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いい生活 Research Memo(4):不動産業務に必要となる業務支援システムをSaaSとして提供(2)

特集
2024年12月5日 11時04分

■いい生活<3796>の事業内容

2. ビジネスモデルの特色・強み

同社の強みは、大きく分けて5つある。1つ目は、特定の業界に特化した垂直型の市場特化型SaaS(バーティカルSaaS)を展開している点。このアプローチにより、業界特有のニーズに深く対応する製品を提供できる。2つ目は「SaaSオンリー」という戦略で、これによりクラウドベースのサービスに集中し、顧客への効率的なサービス提供が可能となっている点。3つ目はマルチプロダクト戦略を採用しているため、必要なシステムを幅広く自社で提供することができる点。4つ目は特に賃貸管理会社に焦点を当てることで、特定セグメントのニーズに特化したサービスを提供し、様々なサービスが1つのSaaSプラットフォーム上に統合され、シームレスな連携が実現している点。5つ目は自社開発の製品が不動産業界に精通したエンジニアやセールスチームによって支えられている点である。これにより、実際の業界の問題に対する理解が深まり、顧客に適した解決策を提案できる。日本情報クリエイト<4054>、GA technologies<3491>、SREホールディングス<2980>など、不動産テックを展開する同業他社に対する大きな差別化要因になると考えられる。

不動産業界における従来のシステムは、個別のWeb広告媒体やシステムが単独で利用され、情報連携が手動で行われるなど、IT化の効果が十分に発揮されていない状況が見られた。特に賃貸物件の空室情報の確認は、管理会社への個別の確認が必要であり、時間がかかるうえ、情報の正確性も担保されにくいという問題があった。これに対し、同社のクラウドベースのサービスは、賃貸管理システムと完全に連動し、物件情報をリアルタイムで更新しながらシームレスな情報利用を実現している。このシステムを通じて、賃貸管理会社や仲介会社は、空室状況を即座に把握でき、業者間での情報の正確性と利便性を向上させている。この技術により、消費者が直面していた不利益も大幅に軽減され、同社のサービスは不動産業界における差別化要因となっている。

3. ポジショニングによる競争優位性

同社のサービスはポジショニングにも特徴があり、不動産領域に特化した垂直市場特化型サービスを展開しながら、マルチプロダクト戦略を取ることで、不動産におけるすべての業務領域をカバーしている。それぞれのサービスがクラウド上にあるので、シームレスに連携されたサービスを通じて顧客企業に対して高い全体最適性を提供できるという独自のポジショニングを取っている。この特徴を業績の安定という観点から見ると、不動産の取引形態に応じた様々な業務をすべて事業領域として展開しているため、景気が下降した局面でも比較的影響を受けにくい収益構造になっているところが同社の強みと言える。

サービスの提供によってノウハウが社内に蓄積されていくだけでなく、そのノウハウを会社全体で共有し深掘りすることができる仕組みとなっており、新しいサービスを展開しやすい環境にある。顧客企業に対しても、より良いサービスの提案や品質の向上につなげていくサイクルができている。さらに多くのユーザー企業からのフィードバック・要望を通じて、様々なノウハウが社内に蓄積されることで付加価値の高い提案を可能としており、競合他社との差別化要因にもなっている。

4. 市場環境

不動産業界はDXの急速な進展が見込まれるなか、特に「2025年の崖」問題(2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」より)を背景に、デジタル化への取り組みが求められている。同社は、デジタル化推進政策を活用し、新しいDXツールの開発やコンサルティングサービスを提供することで市場ニーズに応え、事業成長が期待される一方で、経済や人口の減少が市場リスクとしてあるものの、同社はマルチプロダクト戦略を通じてこれに対応している。また、不動産市場は現在活況を呈し、海外投資家の高い関心も追い風となっており、同社にとって事業拡大の好機となっている。

加えて、不動産市場におけるSaaSの導入は今後も拡大すると予測される。不動産市場におけるSaaSの導入は、法改正への迅速な対応が求められる現状において顕著な利点を提供している。オンプレミス型システムの陳腐化が進むなかで、法改正への対応が遅れがちなこれらのシステムと異なり、SaaSは自動でアップデートされるため、常に最新の法令に基づいた運用が可能である。また、地域密着型でフラグメントされた市場には約13万社の宅地建物取引業者が存在し、これら中小規模の事業者がIT投資における制約を抱えているなか、低コストで導入が可能なSaaSは大きなメリットをもたらす。さらに、市町村合併などによる必須マスター情報の変更等にもSaaSは自動で対応できるため、個別のシステム更新の手間を省くことができる。不動産取引は多様な関係者が関与するため、SaaSを利用したデータの連携は作業の効率化につながる。加えて、ユーザー企業がシステムの保守・運用に必要な人的リソースが限られているなかで、メンテナンスフリーのSaaSへのニーズはさらに高まると見られる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞)

《HN》

提供:フィスコ

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