ここまでの米国主要企業の1-3月決算を振り返っての考察【フィリップ証券】
■米国主要企業の1-3月決算発表を振り返る
米国主要企業の1-3月決算発表を少し振り返ってみたい。前半戦でひと際異彩を放ったのは電気自動車(EV)のテスラ<TSLA>だろう。2024年1-3月期は株価大幅下落でもおかしくない業績だったが、「陰極まれば陽に転ず」という言葉のとおり、相場の強弱・過熱感を示す「RSI(相対力指数)14日」が、30%以下が売られ過ぎとされる中で、4/22終値で20台前半まで下落した翌日の取引時間終了後の決算発表を受けて、株価は反転・大幅上昇した。
他方、業績の良かった動画配信のネットフリックス<NFLX>は、2025年から四半期ごとの会員数の開示を取りやめると表明したことが嫌気されて決算発表後に株価が下落。昨年10月以降の株価上昇トレンドが一服した。マド(空白の価格帯)を空けて上昇する直前の今年2月高値の500ドル近辺が押し目の目処となるのかどうか注目される。
4四半期連続で増収増益を発表したSNS大手のメタ・プラットフォームズ<META>も、設備投資が嵩むことが懸念されて25日安値が前日終値比で約16%安まで売られた。特にメタ・プラットフォームズは生成AI(人工知能)へ注力するためエヌビディア<NVDA>製GPU(画像処理半導体)を大量に購入しているとされ、設備投資が嵩むことは予想されていた面もあっただろう。ネットフリックスとの違いは、メタ社の株価が2022年10月以降の上昇トレンドが継続していた点である。上昇期間が長かった分だけ売り圧力も溜まりやすい面もあるだろう。ネットフリックスと同様に、マドを空けて上昇する直前の今年2月高値の400ドル近辺で押し目買いが入るのかどうかが注目される。
アルファベット<GOOGL>とマイクロソフト<MSFT>は好決算に対して株価は素直に上昇。アルファベットは初の配当実施と700億ドルの巨額自社株買いが好感された。株価150ドルを大きく超えたことは、21年11月~22年2月に付けた株価との「二番天井」懸念を払拭した点で意義があるだろう。4/30のアマゾン・ドット・コム<AMZN>、5/2のアップル<AAPL>の決算発表も含め、今後の大型ハイテク株の決算発表では巨額自社株買い発表の可能性を考慮すべきだろう。アップルは昨年5月に900億ドルの巨額自社株買いを発表していたなか1100億ドルと更に巨額の自社株買いを発表した。
生成AIと並ぶ株式市場の柱と期待が大きい肥満症治療薬に関し、4/30に発表された医薬品大手イーライ・リリー<LLY>の1-3月決算は、糖尿病薬「マンジャロ」と肥満症治療薬「ゼプバウンド」が業績を牽引。この分野で先行するデンマークのノボ・ノルディスク<NVO>も、糖尿病薬「オゼンピック」と肥満症治療薬「ウゴービ」が好調だったものの値下げを嫌気して株価は伸び悩んだ。
肥満症薬に関連するGLP-1受容体は食欲抑制作用があるとされる。スターバックス<SBUX>が13四半期ぶりの減収となったほか、マクドナルド<MCD>やコカ・コーラ<KO>も個人消費の陰りを示す動きが目立ったのはインフレ長期化と賃金上昇の遅れが主な要因とされるものの、肥満症薬の普及との関連性も今後は高まってくる可能性があるかもしれない。
■テスラのビジネスモデルに変化も
電気自動車のテスラが4/23発表の1-3月決算は、前年同期比で約4年ぶりの減収減益かつ世界販売台数減少となった。収益確保に苦しむ中で全世界の従業員10%削減、現行モデルと同じ製造ラインでの低価格新モデル開発に加え、イーロン・マスクCEOは8/8に「ロボタクシー」を発表すると述べるなど、構造改革およびビジネスモデル革新を模索中だ。
決算内容で注目すべき点として、エネルギー生成・貯蔵のエネルギー関連事業、およびサービス関連事業の構成比が上昇していることが挙げられる。2024年1-3月期では、エネルギー関連は売上高が前年同期比7%増で売上比率が7.7%(同1.1ポイント拡大)、サービスその他は売上高が同25%増で売上比率が10.7%(同2.8ポイント拡大)を占めている。
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