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【特集】100億人 × 100歳の「ダブル100」がチャンスを生む~利上げ・円安相場の攻め方 最終回

~株探プレミアム・リポート~
野村アセットマネジメント シニア・ストラテジスト 石黒英之さんに聞く


前回記事「半導体関連の反転はいつ~利上げ・円安相場の攻め方その2」を読む

9月のFOMC(連邦公開市場委員会)では、0.75ポイントの利上げが決まり、事前の市場予想の範囲に着地したものの、依然としてボラティリティ(株価の変動率)が高い不安定な地合いは続く。

そうしたごたごたへの真っ向勝負は避けるとして、超長期で投資と向き合う場合、どんなセクターに目を向け、銘柄選びをすればいいのか。

そのヒントとなる切り口を石黒さんに聞いた。

(聞き手は真弓重孝/株探編集部、福島由恵/ライター)

石黒英之さん石黒英之さんのプロフィール:
証券会社にて16年にわたり株式ストラテジスト業務に携わる。市場見通しレポートの作成に加え、セミナーや勉強会への講師としても大人気で、その数は年500回を超えるほど。グローバル投資へのニーズが高まる中、世界の投資環境を冷静に分析したうえでの役立つ情報発信を心掛ける。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」や投資情報番組の日経CNBCほか各種メディアに登場し活躍中。

世界的な人口増と長寿化で時間が生まれる

――足元では、どうしても米国の利上げや日本の為替政策などの材料に目を奪われてしまいますが、投資の王道は長期投資。では長期目線ではどのような心構えが必要でしょうか。

石黒英之さん(以下、石黒):  金融市場の目下の関心事は米国の利上げが米国をはじめとする世界景気にどのような影響をもたらすのか。もっといえば、景気後退がソフトランディングで済むのか、ハードランディングとなってしまうのかでしょう。

もちろんFRB(米連邦準備理事会)や政策当局はハードランディングさせないように、手を尽くすはずです。とはいえ、景気は循環するものです。コロナ対策で打った財政出動や金融緩和による景気刺激策の反動は、避けられません。

ただし、こうした山と谷を繰り返しながら、世界の景気はこの先、拡大していくはずです。そのエンジンは、何と言っても人口増と長寿化の進行です。

現在、世界の人口は約78億人ですが、約30年後の2050年には97億人と100億人に迫ると予想されています。

少子化による人口減少に転じている日本では、経済成長率も鈍化しており閉塞感に覆われています。一方で視点をグローバルに移すと、アジアを中心に労働人口は拡大して人口増による活況が見込まれ、その景色は変わってきます。

■世界の人口と平均余命(出生時)の中位推計の推移(2022年~50年)
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出所:国際連合

また、この人口増に加えてプラス材料となるのが、様々な技術革新がもたらす平均寿命の長期化です。これは国内でも言われていますが、「人生100年時代」というのは世界的にも共通する見方になっていると思います。

人口が増え、かつ、その1人ひとりの寿命が長くなる。国連の中位推計では、全世界の平均余命(出生時)は2022年71.7歳ですが、2050年には77.2歳になります。厚生労働省の資料には、2007年に生まれた日本の子どもの半数が107歳より長く生きるという海外の研究の推計を掲載しています。

この新たに生み出された時間にビジネスチャンスを見出してイノベーションが起きてくる。最近、何かと注目されるようになったメタバース(3次元の仮想空間)は、その代表といえます。

効率化も時間創出の後押し

――国連の推計に基づくと、最近生まれた子どもの生涯時間は、24時間×365日×71.7年=62.8万。それが50年には、24×365×77.2=約67.6万と、5万以上の時間が増えます。これから50年まで増える22億人を考えると、人口1人あたりの生涯時間の合計は、莫大なものになりますね。

石黒 : それと同時に、技術革新で余剰となる時間も増えていきます。自動運転の普及が進めば、これまで運転に当てていた時間は余剰となり、その分を別の作業に使うことができるようになります。

自動運転以外でもIT(情報技術)などの進歩で時間の余剰が生まれます。コロナ禍でリモートワークが浸透したことで、通勤に取られていた時間をスポーツや趣味、学びに使うようになった人も多いのではないでしょうか。電話やFAXしかなかったとしたら、ここまでリモートワークが普及しなかったかもしれません。

パソコンやスマートフォン、ネットやクラウドなどの技術革新がリモートワークへの移行を促し、それによって生じた余剰時間が、サブスクリプション・サービスなど新たなビジネス市場を発展させるエネルギーになりました。

コロナ禍で起きたことをとっても、これから生じていく膨大な余剰時間は、技術革新と新たなビジネスチャンスを生む好循環を作り上げていくことが期待できます。

――洗濯機や掃除機、電子レンジ、食洗機などの登場で、100年前と比べれば家事に費やす時間が格段に減り、高速鉄道や旅客機の登場で移動時間が大幅に短縮されたのと同じことがこれからも起きる。

