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【特集】開花する爆進DNA、好業績+材料性が光る「EV関連ネクスト」6銘柄 <株探トップ特集>

ガソリン車からEVへ。400兆円ともいわれる自動車産業の歴史的なパラダイムシフトが迫っている。好業績が光るEV関連の有力6銘柄を選出。

―自動車産業もカーボンゼロの時代へ、復活の兆しみせるテスラの株価が意味するもの―

 世界中で“カーボンゼロ実現”に向けた動きが本格化している。向こう数十年にわたって、これまでのように化石燃料を利用して経済成長を続けるというシナリオはもはや消失し、脱炭素技術が次の時代の主役を担うキーテクノロジーとなっていく。

 そのなか、市場規模400兆円ともいわれる自動車産業の歴史的なパラダイムシフトが刻一刻と迫っている。電気自動車(EV)がガソリン車に取って代わる時代まであと四半世紀を要さない可能性もある。自動車産業の長い歴史を考えればまさに風雲急を告げているといっても過言ではない。

●復権を暗示するテスラ株と虎視眈々の大手IT

 米国では新興EVメーカーのテスラ<TSLA>の株価が暗示的な輝きを放っている。今年1月に900ドル台に乗せ、株価は1年間で10倍化した。同社のファンダメンタルズを考慮すればバブル説も根強く、その後株価は40%も下落して500ドル台まで売り込まれたのだが、年央以降は再び買い直される展開となっている。直近は700ドル台まで水準を戻し下値を徐々に切り上げている。

 内燃機関を持たずモーターを動力として走行するEVはカーボンゼロの象徴だ。現在世界の新車販売に占めるEVの比率はわずかに3%だが、それだけに全体400兆円の市場において、需要開拓余地の大きさは比類なきものといってよい。今の市場のコンセンサスは、強調展開を取り戻しつつあるテスラの株価動向に投影されている。

 EVは米ゼネラル・モーターズ<GM>や独フォルクスワーゲンなど世界の大手自動車メーカーも積極的に経営資源を投入し、主導権を握ることに躍起である。しかし一方で、EVは従来のエンジン搭載車と比較して構造がシンプルで、モジュール化(部品の共通化)やコモディティー化の進展によって参入障壁が低くなりやすく、異業種である大手IT企業などが食指を動かしている。最近では米アップル<AAPL>がEV参入に意欲をみせ話題となったほか、中国でも百度(バイドゥ<BIDU>)やアリババ<BABA>などがEV関連の新会社を設立するなど虎視眈々である。

●国内大手自動車もEV時代見据え新たな布石

 日本では自動車業界トップのトヨタ自動車 <7203> が2030年までにEVを含めた電動車の販売を800万台とする目標を掲げ、積極的に動き出している。この場合の電動車というのはエンジンも積むハイブリッド車(HV)が含まれるが、HV技術は日本の自動車メーカーのお家芸でもあり、しばらくはEV化に向けた中継地点として需要が喚起されることになる。トヨタの電動化戦略に今後も世界の視線が集まることは必至だ。

 また、日産自動車 <7201> はバイデン米政権が打ち出した大統領令や新たな燃費規制に賛同し、30年までに米国販売の4割をEVにすることをいち早く表明するなど積極的である。同社は年内にも新型EV「アリア」の生産を開始し、米国でも来年の発売を予定しており、それに向けた地ならしを進めている。

 ホンダ <7267> もEV時代に向けた布石を本格的に打ち始めた。直近では、EVへの移行を見据えて2000人超の早期退職者を募り社員の世代交代を進めている。同社は40年にガソリン車を全廃して新車をすべてEVと燃料電池車(FCV)にする戦略を既に発表しているほか、直近の米国の燃費規制については連携する欧米4社との共同声明で30年までにEV比率を40~50%に高める目標を開示している。

 こうした流れのなかで、株式市場でもEV関連の好業績株を波状的に物色する動きが顕在化している。EVのマーケット規模そのものは中長期的に膨らむ一方であることがほぼ約束されている。それだけに、同分野向けに競争力の高い商品を提供している企業は、将来への成長ドライバーを確保しているということにもなる。今回のトップ特集では、足もとの業績好調な勝ち組企業のなかから、EV関連の有望株として頭角を現し始めた6銘柄を厳選エントリーした。

●上値追い本番が近づくEV関連6銘柄はこれだ

◎KOA <6999>

 電子部品 メーカー大手の一角で、売り上げの90%を多種多様な抵抗器で占めている。特に車載用で優位性を発揮し、世界的な新車販売需要の拡大を背景に受注獲得が進んでいる。22年3月期通期の業績予想について非開示ながら、中間期(21年4-9月期)の業績見通しについては7月下旬に発表しており、営業利益は前年同期比7.4倍の36億7000万円を見込んでいる。前期にあたる21年3月期通期の営業利益は23億1700万円であったから、これを既に今期は上半期の時点で58%も上回った。また株主還元にも前向きで、上期配当を16円とすることを発表している。今後は中長期的に、EV向け固定抵抗器で高水準の需要獲得が想定され、業績拡大の原動力となりそうだ。1800円から上は滞留出来高が希薄化しており、2000円大台乗せから一段の上値も視野に入る。

