明日の株式相場に向けて=三菱UFJ・新値圏突入の正体
きょう(24日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比291円安の3万6226円と続落。日銀による金融政策の正常化といっても、いますぐに政策変更に動くということでは全くないが、その兆しが見えたということが利益確定売りの口実に使われた感じである。前日に発表された日銀金融政策の結果は大規模金融緩和策の維持、つまりマイナス金利の解除は見送りとなったわけだが、これはほとんど事前に織り込まれていたといってよい。投資家が狼狽する要素はなかったはずだが、それでもAIアルゴリズムによるヘッドライントレードの影響が反映されて、前日の日経平均はいったん上げ幅を拡大した後に急速に値を消すドタバタ劇となり引け味の悪さが残った。だが、マーケットを揺さぶったのはむしろ取引終了後であった。日経平均先物が時間外で大きく値を崩し3万6000円近辺まで下押す格好となり、市場筋の間でも話題となった。
これは言うまでもなく引け後の植田日銀総裁の記者会見に絡んだ動きで、植田氏が物価上昇率に言及しデフレ脱却の出口が近づいているという認識を示した際、これを材料に先物に売り仕掛けが入り、あっという間に500円近い下げに見舞われた。市場では「4月にマイナス金利解除の線が高まったという思惑が海外投資家に広がった。国内的には4月解除は既にメインシナリオでサプライズ要素はないが、海外ファンド筋はもう少し後ずれするとの見方を示す向きが多かったようだ」(ネット証券マーケットアナリスト)とする。
とはいえ、前日の米国株市場が思いのほか頑強な地合いをみせた。これに引っ張られて日経平均先物が戻し、きょうの取引開始前の段階では市場関係者も頑強な値動きを予想する声が多かったのだが、フタを開けてみれば売り圧力に凌駕された。ここ最近の株高が行き過ぎに買われていたことは否めず、きょうの日経平均はそのぶんの利食い圧力が加わり下値を探る展開を余儀なくされたといえる。
ここで急浮上してきたのがメガバンクを筆頭とする銀行セクターだ。特に三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>への資金流入が顕著で、同社株は5%を超える急伸で1380円台まで歩を進め、昨年9月21日につけた昨年来高値1344円を上抜き一気に新値街道へと躍り出た。国内の長期金利が0.740%まで急上昇したことも同社株の物色人気を後押しした。きょうのメインイベンターはレーザーテック<6920>でもトヨタ自動車<7203>でもない、紛れもなく三菱UFJだったといってよさそうだ。
植田日銀総裁の記者会見に意外性は全く見いだせなかったものの、4月マイナス金利解除というシナリオが現実味を帯びてきたことで、金利上昇を最大限に好材料として取り込める銀行株の存在がクローズアップされている。メガだけでなく地銀セクターにも目を向けたいところだが、数多い銘柄の中であえて絞り込むならどこか。地銀にとって重要な評価ポイントとなる地方経済のダイナミズムに目を向けるのであれば、やはりTSMC<TSM>の半導体工場建設で盛り上がる熊本の「城下町バブル」は見逃せない。営業利益予想の大幅増額を受けてきょうは一時ストップ高に買われたイオン九州<2653>をヒントに、九州フィナンシャルグループ<7180>やふくおかフィナンシャルグループ<8354>などが面白い存在となる。なお、地銀以外では、当欄で週初に取り上げた半導体業界向け生産設備を手掛ける平田機工<6258>も同関連に含まれる。
更に城下町バブルで2匹目のドジョウを狙うのであれば、天空の城“ラピダス”効果が見込まれる北海道千歳市周辺だ。地銀であればほくほくフィナンシャルグループ<8377>となるが、それ以外に消費関連のサツドラホールディングス<3544>や、北海道地盤の建材資材及び工事会社であるクワザワホールディングス<8104>あたりをマークしたい。
あすのスケジュールでは、午前中に40年物国債の入札が予定され、午後取引時間中に12月の首都圏マンション販売、12月の外食売上高、12月の全国百貨店売上高が発表される。海外ではトルコ中銀の政策金利発表、ECB理事会の結果発表とラガルドECB総裁の記者会見、1月の独Ifo企業景況感指数、週間の米新規失業保険申請件数、12月の米耐久財受注額、10~12月期米実質国内総生産(GDP)速報値、12月の米新築住宅販売件数、米7年物国債の入札など。なお、マレーシア市場は休場となる。また、米国ではインテル<INTC>の決算に注目度が高い。(銀)
最終更新日:2024年01月24日 17時01分
株探ニュース