石黒 : そのインパクトは、大きなものでしょう。

マスクやベソスが宇宙に目を向けるわけ

――テスラ<TSLA>を創業したイーロン・マスクや、アマゾン・ドット・コム<AMZN>のジェフ・ベゾスが宇宙船の開発に乗り出しています。

石黒 : その取り組みは、宇宙という空間にビジネスの場を広げることに限らず、地球での移動時間をもっと短縮したいというニーズを念頭にしているはずです。

いつの日か、東京からロンドンに30分で移動できるようになり、ロンドンに日帰り出張や旅行しにいく時代も到来するでしょう。

これまでほぼ一日がかりで移動していた場所が1時間もかけずに移動できれば、移動で余った時間を別のことに使えるようになり、新たな需要が生まれ、ビジネスチャンスが広がります。

新幹線や飛行機の登場で生まれた変化を考えれば、理解は容易だと思います。

ITとヘルスケアに期待

――膨大に増えていく時間を源に急成長が期待できそうな分野はどこでしょうか。

石黒 : ITとヘルスケアが恩恵を受ける分野となるでしょう。

繰り返しになりますが、コロナ禍にリモートワークやEC(電子商取引)が普及したことにより、デジタルトランスフォーメーション(DX)関連やIT関連の企業が需要拡大の恩恵を受けました。自動運転もメタバースも、ITの進化なしに普及するのは困難でしょう。

また、人々の寿命が延びるとなれば、やはりヘルスケア関連の重要性や需要は、さらに高まるはずです。寿命が伸びるにしても、健康寿命が伸びなければ、QOL(生活の質)は充実しません。

年齢を重ねても、病気などに苦しまなくて済むようにと、自分や家族が心身ともに健康を保つようにと関心を高める人はさらに増えていくと考えられます。

連続増配の実績ある企業が候補

――超長期で世界経済の拡大、ビジネスチャンスの広がりを見据える場合に、銘柄選びで心掛けたいことは?

石黒 : 先を見据えてシナリオを練るのも大事ですが、過去の実績の積み上げを重視するのも大事です。

1回目で「過去に減益だった年度が少ない企業」を選ぶのが望ましいとお話しました。その考え方に沿うものですが、毎年、着実に利益を積み上げてきた実績がある企業にコツコツ投資していくことが望ましいですね。

近年、「配当貴族」と銘打つETN(上場投資証券)や、投資信託が登場しています。そうした金融商品や、あるいはそのETN等が投資先として名を連ねる企業に着目するやり方が候補の1つとなります。

評価のポイントとなるのは、「連続増配」という実績です。配当貴族として組み込まれる銘柄は、長期にわたって増配を続けた、つまり長期にわたって好業績を続けてきた実力派、ということです。増配は継続的に利益を出し、安定したキャッシュフローが維持できていないと実現できません。

■NEXT配当貴族<2044>の月足チャート(15年1月~)
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注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同


――米国にはそうした企業が多く、例えば世界中の人々に愛され、その名前を知らない人はほぼいないであろうコカ・コーラ<KO>は、50年以上の連続増配ですね。ヘルスケア商品でおなじみのジョンソン・エンド・ジョンソン<JNJ>も同様です。大人から子供までファンの多いマクドナルド<MCD>も40年以上と長い実績がありますね。こうした企業は人口増、長寿化の恩恵も受けそうです。

石黒 : この後インフレが進んだ場合でも、根強いファンがいる人気商品を抱える企業は値上げもできる。そうした競争力がある会社が連続増配企業に多いのが特徴です。

ちなみに25年以上増配を続ける企業は、S&P500構成銘柄の中で60社以上になります。。

「高配当」と「連続増配」は違う

――日本は花王<4452>が該当しますが、他はそこまでに至らず、連続増配という観点では見劣りしますね。

石黒 : こうした連続増配企業は、長い実績という裏付けがあり「不確実性に強い」という特徴があるのも大きなメリットです。

2000年のITバブル、08年のリーマン・ショックの際も、これらの銘柄群の株価は市場平均をアウトパフォームしていました。

――「高配当」の銘柄も人気がありますが。

石黒 : 高配当、という着眼点だけで銘柄を選ぶのは注意が必要です。業績が振るわず、単に株価が下がって配当利回りが高くなっている場合もありますからね。

――いわゆるバリュートラップ(割安の罠)ですね。

石黒 : その通りです。安定して業績が良く、長く継続できている企業であれば、これから将来に向けても引き続きその業績を長く維持できることが期待できる。そんな企業が、長く投資するにふさわしいと思います。

――コカ・コーラやマクドナルドのように世界中の人たちに親しまれているアメ株では、GAFAMが思いつきます。「Google」を運営するアルファベット<GOOGL>、アップル<APPL>、フェイスブックから社名変更したメタ・プラットフォームズ<FB>、アマゾン・ドット・コム<AMZN>、マイクロソフト<MSFT>がありますね。これらについては、どのような見通しですか?

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。



 

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