◎スミダコーポレーション <6817>

 コイルの専業大手メーカーで車載向けを得意としている。また、生産ラインをすべて海外に移管していることも大きな特長だ。EV用としてはバッテリーマネジメントシステム、パワーコントロールユニット向けのコイル製品などで実績が高く、欧州大手自動車部品メーカー経由でEVシフトが進む欧州や中国の需要を取り込んでいる。業績は急回復トレンドで、21年12月期業績については売上高を従来予想の940億円から1020億円(前期比20.8%増)に、営業利益は35億円から55億円(同93.8%増)に大幅増額した。株式需給面でも買い残が枯れた状態にあり、信用倍率は0.8倍台で上値が軽い。株価は8月2日に年初来高値1520円をつけた後上昇一服となっているが、上値追いトレンドに変化はなく、19年4月の高値水準である1700円台が意識されそうだ。

◎太平洋工業 <7250>

 自動車部品 メーカーでタイヤバルブの商品シェアは世界トップクラス。主要販売先は新車販売絶好調のトヨタ自動車 <7203> であり、その恩恵を享受して足もとの業績も回復色が鮮明。車体軽量化で注目される超ハイテン材でも商品競争力の高さを発揮しており、今後世界的なEV市場の拡大に伴い需要の裾野も大きく広がっていくことが予想される。推進中の中期経営計画では、自動車のEV化に貢献する防音・防振製品の積極展開を図っていく方針を明示している。22年3月期第1四半期(4-6月)業績は売上高が前年同期比74%増の415億3000万円と急増し、営業損益も33億6200万円の黒字(前年同期は22億4900万円の赤字)と大幅改善を示した。通期の営業利益は前期比4割増となる125億円予想となっている。PER、PBRともに割安顕著で水準訂正余地が大きい。

◎双信電機 <6938>

 産業機器関連や情報通信分野向けにノイズフィルターやフィルムコンデンサーなどの電子部品を製造販売している。ノイズフィルターは中国経済の回復を背景とした工作機械需要拡大や、半導体供給不足に対応した半導体製造装置特需などを取り込み業績に寄与している。5G基地局関連の受注も今後増えそうだ。また、リチウムイオン電池保護回路用の厚膜印刷基板も受注を伸ばしている。この厚膜印刷基板はノイズフィルターと併せてカーエレクトロニクス分野で活躍が期待されEV用急速充電器などでキーデバイスとして需要開拓が見込まれる。22年3月期業績予想は売上高108億円から115億円(前期比20%増)に、営業利益6億円から12億円にそれぞれ上方修正、配当計画も上乗せした。株価は急騰後いったん調整を入れているが、早晩切り返し中勢4ケタ大台を目指す。

◎菊水電子工業 <6912> [JQ]

 車載向けなどで高い実力を持つ電子計測器・電源機器メーカーで、据置型直流安定化電源や耐電圧試験器を得意としている。自動車の電装化が進展するなか活躍機会が広がっている。EV向けではバッテリーの耐電圧試験器を手掛け収益に寄与しているほか、リチウムイオン電池充放電システムコントローラーなどの受注拡大も期待される状況にある。足もとの業績も絶好調といってよい。22年3月期業績は売上高を従来予想の84億円から90億円(前期実績81億6300万円)、営業利益を5億円から7億4000万円(同4億1800万円)に増額修正している。株主還元も強化し、年間配当は前期実績に3円増配の23円を計画している。ここ急速に株価水準を切り上げたが指標面で割高感はなく、中長期スタンスで18年1月の高値1524円を目標に水準を切り上げる展開が見込まれる。

◎東光高岳 <6617>

 電力ネットワークの構築と運用を総合的にサポートする関連製品及びサービス提供を行っている。東光電気と高岳製作所が14年に経営統合して発足した会社で、電力機器の製造販売が売上高の過半を占めているほか、もう一方の柱である計量器ではスマートメーターで高実績を誇る。同社はEV用充電インフラ事業を手掛けていることがポイント。EV用パワーコンディショナーとEV用急速充電器を生産しており、従来型から20%軽量化した新型急速充電器で需要を獲得、既にサービスエリアやコンビニ、道の駅など国内で3000台以上の販売実績を持っている。22年3月期第1四半期(4-6月)は営業利益が前年同期比7.4倍の8億8500万円と急拡大した。株価は7月初旬に1300円近辺まで売り込まれたが、目先動意含みで上放れの様相をみせ始めている。

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