生成AIの新たな柱「エッジAI」登場か【フィリップ証券】

市況
2024年5月27日 17時05分

米半導体大手エヌビディア<NVDA>の2-4月期決算および5-7月期見通しは市場期待を上回り、発表翌日は同社株価が前日終値比10%近い大幅高となった。ところが、ダウ工業株30種平均は強い景気指標に伴う利下げ期待後退を受けて同605ドルの大幅安。日経平均株価も24日は売りに押された。高水準の信用倍率(信用買い残の売り残に対する倍率)など「祭りのあと」といえる需給悪化などの背景もあり、エヌビディアから波及して生成AI(人工知能)関連の幅広い買いをもたらす相場の再来は期待薄も、生成AI相場は銘柄が厳選される展開の中で持続すると見込まれよう。

マイクロソフト<MSFT>が20日、生成AIの動作に最適化したパソコンを開発したと発表。データ処理が必要なAIを端末上で素早く動かす「エッジAI」が満を持して表に出てきそうだ。同パソコンは、スマホに強いクアルコム<QCOM>の技術が採用され、省電力性能に優れた、ソフトバンクグループ<9984>傘下の英アームホールディングス<ARM>の設計を使っている。エッジAIでは、電気機器を制御するための多くの機能が搭載された集積回路の電子部品である「マイコン」の重要性が高まりそうだ。ルネサスエレクトロニクス<6723>はマイコンで世界3位かつ首位に肉迫する。

他方、生成AIの活用がデータセンターか端末上かにかかわらず、半導体プロセスの微細化は必要不可欠なものだろう。半導体製造装置のEUV(極端紫外線)マスクブランクスの検査装置で独占的地位を占めるレーザーテック<6920>などの重要性が変わるものではないだろう。

関連銘柄

ディジタルメディアプロフェッショナル<3652>

・2002年設立。グラフィックスIPコアを開発してゲーム機器、自動車、モバイル通信機器等に組み込まれる半導体IPコアを半導体・最終製品メーカーに提供するほか、LSI製品の製造・販売を行う。

・5/14発表の2024/3通期は、売上高が前年同期比29.9%増の30.16億円、営業利益が同12倍の3.28億円。分野別売上高は、主力のアミューズメント分野が次世代画像処理半導体「RS1」量産出荷で同45%増の26.42億円と増収増益を牽引。セーフティ分野、ロボティクス分野、その他の分野は減収。

・2025/3通期会社計画は、売上高が前期比6.1%増の32億円、営業利益が同6.5%増の3.50億円、年間配当は無配予想。注力2分野の内、セーフティ分野は安全運転支援向けの継続課金(リカーリング)収益獲得、ロボティクス分野は物流自動化の鍵を握るピッキングロボット向けビジョンシステムが進展。同社が強みとする低消費電力IP(知的財産)活用の「エッジAI(人工知能)」が主戦場だろう。

AGC<5201> 

・1907年に旭硝子を創立。建築ガラス(アジア、欧米)、オートモーティブ(自動車用)、電子(ディスプレイ、電子部材)、化学品(エッシェンシャル、パフォーマンス)、ライフサイエンスの5事業を営む。

・5/8発表の2024/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比1.9%増の4987億円、営業利益が同29.5%減の241億円。EUV(極端紫外線)露光用フォトマスクブランクス等半導体関連が好調の電子は同18%増収・営業利益3.8倍と堅調も、建築ガラス(売上比率22%)が同8%減収・55%営業減益。

・通期会社計画は、売上高が前期比4.0%増の2兆1000億円、営業利益が同16.5%増の1500億円、年間配当が同横ばいの210円。生成AI(人工知能)および端末上でAI活用の「エッジAI」を支える半導体プロセス微細化に必要不可欠なEUV露光用フォトマスクブランクスの生産能力強化に加え、回路多層化の際に使う絶縁フィルム(味の素 <2802> がほぼ独占)参入・26~27年頃事業化も視野に入れる。

フィリップ証券
フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
(公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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