春爛漫「外食関連」に開花宣言、満額賃上げ「プチ贅沢」の追い風強力 <株探トップ特集>

特集
2024年3月25日 19時30分

―33年ぶりの5%超え、「すし」「焼肉」「フグ」を突破口にデフレ脱却待ったなし―

今年の春季労使交渉(春闘)では、異例の「満額回答」が相次ぎ、実質賃金上昇への期待が高まっている。なかには、組合側の要求を上回る回答も散見されており、デフレ脱却からインフレへの道筋が見え始めている。大手企業の話とはいえ、予想以上の賃上げは消費意欲の向上に一役買いそうだ。ただ、物価の上昇などもあり、そうはたやすく財布のひもは緩みそうにもないが、それでも身近で“プチ贅沢”ともいえる外食産業への波及効果は期待できそうだ。焼肉、すし、そしてフグ、ささやかな贅沢需要の増加で期待が高まる 外食関連株を探った。

●呪縛脱却の正念場

長らく大幅な賃上げとは縁のなかった日本だが、15日に連合が公表した2024年春闘の第1回集計結果で、定期昇給を含めた賃上げ率が5.28%となり、1991年以来となる実に33年ぶりの5%超えとなった。この結果を受け、日本銀行はマイナス金利解除に踏み切ったことで、「異次元の金融緩和」からの政策大転換となった。22日に公表された、第2回集計でも賃上げ率は5.25%と前回とほぼ同水準となり、中小企業も4.50%の上昇をみせている。

賃金アップが思惑通りに消費を刺激するかは今後答えが出るが、「日経平均株価の上昇よりも、消費にとっては実質賃金がアップする方が重要だ」(大手百貨店)という見方もあるだけに、賃上げ効果の出現が待望されるところだ。日経平均が史上最高値を更新するなかでの満額回答相次ぐ春闘、そして日銀の政策転換となったが、このまま経済の好循環が続けば、本格的な景気回復へとつながることへの期待は大きい。日経平均はバブル超えとなったが、ここがデフレの呪縛から抜け出せるかどうかの正念場と言えそうだ。

●「もちろん好影響につながる」

こうしたなか、物価高の影響により消費マインドが悪化していることに加え、長期低迷を続けた日本経済であるだけに、疑心暗鬼も加わり庶民の財布のひもは、なかなか簡単には緩まないのが現実だ。ただ、高額消費は手控えるにしても、せめての贅沢とばかりに少々値の張る飲食店へと足を運ぶ可能性は高く、外食産業にとっては強い追い風になることも予想される。大手飲食チェーンでは「もう少し様子を見る必要はある」と慎重な姿勢は崩さないものの、「すぐにではないが、もちろん好影響につながる」とみており、ここからの賃上げ効果に期待を寄せる。もちろん人件費の高騰は飲食店にとっても重荷だが、それを上回る恩恵を享受する可能性があるというわけだ。

外食関連株は、コロナ禍からのリオープン(経済再開)、そしてインバウンド需要の復活で業績急回復をみせ、株価も好調に推移しているものが多い。一方で、原材料価格や光熱費の高騰に加え人手不足などが足かせとなり、業績回復が思うように進まなかった企業も少なくなかった。ただ、こうした銘柄もようやく業績回復の足取りを強め始めている。日経平均が4万円の大台に乗せるなか、出遅れ感漂う外食関連株に注目した。

●F&LCに出遅れ感、物語コーポにはリバウンド期待

回転ずしチェーンでは、くら寿司 <2695> [東証P]が高値圏を舞っており投資家の注目を集めているが、こうしたなか「スシロー」を展開するFOOD & LIFE COMPANIES <3563> [東証P]には出遅れ感が漂う。業績は回復途上だが、24年9月期第1四半期(10~12月)の連結営業利益は前年同期比3.9倍となる61億2300万円に急拡大し、通期計画の115億円に対する進捗率は53%に達している。海外スシロー事業で中国を中心に客足が落ち込むものの、主力の国内スシロー事業が好調で全体業績を大きく押し上げている。株価は、昨年後半に底値圏を脱し上値指向を継続しているが、戻りはいまひとつ鈍い。ただ、業績回復期待を背景にここからの展開には目を配っておきたい。

プチ贅沢の代名詞といえば、 焼肉が挙げられるだろう。焼肉チェーンの代表格に成長したと言っても過言ではないのが物語コーポレーション <3097> [東証P]だ。食べ放題「焼肉きんぐ」が主力だが、「丸源ラーメン」も人気化しており収益に貢献している。24年6月期上期(7~12月)の連結営業利益は前年同期比20.8%増の42億1000万円となり、通期計画の82億7000万円に対する進捗率は51%と順調に推移。株価は2月9日につけた5440円を境に大きく調整し4300円台まで売り込まれたが、ここにきては調整一巡感からのリバウンド期待が意識される局面にある。

