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【市況】【杉村富生の短期相場観測】 ─出遅れが著しい日本の株式市場!

経済評論家 杉村富生
 
「出遅れが著しい日本の株式市場!」

●接種率の上昇には6兆円の経済効果!

 なぜ、日本の株式市場は戻りが鈍いのだろうか。アメリカ市場は堅調だし、円安は1ドル=111円台の円安だ。主力輸出企業の想定為替レート(日銀短観)は106円である。輸出企業の業績には追い風となろう。さらに、コロナワクチンの接種は順調に進み、1回目の接種率は7月中に65歳以上の高齢者のほぼ100%、全体では4割を超えると思う。

 職域接種は「ワクチンがない」と騒ぐ人達がいるが、証券界では東証健保、ソフト会社(自社の社員だけでなく、自社のシステムを採用している証券会社の従業員も対象)など急ピッチで進行中だ。1日100万回ペースでの接種率の上昇は2021年のGDPを1%(6兆円)押し上げる効果がある。

 さらに、企業業績は好調だ。2021年度は3割経常増益の見通しである。7月1日時点の日経平均株価の予想1株利益は2068円(実績ベースは1607円)だ。PERは13.8倍にすぎない。ちなみに、NY市場(S&P500指数)は21.5倍、世界市場(MSCI WORLD)は18.9倍に評価されている。

 PBRはどうか。ROE(株主資本利益率)の低さが響き、日経平均株価のPBRは1.23倍にとどまる。NY市場は4.65倍、世界市場は3.03倍である。日本株の割り負けは著しい。なにしろ、東証1部上場企業の47%がPBR1倍割れだ。多すぎて困るだろうが、アクティビスト(物言う株主)にとっては格好のターゲットになろう。

 それに、PERに影響を与えている需給の悪さ(積極的な買い手不在の状況)、人気のなさ(コロナワクチン接種作業の遅れ)は早晩、解消に向かうだろう。外国人が買い意欲を示しているほか、コロナワクチンの接種率の上昇には目をみはるものがある。

●「IR広報統括部」を新設の新日本化学!

 もちろん、日本人はリスクを極端に嫌う。個人金融資産のうち、株式の比率は1割(アメリカは4割)にすぎない。何と、54.3%が現・預金だ。それと、その少ない資金がアメリカ市場に流れている。まあ、アメリカ市場にはサイバーセキュリティのセンチネルワン<S>、ウルグアイのIT系のDローカル<DLO>など有望企業が次々に登場しているが…。

 とはいえ、日本市場(足元)を見直す必要があろう。出遅れているし、面白い銘柄がたくさんある。新日本科学 <2395> は前臨床試験受託の最大手だ。2022年3月期の1株利益は94円となる。時価のPERは9.5倍と出遅れが著しい。これまでIRには「不熱心」だったが、6月に「IR広報統括部」を新設した。割安修正が期待できる。

 住江織物 <3501> のPBRは0.5倍だ。やはり、割安に放置されている。超割安なのは会社側の責任ではないか。マルマエ <6264> は半導体関連部材を手掛け、業績は絶好調である。6月30日に、2021年8月期の増額修正を行った。しかし、7月1日の株価は314円安の2160円と急落だ。材料出尽くし? う~ん、悲しすぎる。

 6月IPOではセレンディップ・ホールディングス <7318> [東証M]、ベイシス <4068> [東証M]、アイ・パートナーズフィナンシャル <7345> [東証M]、アイドマ・ホールディングス <7373> [東証M]などが短期筋の買い物を集めている。テンダ <4198> [JQ]は突っ込み買いのチャンスとなろう。

2021年7月2日 記

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