市場ニュース

戻る
 

【特集】藤代宏一氏【夏枯れかサマーラリーか、8月の展望を読む】(1) <相場観特集>

藤代宏一氏(第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト)

―新型コロナ感染拡大懸念と好決算発表期待の狭間で―

 週明け2日の東京市場は、日経平均株価が急反発に転じた。ただ、米国株市場などと比べて日本株の出遅れ感が際立っていることに変わりはない。名実ともに8月相場入りとなるなかで、夏枯れの地合いが続くのかそれともサマーラリーに転じるのか。当面の相場展望と物色の方向性について、先読みに定評のある市場関係者2人に意見を聞いた。

●「デルタ株感染動向が相場左右、内需復活が焦点」

藤代宏一氏(第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト)

 1ヵ月ほど前までは、ワクチン接種が進めば重症者数が減り、秋ごろには個人消費も回復するだろうという見方が多かった。しかし、感染力の強い新型コロナウイルスの変異種(デルタ株)の感染拡大が続き、内需回復の期待は修正を迫られている。日経平均株価が一時2万7200円台まで下落したことは、この点が背景にあるのだろう。

 英国や米国政府は、新型コロナ対策のKPI(重要指標)を、重症者数や死亡者数に移している。日本もKPIを新規感染者数から重症者数や死亡者数にすることができるかどうかは、大きなポイントだろう。KPIを変更することができれば、イベントや旅行などの活性化策は打ちやすくなり、内需回復の道筋も見えてくるだろう。

 ただ、そのためにはデルタ株による新規感染者数がピークアウトし、重症者数や死亡者数も抑えられたことを示す必要がある。その意味で、今後1ヵ月前後の新規感染者数の動向には注意が必要だ。ワクチン接種率も欧米を超えるような水準になれば、収束に向けた期待が高まるかもしれない。秋には衆院選が予定されており、新型コロナ感染者数が高止まりしたままなら政権には痛手となるだろう。

 今後1ヵ月程度の日経平均株価の予想レンジは2万7000~2万9000円前後を見込む。2万7000円を割り込むことは想定していないが、2万9000円から上振れることもイメージしにくい。足もとの2万7800円前後を中心とする一進一退が続くとみている。高配当銘柄や個人向けのウエートが高い内需系銘柄の動向などに注目している。


(聞き手・岡里英幸)

<プロフィール>(ふじしろ・こういち)
第一生命経済研究所経済調査部・主任エコノミスト。担当は金融市場全般。2005年4月、第一生命保険入社。08年、みずほ証券出向。10年4月第一生命経済研究所出向、同年7月内閣府経済財政分析担当へ2年間出向。12年7月副主任エコノミストを経て、15年4月より現職。

株探ニュース

株探からのお知らせ

    日経平均