改正育児・介護休業法の成立と介護人材不足【フィリップ証券】
仕事と育児・介護との両立を支援する改正育児・介護休業法などが24日、参院本会議で可決し成立。家族の介護が必要となった社員に、介護休業や介護休暇などの制度を説明し、利用するかどうかの本人の意向を確認するようすべての企業に義務付けるものだ。
かねてから政府は、1947~1949年の生まれの「団塊の世代」すべてが75歳以上の後期高齢者となり医療・介護需要が爆増するおそれがあるとして、2025年を社会保障にとって最大の制度危機の年と位置付け、医療・介護サービスの提供体制と財源調達を滞らせないよう警戒してきた。
厚生労働省研究班が8日に発表した推計によれば、認知症患者は2030年に22年から80万人増加し523万人にのぼる見通し。経済産業省は、仕事と介護の両立が困難な人が増えると経済的な損失が年9兆円超に上ると試算している。介護職員の賃上げ促進を打ち出すも人材不足は解消の見込みが立たない。厚労省は25年度にも、訪問介護サービスで在留資格が「特定技能」の外国人が働けるようにする方針を打ち出している。
介護人材派遣企業への需要が高まりそうなほか、介護DX(デジタル変革)への取り組みが進む企業も注目されよう。
関連銘柄
エス・エム・エス<2175>
・2003年設立の介護・医療業界向け人材紹介サービス最大手。主に事業者向けキャリア関連事業の「キャリア分野」、介護事業者向け経営支援プラットフォーム提供の「介護事業者分野」などを営む。
・4/26発表の2024/3通期は、売上高が前期比18.2%増の539億円、営業利益が同13.6%増の82億円。キャリア分野は介護(売上比率30%)が同29%増収、医療(同:30%)が10%増収。介護事業者向け(同:18%)が17%増収、海外分野(同:17%)が15%増収、事業開発分野が25%増収と堅調。
・2025/3通期会社計画は、売上高が前期比21.7%増の656億円、営業利益が同10.0%増の90.96億円、年間配当は未定(前期20円)。物流や建設業界と同様に、医療業界の「働き方改革関連法」適用に係る「医療の2024年問題」に続き「団塊世代」(1947~1949年生まれ)が後期高齢者となり全人口に対する比率が18%に達する「介護人材不足の2025年問題」と高齢化社会の追い風が加速しよう。
パラマウントベッドホールディングス<7817>
・1950年に前身の木村寝台工業を設立。医療福祉用ベッド、マットレス、病室用家具、医療用器具備品の製造・販売、メンテナンス、レンタルを行う。医療・介護用ベッドで国内シェア7割を占める。
・5/13発表の2024/3通期は、売上高が前期比7.1%減の1060億円、営業利益が同2.7%増の138億円。事業別売上高は、医療事業が国内のリカーリング(継続)型ビジネス拡大を受けて同9.1%増の406億円、介護事業が介護施設での見守り用途の体動センサー拡販等もあり同6.7%増の613億円。
・2025/3通期会社計画は、売上高が前期比5.6%増の1120億円、営業利益が同1.3%増の140億円。年間配当は「DOE(純資産配当率)4.0%および配当性向50%目安」への配当方針変更を受けて同32円増配の97円。要介護者急増懸念の「2025年問題」で介護DX化が急務とされるなか、同社は「眠りSCAN」検知情報をクラウド上で管理する見守り支援システム「眠りCONNECT」を昨年10月提供開始。
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