明日の株式相場に向けて=米国債暴落のシナリオにうごめく資金
きょう(31日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比196円安の3万9081円と4日ぶり反落。ここまで順調に戻り足をみせていた日経平均だが、きょうはリスク回避目的の売りに下値を試す展開を余儀なくされた。時計の針を戻すと前日の欧州時間からリスクオフの波が立っていた。欧州株市場はドイツやフランス、英国など主要国の株価をはじめ全面安に売り込まれた。しかも独DAX、仏CAC40など安く始まった後も漸次下値を切り下げる味の悪い値運びで米国株市場にバトンを渡す形に。米株市場でも前場は頑強な地合いで踏ん張ったが、NYダウ、ナスダック総合株価指数ともに午後に入ってから利食い急ぎの動きが顕在化した。久し振りの欧米株全面安である。
もっとも日本株は相対的に強いタームに入っているようだ。総選挙で与党が大敗を喫し、政局不安の只中にあって、皮肉にも日経平均は3営業日で1300円以上も水準を切り上げた。きょうは欧米株全面安の中で、アドバンテスト<6857>が昨日のディスコ<6146>に代わって投資マネーを呼び込み、一時8.3%高の大立ち回り。売買代金も3000億円を超える水準をこなし存在感を際立たせた。アドテストの貢献もあって日経平均の下げ幅は200円弱にとどまり、しかも大型株全般の下げを横目に小型株に強調展開が相次ぎ、値上がり銘柄数は全体の7割を占めた。トランプトレードの余熱が東京市場には残っていて、トリクルダウン(大型から中小型への資金シフト)の傾向が読み取れる。
しかし、米株市場の動向には注意も必要で、大統領選の結果次第でリスク回避ムードが台頭する可能性がある。背景には米国債に対する売り圧力、言い換えれば米長期金利高騰への警戒感がくすぶっている。そうしたなか、東京市場ではきょう昼ごろに日銀金融政策決定会合の結果が発表され、日銀は金融政策の現状維持を決め、追加利上げは見送られた。これは事前にほぼ100%に近い形でマーケットには織り込まれており、直接的な相場の反応は軽微だった。関心の対象は日銀が今の物価動向をどう評価し先行きをどう見ているかということ。また、再燃している円売り(円安)にどういう姿勢をみせるかに耳目が集まっている。今回の会合について市場関係者からは、「日銀は米大統領選を控えた米経済の不確実性の高まりに言及したが、これが今までにはない項目でやや違和感を覚えた」(中堅証券ストラテジスト)という声も聞かれた。天下分け目の米大統領選の結果が、米経済に何らかの波紋を及ぼすことを予期しているかのようなスタンスである。
来週11月5日に投開票が行われる米大統領選ではトランプ前大統領がハリス副大統領に勝利するという見方が強まっている。接戦と言われながらもスイングステート7州のうちトランプ氏がミシガン州を除く6州で優位に立っているとの観測があり、こうなるとトランプ氏大統領再選の可能性が高いとみるのが自然ではある。
それだけではなく、米議会選挙では上院、下院共に共和党が制し「トリプルレッド」が実現するとの思惑も高まっている。トランプ氏が返り咲けば積極的な財政出動が行われ、結果として米長期金利の急上昇を招くという説が囃(はや)されるが、ねじれ議会であれば歯止めが利く。しかし上下両院を共和党で占めれば政策決定への制約は生じない。「大統領選後に投機マネーが狙っているのは米債券市場で、既にヘッジファンドなどの米国債への売り仕掛けの舞台装置は出来上がっている」(ネット証券マーケットアナリスト)という指摘もある。もちろん、トリプルレッドになる確率はそれほど高くはないが可能性は十分だ。
米国債に対する売り仕掛けには伏線がある。米中対立激化を背景に中国が米国債を売って金(ゴールド)を買う、ゴールドシフトの動きが継続していることだ。これは中国だけでなく、他の新興国も右に倣えの動きで、金市況高騰の背景にもなっている。本来は逆相関がセオリーだが、今は金市況上昇と米長期金利上昇が連動する仕組みになっている。この流れを利用した仕掛けが入れば米10年債は5%台まで時間がかからないという声もある。その場合、株式市場も予期せぬ横殴りの突風に見舞われることは避けられない。
あすのスケジュールでは、10月の新車販売台数・軽自動車販売、3カ月物国庫短期証券の入札など。国内主要企業の決算発表では村田製作所<6981>、三菱商事<8058>、サンリオ<8136>、日本航空<9201>などが予定。海外では10月の中国財新製造業PMI、10月の米雇用統計、10月の米ISM製造業景況感指数、9月の米建設支出など。(銀)
株探ニュース