ここまでの米国主要企業の1-3月決算を振り返っての考察【フィリップ証券】

市況
2024年5月7日 19時19分

■米国主要企業の1-3月決算発表を振り返る

米国主要企業の1-3月決算発表を少し振り返ってみたい。前半戦でひと際異彩を放ったのは電気自動車(EV)のテスラ<TSLA>だろう。2024年1-3月期は株価大幅下落でもおかしくない業績だったが、「陰極まれば陽に転ず」という言葉のとおり、相場の強弱・過熱感を示す「RSI(相対力指数)14日」が、30%以下が売られ過ぎとされる中で、4/22終値で20台前半まで下落した翌日の取引時間終了後の決算発表を受けて、株価は反転・大幅上昇した。

他方、業績の良かった動画配信のネットフリックス<NFLX>は、2025年から四半期ごとの会員数の開示を取りやめると表明したことが嫌気されて決算発表後に株価が下落。昨年10月以降の株価上昇トレンドが一服した。マド(空白の価格帯)を空けて上昇する直前の今年2月高値の500ドル近辺が押し目の目処となるのかどうか注目される。

4四半期連続で増収増益を発表したSNS大手のメタ・プラットフォームズ<META>も、設備投資が嵩むことが懸念されて25日安値が前日終値比で約16%安まで売られた。特にメタ・プラットフォームズは生成AI(人工知能)へ注力するためエヌビディア<NVDA>製GPU(画像処理半導体)を大量に購入しているとされ、設備投資が嵩むことは予想されていた面もあっただろう。ネットフリックスとの違いは、メタ社の株価が2022年10月以降の上昇トレンドが継続していた点である。上昇期間が長かった分だけ売り圧力も溜まりやすい面もあるだろう。ネットフリックスと同様に、マドを空けて上昇する直前の今年2月高値の400ドル近辺で押し目買いが入るのかどうかが注目される。

アルファベット<GOOGL>とマイクロソフト<MSFT>は好決算に対して株価は素直に上昇。アルファベットは初の配当実施と700億ドルの巨額自社株買いが好感された。株価150ドルを大きく超えたことは、21年11月~22年2月に付けた株価との「二番天井」懸念を払拭した点で意義があるだろう。4/30のアマゾン・ドット・コム<AMZN>、5/2のアップル<AAPL>の決算発表も含め、今後の大型ハイテク株の決算発表では巨額自社株買い発表の可能性を考慮すべきだろう。アップルは昨年5月に900億ドルの巨額自社株買いを発表していたなか1100億ドルと更に巨額の自社株買いを発表した。

生成AIと並ぶ株式市場の柱と期待が大きい肥満症治療薬に関し、4/30に発表された医薬品大手イーライ・リリー<LLY>の1-3月決算は、糖尿病薬「マンジャロ」と肥満症治療薬「ゼプバウンド」が業績を牽引。この分野で先行するデンマークのノボ・ノルディスク<NVO>も、糖尿病薬「オゼンピック」と肥満症治療薬「ウゴービ」が好調だったものの値下げを嫌気して株価は伸び悩んだ。

肥満症薬に関連するGLP-1受容体は食欲抑制作用があるとされる。スターバックス<SBUX>が13四半期ぶりの減収となったほか、マクドナルド<MCD>やコカ・コーラ<KO>も個人消費の陰りを示す動きが目立ったのはインフレ長期化と賃金上昇の遅れが主な要因とされるものの、肥満症薬の普及との関連性も今後は高まってくる可能性があるかもしれない。

■テスラのビジネスモデルに変化も

電気自動車のテスラが4/23発表の1-3月決算は、前年同期比で約4年ぶりの減収減益かつ世界販売台数減少となった。収益確保に苦しむ中で全世界の従業員10%削減、現行モデルと同じ製造ラインでの低価格新モデル開発に加え、イーロン・マスクCEOは8/8に「ロボタクシー」を発表すると述べるなど、構造改革およびビジネスモデル革新を模索中だ。

決算内容で注目すべき点として、エネルギー生成・貯蔵のエネルギー関連事業、およびサービス関連事業の構成比が上昇していることが挙げられる。2024年1-3月期では、エネルギー関連は売上高が前年同期比7%増で売上比率が7.7%(同1.1ポイント拡大)、サービスその他は売上高が同25%増で売上比率が10.7%(同2.8ポイント拡大)を占めている。

【タイトル】

フィリップ証券
フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
(公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

【免責・注意事項】

当資料は、情報提供を目的としており、金融商品に係る売買を勧誘するものではありません。フィリップ証券は、レポートを提供している証券会社との契約に基づき対価を得る場合があります。当資料に記載されている内容は投資判断の参考として筆者の見解をお伝えするもので、内容の正確性、完全性を保証するものではありません。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。また、当資料の一部または全てを利用することにより生じたいかなる損失・損害についても責任を負いません。当資料の一切の権利はフィリップ証券株式会社に帰属しており、無断で複製、転送、転載を禁じます。

<日本証券業協会自主規制規則「アナリスト・レポートの取扱い等に関する規則 平14.1.25」に基づく告知事項>

・ 本レポートの作成者であるアナリストと対象会社との間に重大な利益相反関係はありません。


フィリップ証券より提供されたレポートを掲載しています。

株探ニュース

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

プレミアム会員限定コラム

お勧めコラム・特集

株探からのお知らせ

過去のお知らせを見る
株探プレミアムとは

日本株

米国株

PC版を表示
【当サイトで提供する情報について】
当サイト「株探(かぶたん)」で提供する情報は投資勧誘または投資に関する助言をすることを目的としておりません。
投資の決定は、ご自身の判断でなされますようお願いいたします。
当サイトにおけるデータは、東京証券取引所、大阪取引所、名古屋証券取引所、JPX総研、ジャパンネクスト証券、China Investment Information Services、CME Group Inc. 等からの情報の提供を受けております。
日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。
株探に掲載される株価チャートは、その銘柄の過去の株価推移を確認する用途で掲載しているものであり、その銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
決算を扱う記事における「サプライズ決算」とは、決算情報として注目に値するかという観点から、発表された決算のサプライズ度(当該会社の本決算か各四半期であるか、業績予想の修正か配当予想の修正であるか、及びそこで発表された決算結果ならびに当該会社が過去に公表した業績予想・配当予想との比較及び過去の決算との比較を数値化し判定)が高い銘柄であり、また「サプライズ順」はサプライズ度に基づいた順番で決算情報を掲載しているものであり、記事に掲載されている各銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.