生産主導で下支えの中国経済~海外販売好調のBYDに影響も【フィリップ証券】
■4月の購買担当者景気指数(PMI)が示す中国経済
中国共産党は4/30、中央政治局会議を開き、元々は2023年秋に開催予定で延期されていた「3中全会」を7月に開催すると決めた。3中全会は党大会の翌年に開き、中長期の主要な経済政策方針を決定することが多かった。不動産不況への対処方針が定まっていないことも開催が遅れている理由の1つとみられていた。開催が決まったということは、党指導部が不動産不況への対処方針を含む経済運営に対してようやく自信を深めてきたことの表れと見ることもできよう。
中国国家統計局が4/30に発表した4月の製造業および非製造業の購買担当者景気指数(PMI)を見ると、製造業PMIは50.4と前月比0.4ポイント低下も、2ヵ月連続で拡大・縮小の境目である50を上回った。生産が52.9(同0.7ポイント上昇)に対し、新規受注が同1.9ポイント低下(51.1)、海外需要の新規輸出受注が同0.7ポイント低下(50.6)と、需要に力強さを欠く中で生産が主導・先行して景気を下支えしている面も窺われ、近い将来に生産過多・供給過剰となる懸念は残る。他方、非製造業のうち建設業が同0.1ポイント上昇と勢いを保っている点は、好材料と言えそうだ。
■貿易摩擦による海外輸出への影響が懸念されるBYD
既に供給過剰分が海外輸出に向かう動きは広がり、欧州連合(EU)が中国政府から補助金を受けた中国製EV(電気自動車)が競争を阻害していないか調査するなど、貿易摩擦の動きもみられる。中国政府もEVなど新エネルギー車に買い替えた場合に1万元の補助金支給を始めるなど内需喚起に注力しているものの、効果が未知数の面も否定できないところだ。
中国自動車大手BYD[比亜迪](1211香港)が4/29発表した1-3月決算は、売上高が前年同期比4%増の1249億元、純利益が同11%増の45億元と堅調。値下げとともに海外販売台数が同2.5倍の約9万8000台と、輸出拡大も業績を牽引している。米テスラ<TSLA>との比較では、23年7-9月に同水準だったEV販売台数はテスラが24年1-3月に前四半期比で大きく減少に対し、BYDは順調に拡大。それでも株価の上値が重いのは、貿易摩擦などによる海外販売への影響が懸念されている面があろう。
当資料は、情報提供を目的としており、金融商品に係る売買を勧誘するものではありません。フィリップ証券は、レポートを提供している証券会社との契約に基づき対価を得る場合があります。当資料に記載されている内容は投資判断の参考として筆者の見解をお伝えするもので、内容の正確性、完全性を保証するものではありません。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。また、当資料の一部または全てを利用することにより生じたいかなる損失・損害についても責任を負いません。当資料の一切の権利はフィリップ証券株式会社に帰属しており、無断で複製、転送、転載を禁じます。
<日本証券業協会自主規制規則「アナリスト・レポートの取扱い等に関する規則 平14.1.25」に基づく告知事項>
・ 本レポートの作成者であるアナリストと対象会社との間に重大な利益相反関係はありません。
※フィリップ証券より提供されたレポートを掲載しています。
株探ニュース