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【特集】睡眠市場にもDXの波、「スリープテック」で成長加速の有望株精選 <株探トップ特集>

コロナ禍でインドア派が増えるなか、健康意識や睡眠障害の治療に対する意識が高まっている。睡眠を商機とみる新規参入が相次いでおり、チャンスをつかんでいる銘柄群をリサーチ。

―“眠る”3兆円・巨大市場を追え 開花を待つ周辺企業を徹底リサーチ―

 人工知能(AI)IoTなど最先端の技術を駆使して睡眠の質を高める「スリープテック」に取り組む企業が増えている。新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言や外出自粛などにより、巣ごもり・インドア志向が高まるなか、睡眠に関わるスマートフォンアプリなどの利用が急増傾向にある。日本は、睡眠不足大国と言われているが、慢性的な睡眠不足が労働生産性を低下させ、年間で15兆円もの経済損失があるとの試算もある。また、働き方改革の観点から睡眠の質を改善するニーズも高い。

 そもそもスリープテックが注目されるようになったのには、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速化が一役買っている。良い睡眠は自己管理次第で獲得できる可能性が高いが、睡眠導入剤の服用に頼る人も少なくない。ただ、睡眠導入剤や睡眠薬の投与で一時的な効果があったとしても、日中に過度な眠気に襲われるなどの副作用が出るなどの限界がある。そこで睡眠を促す技術が注目され、市場として確立していった。2018年、米ラスベガスで開催された国際家電市「CES」で「スリープテック」ゾーンが初めて登場し睡眠に関するアプリやデバイスが広く知られるようになった。その成長性や将来性は高いことから、株式市場でも関心を集めそうだ。

●異業種の巨人たちの参入が相次ぐ

 スリープテックとは、ITなどで睡眠を支援する製品やサービスのこと。スリープテック関連の世界市場は、精神疾患を抱える人口の増加と、健康意識や睡眠障害の治療に対する意識の高まりを追い風として、24年には1000億ドル前後に拡大するとの試算もある。生活スタイルの変化や、長時間座る生活が続く傾向も、今後数年間の市場成長を支える要因となるようだ。市場が1兆数千億円規模とされる国内に関しては、美容やスポーツ、介護、医療など周辺分野にも快適な睡眠をサポートするさまざまなグッズやサービスが生まれ、潜在市場は3兆~5兆円と言われており、今後需要の裾野が広がっていくことが見込まれている。

 こうしたなか、米アップル<AAPL>やアルファベット<GOOG>傘下の米グーグルなど異業種の巨人たちはヘルスケア・健康分野に取り組み、睡眠データなど個人の健康記録の構築に力を入れている。グーグルの第2世代Nest Hubの「睡眠モニター」は、就寝時の動きや呼吸を記録するなど健康状態を改善するのに役立つ。また、アップルが21日にリリースした「watchOS 8」では呼吸アプリケーションをリニューアルしたほか、睡眠時における1分間あたりの呼吸回数を測定できるようになるなど機能を進化させている。一方で国内においては、NTT東日本(東京都新宿区)がスリープテックを専業とするスタートアップのブレインスリープ(東京都千代田区)と協業して睡眠課題の解決を目指すとしている。

●先駆する帝人やフクダ電子

 ヘルスケア総合サービスに力を入れている帝人 <3401> は、睡眠呼吸障害関連機器を手掛けている。また、睡眠を“見える化”する「Sleep Concierge(スリープ コンシェルジュ)」をFiNC Technologies(東京都千代田区)と共同開発し展開。同サービスでは、センサーを寝具の下に置くだけで独自のアルゴリズムにより睡眠時の生体情報を収集し睡眠のアドバイスもする。睡眠に関する国内有数の知見を持つ同社は、睡眠を軸にヘルスケア事業を強化する構えで、今後の取り組みにも注目が集まる。

 また、睡眠評価装置スリープテスタなどを展開するフクダ電子 <6960> [JQ]にも注目したい。同社は呼吸・循環器系の医療機器分野でリードしているが、睡眠時無呼吸症候群(SAS)などを検出する睡眠呼吸検査機器でも実績が高い。22年3月期連結営業利益予想は前期比24.3%減の150億円を計画しているが、第1四半期(4-6月)営業利益が前年同期比79.5%増の41億9500万円と順調に推移している。

●新たな成長分野で開花する寝具メーカー

 安眠をサポートするためのグッズと言えば、枕やベッドなどの寝具が欠かせない。パラマウントベッドホールディングス <7817> が7月30日に発表した第1四半期(4-6月)営業利益は、前年同期比2.2倍の31億2600万円と高変化を見せた。同社は7月、NTT西日本(大阪市中央区)と共同出資を行い、睡眠データのオンラインヘルスケアサービスを提供する新会社を設立した。新会社の「NTTパラヴィータ」は、高精度センサーを貸し出すことで睡眠時のデータを集め、ICTを活用した未病早期発見の支援や健康促進のための情報提供をしている。パラベッドは従来から医療・介護ベッド及びマット型睡眠センサーで国内トップシェアを誇っており、スリープテックの流行が同社にとって新たな収益源となる。

●スリープテックへの取り組みを加速するMTG

 睡眠を商機とみるのはベッドメーカーに限ったものではない。美容・健康をテーマに魅力ある商品を企画開発するMTG <7806> [東証M]も7月29日、不眠症対策製品「NEWPEACE Medical Sheet(ニューピース メディカルシート)」を発売。同製品は医療機器認証を受けたスリープテックによるもので、軽くて持ちやすいサイズながら、不眠症を緩和する効果がある「電位治療」と、「自然な体温変化」をサポートする「ヒートナビゲーター」を融合させているのが特長だ。同社は20年1月、睡眠ビジネスの社会ニーズに対応するため、AI・テクノロジーによるトータルソリューションNEWPEACEブランドを設立している。

●「みせる」ヘルスケア製品で攻めるコラントッテ

 コラントッテ <7792> [東証M]は7月8日付で東証マザーズに新規上場したニューフェース。医療機器やヘルスケア製品の製造・販売を手掛け、肩こりが緩和する磁気ネックレスなどを扱う。こだわったデザイン性で卓球の伊藤美誠選手をはじめとして多くのアスリートが着用しており、「みせる」家庭用磁気治療器という新たな市場を創造している。また、睡眠をサポートする磁気枕「マグーラ」なども展開する。8月6日に発表した第3四半期累計(20年10月-21年6月)の単独営業利益は5億6800万円となった。前年同期は四半期決算を発表していないため比較はできないものの、通期計画の6億2200万円(前期比23.4%増)に対する進捗率が91%に達していることから、上方修正の可能性も期待されている。

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