明日の株式相場に向けて=驚愕の米雇用統計、売り方の踏み上げ誘発
週明け7日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比697円高の3万9332円と大幅続伸。朝方から主力銘柄をはじめ広範囲に買いが先行した。途中緩む場面はあっても、利食い急ぎを誘発する展開には至らず、逆に大口の押し目買い注文が下値を支え、後場は最終盤まで高値圏でジリジリと水準を切り上げた。大引け間際に手仕舞い売りで上げ幅を縮小したものの、700円近い上昇で3万9000円台を大きく回復している。
前週末4日に発表された9月の米雇用統計は驚くほど強い内容であった。ついこの間までリセッション懸念が大手を振っていた米経済が、見立て違いだったということにもなる。フタを開けて見れば非農業部門の雇用者数の伸びが25万4000人で、事前の市場コンセンサスが15万人程度だったことを考慮すると10万人も上乗せされた水準。更に失業率は4.1%で8月から0.1ポイント改善し、8月と並びを見込んでいた事前予想よりも良好な内容だった。平均時給については前年同月比で4.0%の上昇となり、これも事前予想から0.2ポイント上振れ、前月比でも想定を上回った。経済実勢と金融政策は表裏一体で、FRBが利下げを急がない背景ともなり得るが、それよりも今は株式需給の方が先に立つ。米経済失速にかけた弱気筋の踏み上げが全体相場の流れを形成している。
個別株は日経平均が先物主導で大幅高している場面では、選別が難しい部分もある。投資対象として225採用銘柄に代表される大型株に追随するのであれば、ここから全体株価が上昇するという相場観があれば肯定される。よく大型株優位の地合いという表現がなされるが、それは日経平均やTOPIXの先高期待が強いということを代弁している。しかしその場合、買いを入れるタイミングは全体指数が押しを入れたところだ。石破政権の不安定さや中東情勢の緊迫化を念頭に置くと、仮にあすの日経平均が大幅高したとしても、ここで上値に飛びつくのは避けるべきで、むしろ出遅れている中小型株に打診買いを入れておくくらいの方が有効といえる。
ただ、日経平均の上値は為替の動向に左右されやすい。円安と株価指数先物がリンクされているためで、これは理屈の領域を超えている。今の相場は決して「バスに乗り遅れるな」というような焦って買う局面ではないが、ここからドル高・円安が更に進むという見立てであれば、内需外需を問わず大型株シフトが有効と考えられる。また総選挙アノマリーも念頭に置くと、石破政権だから買えないという理屈はしばらく棚上げとなりそうだ。
分かりやすいのは足もとの相場で売買代金上位を占めている大型株に照準を合わせておく手法である。乱暴な言い方をすれば、業態は関係ない。レーザーテック<6920>、三菱重工業<7011>、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>、ソフトバンクグループ<9984>、トヨタ自動車<7203>、ファーストリテイリング<9983>といった銘柄を分散して買っておけばそれで事足りる。もしくは、ど真ん中の直球でNEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信<1570>を拾っておく手もある。暴騰する中国関連のETFを買うのは、百人一首の“坊主めくり“に等しく、それよりは遥かに健全といってよさそうだ。
一方、リスクオン相場で中小型株が敬遠される道理もない。こちらは仮に日経平均が軟化しても逆行高できる銘柄も多く存在している。目先狙いたい銘柄としては、スポンジチタン価格が上昇傾向にあるなか、航空機向け需要が成長軌道に回帰していることで生産能力増強に動く大阪チタニウムテクノロジーズ<5726>。また、東邦チタニウム<5727>も併せてマーク。このほか、航空機向けチタンアルミブレードを製造するAeroEdge<7409>にも意外性がある。
あすのスケジュールでは、8月の毎月勤労統計、8月の家計調査、9月上中旬の貿易統計、8月の国際収支、9月の対外・対内証券売買契約がいずれも朝方取引開始前に開示。また、午前中に30年物国債の入札が予定される。午後取引時間中には9月の景気ウォッチャー調査が発表される。なお、この日は名証ネクスト市場にケイ・ウノ<259A>が新規上場する。海外では豪中銀理事会の議事要旨(9月開催分)が開示。米国では8月の貿易収支発表のほか、米3年物国債の入札が行われる。クグラーFRB理事やジェファーソンFRB副議長など複数のFRB高官の講演も予定され、これもマーケットの注目度が高い。(銀)
株探ニュース