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【特集】見えてきた事業化の青写真、成長ステージに立つ「CCS」関連株 <株探トップ特集>

国内企業の間でCO2を回収・貯留するCCSの事業化に向けた取り組みが相次いでいる。経産省がCCS長期ロードマップの最終とりまとめを行ったこともあり、関連銘柄への関心が高まりそうだ。

―長期ロードマップとりまとめで注目度アップ、関連銘柄に再評価の芽膨らむ―

 気候変動問題が世界共通の喫緊の課題として認識されるなか、二酸化炭素(CO2)を回収・貯留する「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)」への関心が一段と高まっている。各国が2050年までに自国における温室効果ガスの排出をネットでゼロにする方針を示し、日本も「2050年カーボンニュートラル」を掲げているが、素材産業や石油精製産業などでは電化や水素化が難しく、CO2排出が避けられない分野ではCCSを最大限に活用することが必要となってくるためだ。国内では事業化を目指す企業が相次いでおり、改めて関連銘柄に注目してみたい。

●50年貯留目標、最大2.4億トン

 経済産業省は1月26日、6回目となるCCS長期ロードマップ検討会を開催し、最終とりまとめを行った。ロードマップの目標は、50年時点で年間約1億2000万~2億4000万トンのCO2貯留を可能とすることを目安に、30年までの事業開始に向けた環境整備(コスト低減、国民理解、海外CCS推進、法整備)を行い、30年以降に本格的にCCS事業を展開するとしている。また、政府支援としては「モデル性のある先進的CCS事業の支援」「CCS適地の開発及び地質構造調査の課題への対応」「CCS事業の持続性に関する検討」が示された。

 海外の動向をみると、米国では超党派でのインフラ投資法に加え、22年8月には10年間で50兆円程度の国によるCCSを含む対策(インフレ削減法)を定めているほか、中国では50年に年間貯留量20億トンを目標とし、国内開発だけでなく他国との関係構築を推進するなどCCS事業に注力している。そのほかの国でもCCS政策導入に向けた動きが起きており、CO2貯留地を巡る大競争時代が到来しているといえそうだ。

●事業化を目指す企業の動き相次ぐ

 こうしたなか、国内企業の間ではCCSの事業化を目指す動きが活発化している。直近ではINPEX <1605> [東証P]、大成建設 <1801> [東証P]、三菱重工業 <7011> [東証P]、伊藤忠商事 <8001> [東証P]が、国内のCO2排出事業者を対象に船舶輸送を用いた大規模広域CCSバリューチェーン事業の実施可能性を検討するため、共同スタディの実施に関する覚書に調印した。今後4社は共同で、素材産業をはじめとする電化及び水素化などだけでは脱炭素化の達成が困難と想定される産業などから排出されるCO2の分離回収・出荷・船舶輸送・貯留に係る共同事業化に向けたスタディを進めるとともに、国内でのCO2貯留候補地の選定作業も行うという。

 石油資源開発 <1662> [東証P]、出光興産 <5019> [東証P]、北海道電力 <9509> [東証P]は北海道の苫小牧エリアで、3社の事業拠点や強みを生かしたCCUS(CO2の回収・有効活用・貯留)の実現に向けた共同検討を開始すると発表している。苫小牧エリアは3社の事業拠点を含む多様な産業が港湾周辺を中心に集積していることに加え、3社も参画する日本CCS調査(東京都千代田区)が国のCCS実証試験を行うなど、 カーボンニュートラルへの取り組みが先行している地域。3社は今後、苫小牧エリアの複数の地点をつなぐハブ&クラスター型CCUS事業(1つの排出源からCO2を回収・貯留するCCS事業だけでなく、地域にある多くの排出源をカバーし、そのCO2を有効活用することで、社会としての排出をより多く縮減するCCUS事業)を30年度までに立ち上げることを視野に、CO2排出地点とCO2回収設備、CO2輸送パイプラインに係る技術検討、CO2貯留地点の適地調査などを中心に、具体的な調査・検討を進める構えだ。

 ENEOSホールディングス <5020> [東証P]傘下のENEOS及びJX石油開発、Jパワー <9513> [東証P]の3社は、国内CCSの事業化に向けた準備を加速するため、合弁会社「西日本カーボン貯留調査」の設立を決定した。新会社は30年のCO2圧入開始を目指し、ENEOSとJパワーの排出源が立地しCO2貯留ポテンシャルが見込まれる西日本地域で、CO2貯留候補地選定のための探査・評価などの事業化に向けた準備を進めるとしている。

 日本製鉄 <5401> [東証P]、三菱商事 <8058> [東証P]、米エクソン・モービル<XOM>は、豪州などの海外アジアパシフィック圏内でのCCS、及びCCSバリューチェーン構築に向けた共同検討に関する覚書を締結した。3社は日本製鉄の国内製鉄所から排出されるCO2の回収に関する調査や必要な設備開発の評価を行い、エクソンによる豪州及びマレーシア・インドネシアをはじめとする海外アジアパシフィック圏でのCO2貯留先の調査、及び三菱商による海外へのCO2輸送及びCCSバリューチェーン構築に向けた評価を実施する計画だ。

 三井物産 <8031> [東証P]と関西電力 <9503> [東証P]は、CCSのバリューチェーン構築を目指した事業化調査に関する覚書を締結した。関西電は自社が運営する火力発電所から排出されるCO2を対象に回収を、三井物は輸送・貯留を主に担当し、バリューチェーンを一気通貫した事業性などを調査・検討する。三井物はエネルギー資源開発や欧州などで先行するCCS事業開発の知見と広範なビジネスネットワークを活用し、アジア大洋州域でもCCS事業の早期立ち上げに向けて事業開発を進めており、同事業化調査はこれらの取り組みとのシナジーも期待されている。

●日揮HD、東洋エンジ、千代建などにも注目

 このほかでは、JFEホールディングス <5411> [東証P]傘下のJFEエンジニアリングが1月、日本CCS調査からCO2液化・貯蔵・荷役設備建設工事を受注したと発表。昨年12月にはトクヤマ <4043> [東証P]と伊藤忠エネクス <8133> [東証P]がバイオマス燃焼灰の有効活用とCCS実現に向けた共同研究覚書を締結しているほか、商船三井 <9104> [東証P]は関西電とCCSバリューチェーン構築に向けた海上輸送などに関する調査の覚書を結んでいる。

 また、日本CCS調査の株主に名を連ねている日揮ホールディングス <1963> [東証P]、三菱ガス化学 <4182> [東証P]、三菱マテリアル <5711> [東証P]、東洋エンジニアリング <6330> [東証P]、千代田化工建設 <6366> [東証S]、東京電力ホールディングス <9501> [東証P]、東京ガス <9531> [東証P]、大阪ガス <9532> [東証P]なども要マークだ。

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