横山利香「令和時代の稼ぎたい人の超実践! 株式投資術」― (47)決算シーズンを好機に! 株価と企業業績の関係を考える

特集
2024年2月7日 14時00分

横山利香(ファイナンシャルプランナー、テクニカルアナリスト)

◆業績はどこまで織り込まれているのか、決算短信を読み込む

企業の決算発表は四半期ごとに行われます。その時に開示される決算短信は投資家にとってこれ以上はないといってよい判断材料となりますので、必ず毎回確認するようにしましょう。発表当日中に確認することが望ましいですが(多くの企業決算は引け後に行われます)、難しい場合には週末あたりまでに確認できればよいかと思います。

今回は保有株があるという前提で解説していきますが、株探の「決算速報」を使って銘柄を探す場合も同じです。ここでは個人投資家が大好きな半導体セクターから、マクニカホールディングス <3132> [東証P]を例にして解説していきます。なお、ここで同社を取りあげるのは決算短信を読み解く道筋をご説明するにあたって題材とするものであり、同社株を有望(またはその逆)として紹介するものではありません。

では、株探の「株探検隊」の検索窓に銘柄コード「3132」を入力して検索ボタンをクリックしましょう。すると、マクニカホールディングスのページ(デフォルトは基本情報)が表示されます。

図1 マクニカHDの銘柄欄、右下の「決算発表日」に注目

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決算発表が近づいている場合には、銘柄名が表示されている囲みの右下に「決算発表予定日」、決算発表を通過すると「決算発表日」が表示されますので必ず確認してください。ここに表示される「決算発表予定日」と「決算発表日」は、発表1週間前~発表日2日前までが「黄色」、発表前日~1週間後が「赤色」の背景色で表示されます(図1)。この色分けには、決算発表予定日が接近した銘柄、決算発表の前後でその影響を色濃く受ける銘柄について投資家の注意喚起を行う狙いがあります。

では、マクニカホールディングスが1月29日に発表した決算の内容を確認してみましょう。銘柄欄の下に並んでいるタブの中から「ニュース」をクリックします。すると、マクニカホールディングスに関するニュース全体をご覧いただける「全件」のページが表示されます。「全件」のページでは、決算とは関係ない記事も含まれていますので、決算を絞り込むために「決算速報」のボタンをクリックしましょう。すると、直近から1年半ほど過去までの期間における決算発表と業績修正に関するニュースを確認することができます(図2)。

図2 マクニカHD 「ニュース」-「決算速報」

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まずは、直近の決算発表の内容を確認してみましょう。ここでは「24/01/29 15:00 決算 マクニカHD、4-12月期(3Q累計)経常は20%増益で着地、今期配当を30円増額修正」の見出しをクリックします。

すると、当該記事の本文ページが表示されました。まず、「株探」のAI(人工知能)が決算短信を基に生成している決算の内容を確認するとともに、タイトル下の右端に設置されている「決算短信PDF」のボタンをクリックして、必ず決算短信の原本を確認するようにしてください(図3)。

図3 マクニカHDの第3四半期決算を伝えるAI生成記事

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マクニカホールディングスの場合、記事や決算短信のタイトルから第3四半期(3Q)の決算であることがわかります。どの銘柄でも同じことですが、ここで確認すべきことは、直近の四半期の業績が良好であるのか、それとも低迷しているのか、です。

見出しを読むと、第3四半期累計(4-12月)の経常利益が20%増益で着地し、今期配当金も増額するとありますので、まずは「好調そうだ」と考えられそうです。通期の売上高と利益項目の予想は据え置かれていますが、前期に続き過去最高の更新が見込まれています。また、決算と同時に100万株・50億円を上限とする自社株買いの実施も発表しており、一見すると好材料が目につきます。

では、引け後に発表された決算を受けて、翌日の株価はどのように反応したのでしょうか? 銘柄欄の下の「チャート」のタブをクリックして、日足チャートを見てみましょう(図4)。

決算発表の翌日(1月30日)の動きを見ると、7902円で寄り付いた後、8206円まで上昇しましたが、結局、利益確定売りに押されたようで、前日比135円安の7917円で取引を終えています。この日の日経平均株価は38円高と小幅ながら続伸していますので、全般の地合い悪化に引きずられたわけではなさそうです。良好な業績を示唆する業績記事の見出しでしたが、株価の動きからは、今回の決算内容はすでに織り込みが相当に進んでおり、サプライズは乏しかったと推測できます。

