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【特集】馬渕治好氏【戻り相場はどこまで、ハイボラの先行きを読む】(1) <相場観特集>

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

―米国企業の決算発表と円安が進む為替動向にも注目―

 週明け18日の東京株式市場は、日経平均株価が3日ぶりに反落した。前週末の米国株市場で主要株指数が揃って上値追い基調を強めており、足もとリスクを取る動きが期待されたが、日経平均は前週後半2営業日で900円以上の上昇をみせ一気に2万9000円台を回復したこともあって、きょうは上値の重さが意識された。当面、戻り相場は継続できるのか。また円安が進む為替市場の見通しは。株式と為替それぞれについて先読みに定評のある市場関係者2人に意見を聞いた。

●「上値追いやすい環境で3万円大台視野」

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

 東京株式市場では、きょうは全体指数が下押したものの、当面は上値を追いやすい環境にあるとみている。国内では足もとで目立った手掛かり材料はないものの、米国株市場の強調地合いに牽引される形が見込まれる。米国では好調な企業決算が株価を支えており、経済指標も概ね好調だ。一方で足もとの物価指標は懸念されていたほどではなく、過度なインフレ懸念が後退している。

 直近発表された米生産者物価の上昇が小幅にとどまったほか、新規失業保険申請者数が減少していることなどもプラス材料。これまで人手不足が賃金上昇の要因となっていたが、労働参加者が増えることで賃金は上がりにくくなる。米国株市場では企業業績が良好ななかNYダウも強気優勢で、年末までに3万7000ドルをうかがう展開が想定される。

 これを受けて相対的に出遅れる東京市場でも、当面は買いが有利な状況となりそうだ。向こう1ヵ月の日経平均のレンジとしては3万円大台突破から3万円トビ台半ばくらいまでの戻り余地があろう。一方、下値については浅く、目先調整しても2万8500円台を割り込むようなことはないと考えている。

 外国為替市場で円安が進んでいることは、原油価格の上昇と合わせ内需系企業にとってはコスト高につながり業績に与える影響も懸念されるところだが、ハイテクや自動車などの輸出産業にとっては採算改善につながり収益押し上げ効果となる。輸出型が多い日本企業の業績にはプラス面が大きく、今月下旬から本格化する決算発表も外食や小売りなどの2月決算企業ではなく、3月決算の製造業が主流となることから相場に与える影響はプラス方向に作用する公算が大きい。

 ひとつ注意する必要があるのは中国景気の減速だが、仮に恒大集団が破綻してもリーマン・ショックのような負の連鎖に発展する可能性は低い。また、月末に衆院選の投開票が予定されており、今回、与党は議席数を減らすとしても政権交代は想定されず、大勢に影響はないといえよう。政治的不透明感が低下することが株高基調を後押しする形が想定される。


(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「コロナ後を生き抜く 通説に惑わされない投資と思考法」(金融財政事情研究会)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。

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