日本株は良好な環境~立ちはだかる「米国売り」再燃リスク【フィリップ証券】
日本株を取り巻く環境が好転しつつある。日経平均株価の終値は5/29に200日移動平均線を上回った。これは2/21以来である。海外投資家は5/19-23の週で8週間連続の現物での買い越し、先物と現物の合計でも6週間連続で買い越しとなった。
企業は一般的に株主総会で剰余金の配当を決議し、総会後に配当金を支払うが、近年は総会決議を待たずに取締役会決議のみで配当金を支払う企業が増えている。東証株価指数(TOPIX)構成銘柄が6月末までに支払う配当の総額は約10兆3200億円と試算され、ピークの6/30には1日で1兆8000億円が支払われる見通しだ。さらに、NTT<9432>が子会社のNTTデータグループ<9613>に対して5/9から6/19まで行う株式公開買付(TOB)は総額で2兆3700億円に上る。6月下旬になれば、夏の賞与(ボーナス)が投資資金として株式市場に流入することも期待される。ここから1ヵ月は日本株市場にとって最も需給が良好な時期だと言えるだろう。
経済財政諮問会議から「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」が6月上旬に発表される。方針の閣議決定は6/15-17のカナダG7首脳会議での石破・トランプ会談の前の6/13と見込まれる。石破首相は、日米関税交渉を決着させた上で、7月中旬予定の参議院選挙を控えて野党と「骨太の方針」を巡って政策論戦に持ち込みたいところだろう。「地方創生2.0」や「防災・減災・国土強靭化」などの投資テーマに当てはまる銘柄が物色されやすくなり、国策の面からも6月は日本株に追い風が吹くと考えられる。
その反面、良好な投資環境が期待されるということは、その反動で「高値掴み」となるリスクを負う面もある。高値を追いかける必要はなく、トランプ関税やグローバル景気の短期的な動向に左右されにくい、持続的な成長見通しを持てる銘柄の選択が望まれる。
また、米国市場の環境は必ずしも良好ではない。米国際貿易裁判所が5/28、トランプ関税のうち、ほぼ全ての国・地域を対象とした相互関税と違法薬物対策を理由とした追加関税を「違憲で無効」と判断して差し止めを命じた。それ自体は好材料だが、控訴によって判断が覆されたり、代替手段によってより確実に関税が導入される可能性など、不確実性は高まっている。それに加えて、連邦議会上院で審議中の税制・歳出法案が成立すれば、現在36.2兆ドルの連邦債務が今後10年で3.8兆ドル程度増加すると見込まれている。米国債の信用格付けは、デフォルトリスクを売買するデリバティブ商品であるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場では、楽観できない状況だ。4月のような「米国債売り・米ドル売り」が再燃するリスクは残っていると見るべきだろう。
■実質消費ピークは消費税率5%時代「大連立」で消費税率引き下げの可能性
日本経済の過去20年を振り返ると、名目GDPから物価変動による増減分を除いた実質ベース国民総生産(GDP)は2024年が557.4兆円と、低成長ではあるものの過去最高を更新した。一方で、実質GDPの約53%を占める実質民間消費支出は、2024年が297.6兆円と過去のピークだった2013年の水準を2%近く下回っている。消費税率が5%だった時代と比べ、2014年4月以降に消費税を8%へ引き上げてから実質民間最終消費支出の伸び悩んでいる傾向が見られる。
参院選に向けて立憲民主党は一時的な食料品の消費税ゼロを、国民民主党は時限的に消費税率を一律5%にすることを重点政策とする。政府・自民党は消費税減税へ慎重姿勢だが、「大連立」が実現すれば変わる可能性もあるだろう。

参考銘柄
日鉄ソリューションズ<2327>
・1980年に現・日本製鉄<5401>を親会社として設立。日本製鉄グループのシステムインテグレーター。売上高の約8割は親会社以外の企業・官公庁向けシステム開発・コンサルティングが占める。
