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あの企業も債務超過へ、注視すべきは負債の大小より「質」

特集
2020年8月12日 10時50分

大川智宏の「日本株・数字で徹底診断!」 第46回

負債比率の最も高い群のパフォーマンスが最低で、同比率が最も低い群のパフォーマンスが最高という点も、負債の質という観点からは整合的な結果と言えます。

■ネット負債比率の投資効果

【タイトル】

出所:データストリーム

また、高低の分類でいうと上位40~50%の群から明確にプラスに転じていることから、このあたりに投資対象としての良し悪しの線引きがありそうです。そこで、参考までに各分位点におけるネット負債比率の値をプロットしたものが、以下の図です。

先のパフォーマンスの境界線であった40%と50%の間で、ネット・デッドとネット・キャッシュも境目を見せています。何にせよ、財務の健全性の観点から安定してプラスのパフォーマンスを獲得するには、ネット・キャッシュ状態の銘柄を基本線として考えるのが無難でしょう。

■各分位点におけるネット負債比率の値【タイトル】

出所:データストリーム

金利支払いの余力で見たら

続いては、インタレスト・カバレッジ・レシオです。こちらは、「有利子負債から発生する金利支払いを、利益でどの程度カバーできているのか」を見る指標です。

定義としては、EBIT(利払前・税引前利益)を支払い利息と割引料の和で除したものとなります。言うまでもなくこの値が大きい方が生み出す利益によって負債の金利の支払いを十分にカバー可能な状態であることが示されます。

注意点として、インタレスト・カバレッジ・レシオ過去の実績の利益を使用してはまったく意味がなく、今後発生しうる利益予想で金利をどれだけカバーしうるかを見る必要があります。

そのため、予想データの取得が困難なEBITではなく、厳密さを無視して簡易的に営業利益を用いることも多いです(本分析でもコンセンサス営業利益予想を用いて計算しています)。

これについても、実際にパフォーマンスを見てみます。方法は、前述までと同様です。こちらは、ネット負債比率よりもさらに明確な意図が感じられる美しい坂を描きます。

上位から60~70%群でプラスに転じていますが、パフォーマンスが高まる50~60%群に境界線がありそうです。

■インタレスト・カバレッジ・レシオの投資効果

【タイトル】

出所:データストリーム

そこで、ネット負債比率同様に各分位点におけるインタレスト・カバレッジ・レシオの値を示したものが、以下の図になります。

一般に、インタレスト・カバレッジ・レシオは10倍以上が望ましいと言われますが、それは株式投資の対象としては不十分であって、最低でも50倍程度はないと安心できないといったところでしょうか。

何にせよ、特に厳しく財務の質が問われるコロナ禍において、負債の適切な管理と事業の収益性の双方を網羅できるこの指標の有用性は高いといえそうです。

■各分位点におけるインタレスト・カバレッジ・レシオの値【タイトル】

出所データストリーム

最後に、参考までにネット負債比率とインタレスト・カバレッジ・レシオの両指標を組み合わせて銘柄を分類した場合のパフォーマンスの検証結果を載せておきます。この場合は、銘柄数を確保する関係から5分位(20%刻み)による分類とし、両指標の最高・最低分位をそれぞれ独立に高群、低群として組み合わせ、該当する銘柄を抽出しています。

すでに効果が確認されている両指標の組み合わせなので結果は見るまでもありませんが、投資対象として魅力度が高い想定の低ネット負債比率かつ高インタレスト・カバレッジ・レシオ群と、その逆の高ネット負債比率かつ低インタレスト・カバレッジ・レシオ群とではパフォーマンスが真逆になります。

■ネット負債比率とインタレスト・カバレッジ・レシオの組み合わせ パフォーマンス

【タイトル】

出所データストリーム。注:インタレストCはインタレスト・カバレッジ・レシオの略

コロナの収束が見えず、不安的な経済環境の中で信じられる銘柄を選ぶために、こういった「負債の質」を炙り出す観点の重要性は今後も増してくるでしょう。

最後に、参考までに今回の分析に該当する銘柄の例を添付します。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

次ページ 該当銘柄リストは

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株探ニュース



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