緊迫化する中東情勢、イスラエル反撃なら原油暴騰も <コモディティ特集>

特集
2024年4月17日 13時30分

シリアのイラン大使館を突如空爆したイスラエルに対して、イランが報復攻撃を実施した。国際法を無視して空爆したイスラエルに、イランは国際法に則って自衛権を行使した。イスラエル南部のラモン空軍基地や中部のネバティム空軍基地が報復攻撃の主な標的となった。イスラエルの対空防衛システム「アイアンドーム」はイランのミサイルやドローンによる攻撃をすべて防ぎきれていない。迎撃が困難な超音速ミサイルが防衛網を突破した可能性が高い。

●中東緊迫化を望まないイラン

超音速ミサイルが投入されたにしても、イスラエルとイランの双方が認めているように、イランは限定的な軍事力しか行使しなかった。イスラエルに発射されたのはほとんどが迎撃可能なドローンや巡航ミサイルであったほか、米国や中東の近隣各国などに対して攻撃を開始する72時間前には通知されていたようだ。撃ち落とすことが可能なミサイルを事前に通知しつつ攻撃を実施したイランの意図は明らかである。米国や英国、フランス、ヨルダン部隊にとって、迎撃は容易だっただろう。イスラエルに対して報復攻撃を実施しなければ、戦争を挑発するようにイスラエルがまた攻撃してくる可能性が高く、自衛のためイランは報復を辞さないことを、行動をもって示す必要があった。自国の大使館が破壊されて反撃しない国など存在しない。

イランは中東情勢のさらなる緊迫化を望んでいない。イスラエルが反撃してくるようならば、イランは受けて立つ構えだが、そうでなければ今月のイラン大使館空爆をきっかけに高まった緊張感は後退するだろう。米国や欧州連合(EU)はイランとイスラエルの武力衝突の本格化だけは避けたいらしく、これまでになくイスラエルに自制を要求しているように見える。バイデン米大統領は、イスラエルのネタニヤフ首相に対イランの報復攻撃に米国は参加しないと伝えた。

●イランとの戦争を欲するイスラエルと、巻き込まれる米国

ただ、ネタニヤフ政権は反撃を準備しているようであり、予断を許さない。イスラエルはイランとの戦争を欲しているが故にシリアのイラン大使館を空爆したわけであり、武力衝突を開始する可能性が高い。米国が関与しないとしても、強引にでも引き込んでしまえばいい。国際的な非難を浴びつつも、イスラエルはパレスチナ自治区ガザで空爆を続けているうえ、難民が集中するガザ南部ラファへ地上侵攻する計画は撤回されておらず、主要国の助言をイスラエルが受け入れるとは思えない。

イスラエルがイランに対して反撃するには、米国などの軍事的支援がどうしても必要である。兵力や軍事力でイランは桁違いであり、イスラエルが単独でイランに歯向かうのは賢明ではない。ただ、世界がなにを危惧しようとも、イスラエルが戦いを始めてしまえば米国は支援しないわけにはいかない。イランの攻撃を受けるイスラエルを米国はほったらかしにはしない。バイデン米大統領の慎重な態度とは裏腹に、米国はイスラエルとともに軍事行動を開始するだろう。

イランとイスラエルの対立を背景とした緊迫感が後退すれば、原油高の流れに調整が入る可能性がある半面、中東事変は始まったばかりかもしれない。イランのミサイルからイスラエルを防衛した米国、英国、フランス、ヨルダンはイランの攻撃対象となっており、イスラエルがイランに反撃すれば中東全域へ戦火が広がるリスクがある。この場合、原油の暴騰は避けられないだろう。1バレル=200ドルでも、300ドルでも覚悟しておかなければならない。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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