・4/28発表の2025/3通期は、売上収益が前期比8.9%増の3383億円、営業利益が同10.0%増の384億円。事業別売上収益は、産業・鉄鋼、流通・プラットフォーマー、金融から構成されるビジネス・ソリューションが同9.9%増の2506億円、コンサルティング・デジタルサービスが同6.2%増の876億円。
・2026/3通期会社計画は、売上収益が前期比5.5%増の3570億円、営業利益が同11.7%増の430億円、年間配当が同6円増配の80円。日本製鉄の米鉄鋼大手USスチール買収計画についてトランプ米大統領は承認することを示唆する一方、取締役や株主総会の決議に拒否権を持つ「黄金株」を米政府が保有する案も浮上。USスチールを傘下とする上でシステムの果たす役割は重要だろう。
湖北工業<6524>
・1959年に現在の滋賀県長浜市高月町の旧高月町役場庁舎にて設立。アルミ電解コンデンサ用リード端子を扱う「リード端子事業」、光ファイバ通信網用部品を扱う「光部品・デバイス事業」を展開。
・5/12発表の2025/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比4.3%増の35.58億円、営業利益が同5.5%増の6.70億円。売上比率56%のリード端子事業は、3%増収、営業利益が前年同期▲0.13億円から1.14億円へ黒字転換。光部品・デバイス事業は、7%増収、営業利益が14%減の5.55億円。
・通期会社計画は、売上高が前期比12.5%増の179億円、営業利益が同16.4%増の45億円、年間配当が同横ばいの30円。総務省は5/23、成長戦略「DX・イノベーション加速化プラン2030」を公表。その中でAI(人工知能)時代のデジタルインフラ整備に関し、安全保障の観点から中核技術・システム競争力の強化と海外展開を進めるとし、海底ケーブルに関して目標シェアを35%と明記した。
名村造船<7014>
・1911年に名村源之助が大阪市大正区にて創業。2008年に函館どつくを、2014年に佐世保重工を連結子会社化。船舶、機械および鉄鋼構造物の製造販売ならびに船舶の修繕が主な事業。
・5/13発表の2025/3通期は、売上高が前期比17.9%増の1592億円、営業利益が同78.7%増の294億円。3月末受注残高は、構成比97%を占める「新造船事業」が同26.8%増の3940億円。中核商品であるハンディ型ばら積運搬船の建造量が増加したほか、原価削減効果が会社想定を超えた。
・2026/3通期会社計画は、売上高が前期比0.8%減の1580億円、営業利益が同28.7%減の210億円、年間配当が同10円減配の40円。為替円高見通しと材料費高騰、次世代燃料船の研究開発やデジタル化(DX)投資増から減収減益を見込んでいる。トランプ米政権が米造船業復活のために日本に支援要請のほか、国内大手商船会社が大規模投資計画を掲げるなど外部環境は追い風だ。
タカラトミー<7867>
・1924年に富山栄市郎がトミーの前身である富山玩具製作所を創設。一方、1955年に佐藤安太がタカラの前身である佐藤ビニール工業所を設立。2006年3月にトミーとタカラが合併した。
・5/13発表の2025/3通期は、売上高が前期比20.1%増の2502億円、営業利益が同32.2%増の248億円。「トミカ」、「プラレール」といった定番ブランドの幅広い年齢・地域への展開が奏功したほか、現代版ベイゴマの「BEYBLADE X」のイベント開催、「デュエル・マスターズ」人気の高まりが業績に貢献。
・2026/3通期会社計画は、売上高が前期比3.9%増の2600億円、営業利益が同11.5%減の220億円、年間配当は同横ばいの64円。ロングセラーブランドを多数保有することから年齢軸・地域軸の拡大を成長ドライバーとしつつ、ブランド価値の知的財産(IP)を活用したライセンスにより玩具外収入の拡大が見込まれる。業界を巡る追い風が続く中、今年2月からの株価下落局面は好機だろう。
※執筆日 2025年5月30日
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