概要・株価
チャート
ニュース
かぶたん ロゴ
PR

相互関税一時停止~日本の命運をかけた日米貿易交渉へ【フィリップ証券】

市況
2025年4月16日 15時28分

トランプ米大統領は現地4/9、発動したばかりの「相互関税」について国・地域ごとに設定した上乗せ部分を90日間停止すると発表。一方、中国には追加関税を145%に引き上げる(現地4/10現在)と発表し、米中両国の間の応酬はさらに激しさを増している。

相互関税の一時停止決定の背景には、時間外取引で米国債が日本時間の4/9の午後からが急激に売られた。ヘッジファンドが金融機関からの追い証請求に対応するため換金売りを行ったとする説、中国が米国による相互関税への対抗措置として保有米国債を売却したとする説などが市場では流れていたようだ。

日本の超長期国債も米国債と同様に大幅に売られていたことから、日本の機関投資家による売りの可能性が高いと現時点ではみられている。銀行の自己資本比率などに関する国際統一基準である「バーゼル規制」に引っ掛かって強制決済を迫られたというのが合理的な説明のように思われる。

米国債が鍵となったことから、トランプ米政権内で、トランプ氏の側近で関税引上げに関する強硬派のナバロ大統領上級顧問を抑え、穏健派と見られるベッセント財務長官の影響力が今後強まることが考えられる。世界の株式市場には好材料だろう。

トランプ氏は、米政府との協議を早々に申し入れてきた日本に優先交渉権を付与し、交渉責任者にベッセント氏とグリア通商代表部(USTR)代表を起用。貿易不均衡問題を解決する観点からは、円安を牽制し円高ドル安を容認する姿勢を示してくることが予想される。これは輸出企業および日経平均株価にとって逆風となる面があるものの、内需型の企業へ追い風だろう。日銀の利上げについては円高容認の観点からは支持すると考えられるが、米国債利回りの上昇に波及しないよう緩やかな利上げを求めてくるのではないだろうか。それは日本株全体にとってプラスだろう。

グリア氏は日本との貿易交渉で農業分野を中心に市場開放を求める考えを示している。コメや野菜の値上がりが飲食チェーンなどにとって業績悪化の要因となるなか、円高に加えて安い輸入食材が増えてくれば「円高還元セール」も含めて日本の消費者にメリットが及ぶほか、小売・消費関連企業にとっても追い風だろう。ただし、今夏に参議院選挙を控え、政権与党としても票を失いたくない事情がある。また、4/8に米連邦議会で承認されたコルビー国防次官は、日本に対して防衛費を国内総生産(GDP)比3%まで早期に引き上げるよう要求する構えだ。アジアの同盟国は「米国が守るべき存在」ではなく、米国と同等に「負担を負うべき存在」とみており、防衛関連銘柄への追い風が加速しそうだ。

■08年以降相場とドルコスト平均法~「ワーストシナリオ」におけるリスク低減

米FRB(連邦準備制度理事会)は2024年、9/18に政策金利をそれまでのピーク据え置きから0.5ポイント引き下げ、11月と12月のFOMC(連邦公開市場委員会)でそれぞれ0.25ポイントずつ利下げを実施。2007年も同じ9/18、1年以上のピーク据え置き期間後0.5ポイント利下げを実施し、その後年内に0.25ポイントずつ2回の利下げを実施した。2024年と2007年の経済・金融環境が類似していたならば、リーマンショックが発生した2008年と2025年も同様に類似する面があって不思議ではない。最悪の事態を想定しつつ、投資戦略の選択肢を用意しておくことも重要だろう。価格変動商品を定期的に定額で購入する「ドルコスト平均法」を活用し、時間分散によってリスクを低減することも検討の余地があるだろう。

【タイトル】

参考銘柄

参天製薬<4536>

・1890年に田口謙吉が大阪市に田口参天堂を創業。1899年に眼科薬「大学目薬」を発売し発展。医療用医薬品と一般用医薬品の二事業を営む。眼科用医薬品で国内最大手。「サンテ」が看板商品。

・2/6発表の2025/3期9M(4-12月)は、売上収益が前年同期比横ばいの2227億円、コア営業利益が同11.4%減の436億円。日本は薬価改定やジアクスLX点眼液の自主回収が響いて同5%減収(1197億円)だったが、海外は為替の円安を受けて増収。特に、欧州・中東・アフリカが同14.8%増収。