図4 マクニカHD 日足チャート(2023年10月2日~2024年1月30日)

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ここで、もう一度、業績を伝える記事ページに戻ります(図3)。先ほど「ここで確認すべきことは、直近の四半期の業績が良好であるのか、それとも低迷しているのか」と述べました。通期予想に修正があったのか、配当金に変動があったのか、といったポイントと併せて直近の四半期の数字を確認します。

決算短信の内容をまとめた解説文を読み進むと、「直近3ヵ月の実績である10-12月期(3Q)の連結経常利益は前年同期比29.2%減の121億円に減り、売上営業利益率は前年同期の6.7%→5.3%に悪化した」とあります。

その下に業績表が並んでいますが、一番下の「3ヵ月業績の推移【実績】」をご覧ください。「23.10-12」が直近の四半期決算(累計ではなく、10-12月期の3ヵ月決算)であり、その「前年同期比」の数値を見ると、数値が悪化していることがわかります。なお、企業によっては1年の中で繁忙期や閑散期といった季節特性を持つものがありますが、同社では当てはまるのでしょうか。

図5 マクニカHD 3ヵ月決算【実績】(株探プレミアム)

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株探プレミアムの機能を使って確かめてみましょう。株探プレミアムでは現時点では19年1-3月期まで遡って四半期決算の推移を追うことができます(図5)。業績の変化率を算出してみると、20年10-12月期の売上高は前年同期比6.8%増、経常利益は同49.9%増、21年10-12月期は売上高が39.6%増、経常利益が2.1倍、22年10-12月期は売上高が41.3%増、経常利益が85.7%増と増収増益を続けています。つまり、同社のビジネス的な季節特性によって23年10-12月期の業績が悪化したというものではないことがわかります。それだけにマーケットは直近四半期業績の変調を慎重に受け止めたのかもしれません。

最近の株式市場では、生成AIや半導体が話題にのぼることが多く、これらに関連する銘柄が株式市場を牽引しています。同社もこれらのテーマに連なる銘柄ですが、これまで見てきたように決算発表直後の株価の動きをみると、今期の業績予想は織り込まれている可能性があります。実際、2023年10月30日に発表した第2四半期累計(4-9月)決算では経常利益は前年同期比54.7%増に拡大し、年間配当も160円に10円増額修正しましたが、翌31日の株価は15.1%と急落しています。この時に株価下落の背景として報じられていたのが、「好材料出尽くし」との見方でした。通期予想については配当を除いてこの時点から今まで変化はありません。その後、株価水準を切り上げる過程で織り込みは進んでいたと考えてもよいでしょう。

直近四半期の業績悪化を踏まえると、現在の株価水準は少し割高感が否めない状況ですが、足もとのPER(11.9倍)は株探で確認できる2015年4月以降のヒストリカルPERの平均値11.8倍と比べて大きく買われすぎといえるほどではありません(18年1月には20倍を超えています)。ほぼ過去平均と同水準にあるPERはある意味で居心地の良い水準であり、直近四半期業績の悪化はあるものの、生成AIや半導体セクターの盛り上がり(市場での評価)を考えれば、現在の水準はフェアバリューとトントンといったところなのかもしれません。

図6 マクニカHD 月足 ヒストリカルPER(株探プレミアム)

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これらを踏まえると、株価が1月17日に付けた上場来高値の8745円を超えて更に上昇していくためには、現状以上の業績の成長見通しを示すことや、生成AI・半導体を巡る市場の期待の一段の高まりといったカタリストが必要になってくるのでは、と判断することも可能です。また、今後の見通しについては決算短信の記載からヒントを得られる場合もありますので、しっかりと確認してみるとよいでしょう。

今回ご紹介したのは予想ではなく、あくまで業績と株価の分析を行っていく上で一つの道筋を示したのにすぎません。検討すべき項目はまだ多く、それによって取り得る対応も分岐していきます。しかし、このように決算内容と株価を分析することで、売買戦略をどう立てていくべきなのかが次第に明確になっていきます。発表された決算をじっくり読み込むことで、これから株価が上がりそうなお宝銘柄を発見することができるかもしれません。一年に数回訪れる決算発表シーズンを、大きなチャンスと捉えて乗り切ってください!

 

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