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【特集】需要爆発「生成AI」、半導体セクターで活躍期待の銘柄をロックオン <株探トップ特集>

生成AIの進化が急速に進んでいる。米国と連携して今年は日本も同分野での取り組みに本腰を入れる構えにあり、まさに「生成AI」元年となりそうだ。

―グーグルとマイクロソフトがしのぎを削る超有望分野、広島サミットでも重要議題に―

 今月19~21日の日程で行われたG7広島サミット。世界中の関心を集めた同会議において、重要な議題の一つとなったのが「生成AI(人工知能)」だ。これに関しては、国際的なルール作りを始動させ、年内にもその成果を報告することで各国が一致した。今後、急速に市場拡大が見込まれる 「生成AI」で活躍が見込まれる銘柄にスポットを当てた。

●本物と見分けがつかない“凄い出来栄え”

 人工知能=AI(Artificial Intelligence)と一口に言ってもその範疇は広いが、足もとで世界の視線が集中しているのは、「生成AI(Generative AI)」である。従来のAIは、データを大量に学習することで予測を行ったりすることが主流だった。一方、生成AIは本来人間が生み出すさまざまなものを、代わりにつくることができる点が大きな特長である。

 例えば「イラスト」の領域に焦点を絞ると、ほんの少し前まではAIが描いたイラストはキメラ的な出来栄えとなってしまうなど、いわゆる“不気味の谷”と表現されるような状態で、実用にはまだまだ時間がかかるという論調が多かった。しかし、今や私たちが日々目にするSNSのアイコンや投稿に人の写真が使われていても、それが「本物」なのか、AIによって作り出された「イラスト」なのかを一見して見極めるのは容易ではなくなっている。フェイクニュースなどでも威力を発揮し、今後ネット世界で対応が求められる大きな課題となりそうだ。

 また、特定のイラストレーターの作品を学習すれば、ほとんど同じような画風をAIが勝手に再現してしまうことも可能である。指などの細かい部分で粗さが出るなどいまだ完璧ではないものの、8~9割の完成度でイメージ(指示)通りのイラストを画像AIに生成してもらうことができる。

 もちろん、いくら生成AIといっても、根本は従来のAIと同じであり、コンテンツを生成するためのもとになる情報を学習することは必須だ。それに伴って、「作品の不当収集」をはじめとして、既にいくつもの問題が浮上している。5月に入り、イラスト・マンガ・小説の投稿や閲覧が楽しめる国内最大級の作品コミュニケーションサービス「pixiv(ピクシブ)」もこうした問題点について報告と対応方針を示したが、ピクシブに限った話ではなく、各所が対応に追われている。他にも社員の安易な利用による、秘密情報の漏洩リスクなど、生成AIは魅力だけでなくリスクを持ち合わせている。

●先鋭化するグーグルとマイクロソフトの開発競争

 生成AIは前述したような事例をはじめとして、多くの問題をはらんでいる一方、ネット世界の2大巨頭に位置付けられるアルファベット<GOOGL>傘下のグーグルとマイクロソフト<MSFT>がしのぎを削っている超有望分野であることは間違いない。この点に関しては、昨今話題になったオープンAIの技術をサービスに積極搭載しているマイクロソフトが大きくリードしている印象を持っている投資家も多いだろう。

 しかし、今月10日に開催されたグーグルの年次開発者会議「Google I/O」では、グーグルの対話型AI「Bard」も20言語以上のコーディングに対応するなど、プログラミング機能が更に強化されたことが明らかになった。また、マイクロソフトの検索エンジン「Bing」と同様に、グーグルも検索エンジンに生成AIを搭載することで、より利便性を高める方向にある。新型の検索エンジンは「Search Generative Experience(SGE)」と呼ばれ、現在グーグル内で試験中のようで、こうした実験を経て、漸次市場に投入されることになるとみられる。

●日本でも「生成AI」元年に

 生成AIに関しては、もちろん米国が最大の有望市場かつ技術発展の中心であることは想像に難くない。しかし、「Chat GPT」を開発したオープンAIを率いるサム・アルトマンCEOが4月に来日し、岸田首相と面会したことは耳目を集めた。その後に同氏が日本への進出を考えていることを明らかにした。直近では政府の「グローバル・スタートアップ・キャンパス構想」の推進でマサチューセッツ工科大学の誘致検討が明らかになるなど、今後は日本も大いにAI領域に関わる可能性が高まっている。いわば今年は日本においても「生成AI」元年ということになりそうだ。

 G7広島サミットにおいて、生成AIに関して年内に国際ルールを取りまとめるとの目標を定めたこともあり、折に触れて関心が向かうはずである。そこで、今回は「生成AI」関連の銘柄に注目。マルチAIプラットフォーム「SyncLect(シンクレクト)」などを提供するヘッドウォータース <4011> [東証G]やFAQの自動作成サービス「Knowledge Maker(ナレッジメーカー)」を手掛けるPKSHA Technology <3993> [東証S]などAI企業が関連銘柄として賑わいを見せているが、今回は半導体周辺企業で注目される銘柄を探った。

●生成AIで注目される半導体関連5銘柄

◆富士通 <6702> [東証P]~東京工業大学、東北大学、理化学研究所と、スーパーコンピューター「富岳」を活用し、ChatGPTをはじめとする生成AIの中核として使用されている「大規模言語モデル」の分散並列学習手法の研究開発を2023年5月から実施すると発表。日本の研究者やエンジニアが大規模言語モデルの開発に活用できるように、今回の「富岳」政策対応枠で得られた研究成果を、24年度に、GitHubやHugging Faceのプラットフォームを通じ公開する予定。

◆SCREENホールディングス <7735> [東証P]~「表面処理技術」「直接描画技術」「画像処理技術」の3つのコア技術を保有しており、半導体、印刷、ディスプレー、プリント基板市場などに展開している。グループのSCREENアドバンストシステムソリューションズでは、AIを活用した自然言語理解処理を手掛けており、分類・タグ付けソリューション、同義語辞書生成サービス、AIサジェストによる高速検索システムなどのサービスを行う。

◆ルネサスエレクトロニクス <6723> [東証P]~従来技術に比べて最大10倍の電力効率を実現したAIチップを開発。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が進める「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発」で開発に成功、電力効率は1ワット当たり10TOPS(10兆回/秒)で、従来技術に比べて電力効率を最大で10倍にすることに成功した。また、炭化ケイ素(SiC)を使い電力損失を少なくした次世代パワー半導体 の生産を2025年に始めると発表。

◆マクニカホールディングス <3132> [東証P]~独立系のエレクトロニクス専門商社。日本国内におけるエヌビディア<NVDA>の正規代理店であり、生成AIの普及とともに業績に追い風が吹く。また、同社のサービスとして、ECサイト掲載用商品カタログデータ自動作成AI「dataX」は商品カタログPDFなどから、必要な商品情報や商品画像を抽出し自動で整理し、商品掲載のデータの作成工数を削減し、高速な商品データ作成を実現する。

◆凸版印刷 <7911> [東証P]~パワー半導体向けの受託製造ハンドリングサービスを2023年4月から提供開始。車載・産業機器・ファクトリーオートメーション向けを対象としているが、生成AIが大量のデータを学習するには、高性能なGPUを備えた多数のサーバーと、それらを収める大規模データセンターが欠かせないため、高電力・高電圧の制御に使用されるパワー半導体の需要が高まる。

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