました。

日本株もそのあおりを受け、騒動の渦中では、これまでコロナ相場をけん引してきた銘柄が売られ、反対にイマイチだった銘柄が買われるという流れとなりました。

例えば、これまで右肩上がりで推移してきたエムスリー<2413>、そしてベイカレント・コンサルティング<6532>などの成長株が大きく売り込まれました。

■エムスリー<2413>の日足チャート(2020年8月~)
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その反対にこれまでダメダメだった百貨店、例えば高島屋<8233>、三越伊勢丹ホールディングス<3099>などが買われるという動きです。

さすがに1月31日の大幅下落の中では、全体相場の中で健闘していた百貨店組も結局は連れ安という形になりましたが……。

■高島屋<8233>の日足チャート(2020年8月~)
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好業績成長株が売られる波乱に注意

―― ピカピカだったエムスリーが大崩れしたのは、米国の事件が影響しているのですか?

たけぞう: エムスリーやベイカレはPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)などからは、かなりの高値圏にあるので、ゲームストップ株騒動のみで下落したとは言い切れませんが、この騒動が下げを助長した可能性はあります。

今回の一件では、ヘッジファンドは、報道で名前が挙がったところ以外にもあおりを食らったところはいくつもあると考えられます。

それらのファンドの中には、日本株を投資対象とし、ゲームストップ株の防戦からエムスリーなど、これまで利益が乗った銘柄の利益確定に走る動きは今後も起こることが予想されます。

騒動の全容がはっきりしない段階なので何とも言えませんが、少なくとも2週間程度は、日本株も不安定な動きが出るリスクはあると思います。しばらく警戒モードは緩めるべきではないでしょう。

―― こうした時期は、どんな投資行動を取るべきでしょう?

たけぞう: 今回だけに限りませんが、こうした調整時は、ひとまず嵐が収まるまでは、ポジションを縮小気味にして過度なリスクをとらずにやり過ごすのが好ましいですね。

ただ冒頭でお伝えした通り、カネ余り状態が相場を支えているという土台が崩れているわけではありません。従って、この一時的な混乱をチャンスと捉え、この時期にじっくりとよい銘柄を探して仕込んでおくというやり方ができると思います。

足元では決算発表のシーズンですから、好業績で一旦は株価が上がったのに、全体相場の下落に引きずられて下がった銘柄などが候補になりそうです。

決算期の早い段階での上方修正銘柄に着目

―― 村田製作所<6981>など決算予想の上方修正を発表して「イケる!」と思ったのに、売り込まれた銘柄も多くあります。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。



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