スマホからアプリが無くなる日【フィリップ証券】

市況
2024年6月28日 13時59分

遠くない将来にスマートフォンからアプリが消えるのか――。コンピューターが自然な文章や会話を生み出す生成AI(人工知能)は、オープンAI社が2022年11月に「CharGPT」をリリースして以降世界を席巻している。その影響は、スマホがさまざまな役割を果たすために欠かせない「アプリ」の存在を脅かしている。

高性能AIを搭載したスマホは、ユーザーの行動を学習して望む行動を実行できるようにアップデートされる。ユーザーはアプリを探す必要もなく、やりたいことをAIに伝えるだけで済むようになるという。既に展示会レベルでは、そうした機種が披露されており、新時代はすぐそこまで迫ってきているのかもしれない。

半導体大手クアルコム<QCOM>は、スマホやノートPC(パソコン)で大規模言語モデル(LLM)を実行できる新製品を開発したほか、IoT(モノのインターネット)端末向けにも独自LLMの提供を始めている。さらに、AIをデバイスに直接搭載して情報を処理する「エッジAI」のプラットフォーマーとしても存在感を示し始めた。

エッジAIには消費電力の面で課題が残り、これを解決するためには半導体素材を従来のシリコンからSiC(炭化ケイ素)など新素材に置き換える必要がある。スマホだけでなく、自動車、そしてさまざまなデバイスに係るIoTでも同様にパワー半導体の需要が高まりそうだ。

関連銘柄

グローバルファウンドリーズ<GFS> 市場:NASDAQ・・・2024/8/8に2024/12期2Q(4-6月期)の決算発表を予定

・半導体のアドバンスト・マイクロ・デバイセズ<AMD>から分離独立して2009年設立の半導体受託製造(ファウンドリ)企業。ファウンドリで世界3位。筆頭株主はアブダビ首長国政府系の投資機関。

・5/7発表の2024/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比15.9%減の15.49億USD(会社予想15.0-15.4億USD)、非IFRSの調整後EPSが同40.4%減の0.31USD(同:0.18-0.28USD)。調整後粗利益率も同2.4ポイント低下。業界全体の在庫調整から立ち上がりを受け売上・利益とも会社予想を上回った。

・2024/12期2Q(4-6月)会社計画は、売上高が前年同期比14-11%減の15.90-16.40億USD、調整後EPSが同55-36%減の0.24-0.34USD。今年2月、国内での半導体製造強化に関する「CHIPS法」に基づき半導体製造施設の新設・拡張・現代化のため商務省との間で約15億ドルの助成金に係る予備的覚書に署名。同社は欧州でも仏政府支援の下、STマイクロエレクトロニクスと共同で工場建設中。

マイクロチップ・テクノロジー<MCHP> 市場:NASDAQ・・・2024/8/2に2025/3期1Q(4-6月期)の決算発表を予定

・1989年設立の半導体製品メーカー。様々な制御アプリケーションに組み込む、幅広い半導体製品を取り扱う。産業、自動車、消費財、航空宇宙・防衛他各分野で世界計12万件超の顧客を擁する。

・5/6発表の2024/3期4Q(1-3月)は、売上高が前年同期比40.6%減の13.25億USD(会社予想12.25‐14.25億USD)、非GAAPの調整後EPSが同65.2%減の0.57USD(同:0.46-0.68USD)。顧客の短期的在庫調整の影響を受けフリーキャッシュフローも同30%減(7.93億USD)も、四半期配当は同25.7%増配。

・2025/3期1Q(4-6月)会社計画は、売上高が前年同期比47-45%減の12.2-12.6億USD、調整後EPSが同71-66%減の0.48-0.56USD。次期ローンチが予想されるアップル<AAPI>の生成AI対応iPhoneをはじめ「エッジAI」では同社強みのマイクロコントローラ(電子機器の制御用に特化された半導体チップ)需要増が期待される。また、懸案の財務も、3月末負債比率が前期末比10.0ポイント低下の37.8%へ改善。

オン・セミコンダクター<ON> 市場:NYSE・・・2024/7/31に2024/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定

・1999年設立の半導体ソリューション企業。電力ソリューション(PSG)、先端ソリューション(ASG)、インテリジェント・センシング(ISG)の3事業グループを営む。センサーほか包括的ポートフォリオを提供。

・4/29発表の2024/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比5.0%減の18.62億USD(会社予想18-19億USD)、非GAAPの調整後EPSが同9.2%減の1.08USD(同:0.98-1.10USD)。エネルギー需要に伴うパワー半導体需要増を受けてPSGが同2%増収と堅調も、ISGが同18%減収、ASGが同6%減収。

・2024/12期2Q(4-6月)会社計画は、売上高が前年同期比20-15%減の16.8-17.8億USD、調整後EPSが同35-26%減の0.86-0.98USD。同社は電力制御に係るパワー半導体に関しSiC半導体事業の垂直統合化を推し進めており、SiC結晶から同結晶を切り出して作るウエハー、ウエハー上に作製するパワー素子、同素子をパッケージに収めたパワーモジュールまで自社で手掛ける。

STマイクロエレクトロニクス<STM> 市場:NYSE・・・2024/7/26に2024/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定

・スイス本拠の総合半導体メーカー。自動車・ディスクリート(ADG)、アナログ・微小電気機械システム・センサー(AMS)、マイクロコントローラー・デジタル集積回路(MDG)の3事業セグメントを営む。

・4/25発表の2024/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比18.4%減の34.65億USD(会社予想34.5~37.5億USD)、粗利益率が同8.0ポイント低下の41.7%(同:42.3%)、EPSが同50.9%減の0.54USD。ADG事業が同9.8%、AMS事業が同13.1%、MDG事業が同26.3%と、3事業がそれぞれ減収だった。

・2024/12期2Q(4-6月)会社計画は、前年同期比29-23%減の30.8-33.2億USD、粗利益率が同11-7ポイント低下の38-42%。来るべき、デバイス(端末)にAIが実装される「エッジAI」の時代には、半導体素材が従来のシリコンからSiCパワー半導体のような電気効率の優れた素材が高まる見込み。同社はSiC半導体で世界シェア首位、予想PER(株価収益率)も19.0倍と割安。

フィリップ証券
フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
(公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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