・通期会社計画は、売上収益が前期比横ばいの3020億円、コア営業利益が同12.4%減の550億円。年間配当は同3円増配の36円(従来計画34円)へ上方修正。4/4、開放隅角緑内障または高眼圧症の治療薬「タプコム」が中国の国家薬品監督局(NMPA)から製造承認を取得したと発表。中国は緑内障患者数が最多であり、眼科医・インフラが不足する中、2020年時点の患者数は約2200万人。

キヤノン電子<7739>

・1954年設立。キヤノン<7751>の製造子会社。シャッター・絞りユニット等の「コンポーネント」、スキャナーやハンディターミナル等の「電子情報機器」、および宇宙関連を含む「その他」の事業を営む。

・1/29発表の2024/12通期は、売上高が前期比4.5%増の1006億円、営業利益が同13.7%増の103億円。売上比率56%のコンポーネントは6%増収、営業利益が4%増。売上比率28%の電子情報機器は4%増収、営業利益が28%減。その他は3%減収、営業利益が7億円となり、黒字転換した。

・2025/12通期会社計画は、売上高が前期比4.3%増の1050億円、営業利益が同5.8%増の110億円、年間配当は未定(2024/12通期実績は10円増配の70円)。同社は2024年3月に防衛省と宇宙領域把握能力向上のための実証事業である多軌道観測実証衛星の製造・試験の契約を締結するなど、人工衛星で防衛省向け受注実績を積み増している。防衛予算拡大が追い風だろう。

平和不動産リート投資法人<8966>

・平和不動産<8803>をスポンサーとする総合型REIT。東京都区部の住宅とオフィスを主要な投資対象とし、用途別で住宅が約49%、オフィスが約48%(2025年3月末)。継続的な物件入替えに特徴。

・1/17発表の2024/11期(6-11月)は、営業収益が前期(2024/5期)比3.5%増の90億円、営業利益が同4.7%増の46億円、1口当たり分配金(利益超過分配金含まず)が同7.7%増の3640円。期中平均稼働率が97.5%、運用資産合計が127物件(前期比横ばい)、取得価格2372億円(同2.7%増)。

・4/10に2025/5期(12-5月)および2025/11期会社計画をそれぞれ上方修正。2025/5期は営業収益を前期(2024/11期)比12.3%増の101億円(従来計画92億円)、営業利益を同18.9%増55億円(同48億円)、1口当たり分配金を同210円増配の3850円(同3750円)とした。1/1基準の公示地価でも首都圏の不動産価格上昇が示された。保有ポートフォリオの売却による分配金増加が見込まれる。

ニトリホールディングス<9843>

・1972年設立。家具・インテリア用品の企画・販売などを行う。商品企画や原材料調達から製造・販売にとどまらず物流機能に至るまで全体としてプロデュースする「製造物流IT小売業」を標榜する。

・2/12発表の2025/3期9M(4-12月)は、売上高が前年同期比6.2%増の7049億円、営業利益が同1.1%増の989億円。ニトリと島忠の2024年12月末合計店舗数が同年3月末比37店純増の1048店舗。円安進行による輸入コスト増に対し、物流内製化や経費抑制も、営業利益率は0.7ポイント悪化。

・通期会社計画は、売上高が前期比7.2%増の9600億円、営業利益が同1.5%増の1296億円、年間配当が同5円増配の152円。為替(円安)の影響を受けにくい海外店舗出店加速のほか、自社車輛による国内コンテナ輸送網や自社物流網拡大、配送最適化技術によるラストワンマイル配送DX化による物流コスト削減に取り組む。トランプ米政権は貿易不均衡是正のため円高を推進する可能性。

※執筆日 2025年4月11日

フィリップ証券
フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
(公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

【免責・注意事項】
当資料は、情報提供を目的としており、金融商品に係る売買を勧誘するものではありません。フィリップ証券は、レポートを提供している証券会社との契約に基づき対価を得る場合があります。当資料に記載されている内容は投資判断の参考として筆者の見解をお伝えするもので、内容の正確性、完全性を保証するものではありません。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。また、当資料の一部または全てを利用することにより生じたいかなる損失・損害についても責任を負いません。当資料の一切の権利はフィリップ証券株式会社に帰属しており、無断で複製、転送、転載を禁じます。
<日本証券業協会自主規制規則「アナリスト・レポートの取扱い等に関する規則 平14.1.25」に基づく告知事項>

・ 本レポートの作成者であるアナリストと対象会社との間に重大な利益相反関係はありません。



フィリップ証券より提供されたレポートを掲載しています。

株探ニュース

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

プレミアム会員限定コラム

お勧めコラム・特集