●高値奪回にらむ木曽路

木曽路 <8160> [東証P]は、しゃぶしゃぶ・日本料理の「木曽路」を主力とするが、肉を極めた特選和牛「大将軍」、国産牛焼肉食べ放題「くいどん」を関東・中部地区で展開しており、こちらも好調だ。同社では、焼肉部門を第2の柱として位置付け強化しており、経営資源の集中を図っている。中部地区では「じゃんじゃん亭」から「くいどん」への業態転換を行い、営業体制の再構築を進めている。同社は2月13日、24年3月期の連結業績予想について、営業利益を16億円から20億円(前期は5億8100万円の赤字)へ上方修正。出店費用が想定を下回ったことに加え、人件費のコントロール、原価低減などが奏功した。株価は、2月29日に2761円まで買われ昨年来高値を更新。その後は上昇一服も、高値圏で頑強展開となっており注目が怠れない。

●銚子丸は千客万来!

「グルメ回転寿司」を標榜する銚子丸 <3075> [東証S]は、他店とは一味も二味も違う品揃えで好評だ。回転ずしとしては少々高めの価格帯だが、鮮度を追求したその味は顧客ニーズを捉えている。24年5月期は単独営業利益段階で前期比2倍となる13億6700万円を計画し、最高益更新を予想する。イートイン需要の急回復に加え、価格改定が顧客に受け入れられたことが寄与した格好だ。13日には、豊洲市場に隣接する話題の複合施設「豊洲 千客万来」に、新業態「鮨Yasuke豊洲千客万来店」をオープンしており攻勢の手も緩めない。株価は、新値街道をひた走る展開。28日に、第3四半期決算の発表を控えている。

●「焼肉や漫遊亭」で攻勢強めるJMHD

JMホールディングス <3539> [東証P]は、大型商業施設内店舗での「ジャパンミート生鮮館」、業務用スーパー「肉のハナマサ」などを展開。外食事業では得意とする精肉の調達力、ノウハウを生かし、「焼肉や漫遊亭」で成長ロードを快走する。昨年11月に宇都宮店をオープンしたが、今月18日には7月に東京都墨田区に焼肉や漫遊亭押上店(仮称)を新規出店することを発表、出店攻勢を強めている(第2四半期末時点で外食事業店舗数は18店舗)。24年7月期上期(8~1月)の連結営業利益は、前年同期比30.6%増の52億3200万円となり、通期計画77億円に対する進捗率は68%に達した。スーパーマーケット事業及び、外食事業の既存店売上高が順調に推移した。株価は、15日に2690円まで買われ昨年来高値を更新後に一服も、2600円を挟みもみ合っている。

●梅の花に関門海、変わり種で青山商

湯葉、豆腐の高級店を展開する梅の花 <7604> [東証S]は15日、取引時間中に24年4月期連結業績予想の修正を発表。売上高は引き下げた一方、営業利益を5億9100万円から前期比8.1倍となる7億2300万円に引き上げ、コロナ禍で落ち込んだ業績の回復を着実に進めている。また、最終利益を3億2200万円から7億6400万円(前期4億4000万円の赤字)へ大幅に引き上げており、17期ぶりに過去最高益を更新する見通しだ。

関門海 <3372> [東証S]はフグ料理専門店「玄品」を主力にチェーン展開しており、業績は回復基調を見せている。24年3月期第3四半期累計(4~12月)の連結営業損益は1億8400万円の黒字(前年同期は8700万円の赤字)に浮上。「玄品」などの直営店舗では、台湾、韓国などのアジア地域のほか欧米各国を含めたインバウンド旅行客が大幅に増加した。2月14日に発表した株主優待制度の一部内容変更をキッカケに株価は大きく売られたが、これも織り込みが進んだことで、ここからの株価浮上に期待がかかる場面だ。

光フードサービス <138A> [東証G]にも目を配っておきたい。2月28日にグロース市場に上場したニューフェースで、名古屋を拠点とし立ち呑み居酒屋を中心に飲食店を展開するが、21年には「焼肉デラックス」を開店し焼肉業態にも進出。焼肉の食べ放題をコンセプトに、特急レーンで商品を客に運ぶ仕組みだ。新しいサービスモデル「焼肉デラックス」の事業確立を目指し、育成することで、アルコール業態では狙えなかった、新しい層をターゲットとしたビジネス展開を目指す。株価は、上場2日目に6850円まで買われたが、現在は4500円近辺でもみ合っており、今後の展開に期待も。

変わったところでは、青山商事 <8219> [東証P]にも注目。ご承知の通り紳士服大手だが、実はグループ企業がフランチャイジー事業で、「焼肉きんぐ」40店舗、寿司・しゃぶしゃぶの「ゆず庵」を13店舗展開(23年12月末現在)しているのだ。特に「焼肉きんぐ」は好調に推移しており、業績に貢献している。また、両店ともに、「洋服の青山」などの店舗駐車場の余剰地を有効活用している点も見逃せない。業績はコロナ禍から順調に回復をみせており、株価も上値指向を続けている。21日には、1935円まで買われ昨年来高値を更新、2000円大台を射程に捉えている。

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