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【特集】レベル4実現へアクセルオン、「自動運転」関連株は成長期本番に <株探トップ特集>

特定条件下で完全自動運転が可能になる新ルールを定めた改正道交法が衆院本会議で成立した。これを受けて実現に向けた取り組みが活発化するとみられ、関連銘柄への関心が高まっている。

―今国会で改正道交法が成立、取り組み本格化で関連企業に関心―

 米連邦準備理事会(FRB)の積極的な金融引き締めによる米景気の減速懸念、新型コロナウイルス対策のため経済活動の制限が続く中国経済の先行き不透明感、ウクライナ情勢などの悪材料が重荷となり、世界的に株式市場が不安定な動きとなっている。11日の東京市場では米4月消費者物価指数(CPI)の発表を前に売り買いが交錯し、一時マイナス圏に沈む場面もあった日経平均株価は結局前日比46円高の2万6213円で取引を終えた。

 今後もFRBの金融引き締めペースなどを巡って波乱の展開となる可能性があるが、こうした時こそ今後の成長が期待できる分野の仕込み好機といえ、電気自動車(EV)とともに普及期に入りつつあるのが「自動運転」だ。特定条件下でシステムが運転を操作する「レベル4」相当の自動運転移動サービスの新ルールを定めた道路交通法の改正案が4月19日の衆院本会議で可決・成立したことで、今後は実現に向けた取り組みが更に活発化することが予想され関連銘柄をマークしておきたい。

●新たに「特定自動運行」を定義

 改正案では、レベル4による運行を「特定自動運行」とし、従来の「運転」から除くなど、特定自動運行の定義などに関する規定を整備するとしている。特定自動運行とは、自動運行装置を使用した運行のうち、自動車が整備不良に該当することになった時や自動運行装置が使用条件を満たさなくなった際に、直ちに自動的に安全な方法で自動車を停止させることができ、装置を操作する者がいないものを指す。また、改正案では「特定自動運行の許可制度」を創設することも提案されており、レベル4の自動運転移動サービスを行うには、特定自動運行計画などを記載した申請書を管轄する都道府県公安委員会に提出し、許可を受けなければならないとされている。

 国土交通省と経済産業省が共同で設置している「自動走行ビジネス検討会」は、2022年度末に限定エリア・車両でのレベル4の実現を目指すとし、25年度ごろまでにレベル4のサービスを40ヵ所以上で実施するとの目標を掲げている。自動運転で解決が期待される社会課題としては、人口減少・高齢化のなかでの移動手段の確保、人手不足下での円滑な物流機能の維持・高度化、事故や渋滞の解消、カーボンニュートラルへの貢献などが挙げられるが、加えてMaaS(複数の公共交通や移動サービスを最適に組み合わせ、検索・予約・決済などを一括で行うサービス)との連携や技術の進展により、新しいビジネスや価値が創出される可能性があり、各企業の動向が注目される。

●日本ペHDは実証実験に塗料提供

 こうしたなか、ホンダ <7267> [東証P]のモビリティサービス事業運営子会社であるホンダモビリティソリューションズは4月、帝都自動車交通(東京都中央区)及び国際自動車(東京都港区)のタクシー大手2社と自動運転サービスの開始に向けて検討するための基本合意書を締結した。ホンダは米ゼネラル・モーターズ<GM>などと共同開発する自動運転車両「クルーズ・オリジン」を活用したサービスを20年代半ばから日本国内で展開することを目指しており、今後の実証実験を通じて事業内容などを固める考えだ。

 日産自動車 <7201> [東証P]はこのほど、現在開発中の自動車の緊急回避性能の飛躍的な向上につながる運転支援技術を発表した。これは物体の形状や距離などを高精度で認識することができる次世代センサー「LiDAR(ライダー)」とカメラ、及びレーダーからの情報を組み合わせ、その変化をリアルタイムに把握することができる。同社は自動運転に不可欠な運転支援技術の開発を20年代半ばまでに完了させ、順次新型車へ搭載し、30年までにほぼすべての新型車に搭載するとしている。

 また、直近では日本ペイントホールディングス <4612> [東証P]が自動運転市場への参入を発表している。グループ会社の日本ペイント・インダストリアルコーティングスは、シダックス <4837> [東証S]と明治大学の自動運転社会総合研究所などが長崎県対馬市の公道で今月19~22日に行うレベル2の実証実験に、自動運転用塗料「ターゲットラインペイント」を提供する。これは塗装するだけで自動運転用のインフラを整備できることから自動運転の導入コストやメンテナンスコストの削減が見込めるほか、道路に塗装されたラインを認識して走行するためGPSなどが入りにくい場所でも自動走行が可能になる塗料。LiDARが認識できると同時に、目視ではアスファルトと同化する色で、道路の路面標示と誤認しないラインの形成を実現できるといった特徴もある。

 日本電波工業 <6779> [東証P]は4月、車載カメラなどの用途向けに3225サイズの差動出力水晶発振器「NP3225SAA、NP3225SBA、NP3225SCA」の量産を開始すると発表した。自動運転の実現に向けた先進運転支援システム(ADAS)の性能向上や先進緊急ブレーキシステム(AEBS)標準装備の義務化などから車載カメラなどのセンシングデバイスは搭載する個数が増え、それに伴って水晶デバイスの需要も拡大している。特に車載カメラは高画質化により映像データの高速伝送の必要性が高まっているが、高速通信では雑音に起因するエラーが大敵となるため、高品質で信頼性の高い差動出力発振器が必要になるという。

 モルフォ <3653> [東証G]は4月、15年12月からデンソー <6902> [東証P]と共同で研究開発を進めてきた高度運転支援システム向け画像認識技術の一部が、デンソーが今年1月に発表した車両の周辺環境認識及び安全性能向上につながる「Global Safety Package3」に採用されたことを明らかにした。採用された技術は画像センサーに応用されており、人工知能(AI)技術を生かして画像データから車両、標識、歩行者などを高性能で検知するものだとしている。

●アートSHD、ヴィッツなどにも注目

 このほかでは、経産省が公募した「無人自動運転等の先進MaaS実装加速化推進事業(自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実証プロジェクト)」の第1テーマ(22年度にレベル4で自動運転サービスの実現に向けた取り組み)の委託先に採択されているソリトンシステムズ <3040> [東証P]、グループ会社が自動車用のHMI(ヒューマンマシンインターフェース)デザインなどを手掛けているアートスパークホールディングス <3663> [東証S]、トヨタ自動車 <7203> [東証P]と自動運転開発のデータ分析分野で連携するALBERT <3906> [東証G]、自動運転サービスのための安全評価ツール「WARXSS」を提供するヴィッツ <4440> [東証S]、高度な測量技術を武器に自動運転を支える高精度3次元地図データの作成や整備の分野で活躍の場を広げているアイサンテクノロジー <4667> [東証S]などにも商機がありそうだ。

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