CAICAD Research Memo(1):2024年10月期上期は大幅な損益改善を実現
■要約
1. 会社概要
CAICA DIGITAL<2315>は、「デジタル金融の未来を切り拓く」というミッションの下、金融業界向けを主としたシステム開発やDXソリューションなどを手掛ける「ITサービス事業」を軸に、Web3ビジネスの拡大などに取り組む「金融サービス事業」を展開している。長年にわたるシステム開発や暗号資産交換所の運営などを通して蓄積してきた高度な技術やノウハウなどに強みがあり、同社グループ全技術者(約350名)がブロックチェーン技術者となる計画を実行中である。ただ、この数年にわたる暗号資産市場の混乱などを背景として、2021年3月に参入した暗号資産交換所「Zaif」の運営から撤退(2023年10月31日付け譲渡)し、「金融サービス事業」の抜本的な事業再編に踏み切った。今後は安定したキャッシュ・フローを生み出すシステム開発の「ITサービス事業」へ集中するとともに、次世代の分散型インターネットとして注目されているWeb3ビジネスの拡大に取り組む方針である。特に、GameFi※におけるNFTローンチパッド「Zaif INO」や法人向けコンサルティング事業の「CAICA Web3 for Biz」の推進などにより、デジタル金融のパイオニアとしてのポジションを確立していく考えだ。
※GameFiとは、「Game」と「Finance」を組み合わせた造語。ゲームをプレイしながら利益を稼ぐ(暗号資産を増やす)ことができる新しいゲームジャンル。
2. 2024年10月期上期決算の概要
2024年10月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比5.2%増の2,866百万円、営業損失が196百万円(前年同期は1,397百万円の損失)と増収増益により損失幅が大きく改善した。保有する暗号資産の評価切り下げなどにより上期での黒字転換には至らなかったものの、営業キャッシュ・フローはプラスに転じている。売上高は、好調な受注環境を背景として「ITサービス事業」が好調に推移した。利益面でも、「金融サービス事業」の先行投資を投入しながらも、「ITサービス事業」の伸びや利益率の高い案件の獲得により大幅な増益を実現した。活動面では、海外有力ベンダーからのパートナー認定によるソリューション強化や韓国Web3企業との提携を通じた韓国市場への参入など、今後の事業拡大に向けて進展を図ることができた。
3. 2024年10月期の業績見通し
2024年10月期の連結業績について同社は、期初予想を据え置き、売上高を前期比11.0%増の6,302百万円、営業利益を169百万円(前期は2,378百万円の損失)と増収増益により黒字転換を見込んでいる※。売上高は、上期に引き続き、好調な受注環境を背景として「ITサービス事業」が順調に拡大する見通しである。利益面でも、「金融サービス事業」の再編に伴う販管費の削減や「ITサービス事業」の伸びにより大幅な損益改善(及び黒字転換)を実現する。計画外であった暗号資産の評価切り下げによる影響については、「ITサービス事業」の伸びや利益率の高い案件の獲得などによりカバーする想定のようだ。
※当第2四半期連結累計期間より、活発な市場が存在しない暗号資産の評価損について、売上高に表示する方法から売上原価に表示する方法に変更している。そのため対前期増減率は、当該表示方法に変更し、遡って適用した組替後の数値としている。
4. 中期経営計画の方向性
同社は「金融サービス事業」の抜本的な再編に伴い、2023年10月に新たな3ヶ年の中期経営計画を公表した。ただし、「2030年に向けた将来ビジョン」の方向性に大きな変更はない。すなわち、安定したキャッシュ・フローを生み出すシステム開発の「ITサービス事業」に集中するとともに、資本業務提携を締結したクシムなどとの協業により、ブロックチェーン技術を活用したWeb3ビジネスの拡大を図る方針である。既存Web3事業の拡大やDXコンサルティングによるSI事業の伸長、M&Aによる事業拡大などを通じて、最終年度の2026年10月期に売上高7,813百万円(3年間の年平均成長率は13.0%)、営業利益467百万円(営業利益率6.0%)を目指す。
■Key Points
・2024年10月期上期は営業活動によるキャッシュ・フローが黒字化
・2024年10月期上期は「ITサービス事業」の伸びと「金融サービス事業」の再編効果により大幅な損益改善を実現。
・海外有力ベンダーからのパートナー認定や韓国Web3企業との提携など、今後の事業拡大に向けて進展を図ることができた
・2024年10月期の通期予想を据え置き、増収及び大幅な損益改善(黒字転換)を見込む
・新たな中期経営計画では、安定したキャッシュ・フローを生み出す「ITサービス事業」への集中とWeb3ビジネスの拡大を図る方針
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
《SI》
株探ニュース