マーケット&北陸経済動向(8/1)【今村証券アナリストレポート】
(1)マーケット動向
7月は世界主要株価指数の多くが上昇した。トランプ氏が大統領に就任してから軟調だった米国株市場においては、米景気の底堅さや米利下げ期待、人工知能(AI)半導体の成長期待などから、ハイテク株に投資マネーが回帰した。ナスダック総合株価指数、S&P500種株価指数が過去最高値を更新し、殊にエヌビディア<NVDA>は世界で初めて時価総額が4兆ドルを超え、その後も堅調に推移している。欧州では景気回復を期待した買いが続き、ドイツ株式指数(DAX)や英FTSE100種総合株価指数が最高値を付けた。中国・上海総合指数は3年半ぶりの高値、香港ハンセン指数は3年8カ月ぶりの高値となり、米中貿易交渉の進展や中国当局の景気対策への期待が高まった。
日本株はトランプ関税や参議院選挙を巡る不透明感が上値を抑えていたが、突如発表された日米関税交渉の合意、石破首相の退陣観測が転機になった。日経平均株価は7月23、24日の2日間で2000円強上げ、昨年7月に付けた最高値(4万2224円)が目前に迫り、東証株価指数(TOPIX)は昨年7月の最高値(2929)を上回った。日本の債券市場では、長期金利が上昇(価格が下落)、10年物国債利回りは同25日に一時1.605%と2008年以来の高水準を付けた。投資家がリスクを取る姿勢を強めたほか、日銀が利上げに動きやすくなったとの見方も広がった。東短リサーチ・東短ICAPが提供する日銀が9月の会合で利上げする確率は23%、10月での利上げ確率は42%だ(7月25日時点)。また、減税など財政拡張的な政策を掲げる政党の影響力が高まるとの思惑は企業業績の改善期待とともに財政悪化懸念をもたらした。
世界主要株価指数の騰落率(昨年末比、7月25日時点)

(注) グラフの上限は年初来高値、下限は年初来安値、数字は年初来高値・安値を付けた月
出所:ブルームバーグデータより今村証券作成
TOPIX業種別騰落率の上位(7月22日比、7月25日時点)

出所:ブルームバーグデータより今村証券作成
日米合意を受けて最も上昇した業種は、輸送用機器だ。米国が交渉の対象外と主張していた自動車関税の引き下げが決まったことがサプライズとなり、日本車メーカーが生産拠点を持つメキシコなどもドミノ的に米国と合意できるのではないかとの思惑も働いた。ただ、自動車業界がトランプ政権発足前に比べて高関税を課されることに変わりはなく、値上げやコスト削減でどれだけ業績悪化を抑えられるか、各社のこれからの取り組みが重要となる。足元で4~6月期の決算発表が本格化しており、経営者のコメントを確認したい。
決算発表予定日

出所:日本取引所グループHPより今村証券作成
米国における注目点は、金融政策だろう。米金利先物の値動きから金融政策を予想する「FedWatch」によると、9月16~17日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)までの利下げ予想確率は64%であり(7月25日時点)、物価や雇用、消費などの経済指標が公表されるたびに金融市場を大きく動かしかねない。
9月開催FOMC後の米政策金利予想確率の推移

出所:CMEのFedWatchツールより今村証券作成
なかでも注目したいのが、米消費者物価指数(CPI)だ。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は関税の影響が「6月と7月の物価指標に表れ始めると思う」との見通しを示している。6月の米CPIは前年同月比2.7%の上昇と5月(2.4%)から伸びが加速したとはいえ市場予想の範囲内に収まった。ただ、①関税引き上げ前に在庫を確保、②関税コストを自社で吸収―といった企業努力には限界があり、8月12日に公表される7月の米CPIで変化する可能性がある。同下旬には国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」が控えており、今後の米金融政策の方向性を探る上で重要な機会となる。
8月の日本株は、短期的な調整を交えながらも上値追いが続くと期待している。
(2)北陸経済動向
足元の北陸経済は緩やかな回復・持ち直し基調にあるが、一部に弱めの動きもみられる。
「個人消費」は堅調だ。5月の商業動態統計小売6業態販売額(全店ベース)は前年同月比5.9%増と39カ月連続で前年同月を上回った。スーパーとドラッグストアの伸びが目立ち、スーパーは飲食料品の値上げ、米価格の上昇が押し上げ要因になり、ドラッグストアは新規出店効果などから好調が続いた。

一方で弱いのが「生産」だ。5月の鉱工業生産指数(速報値・季節調整済)は前月比1.9%増と2カ月連続で上昇したとはいえ、低水準だ。電子部品・デバイス工業はスマートフォン向けや自動車向けの不振、金属製品工業はアルミニウムサッシなどの不振が重荷になっている。回復の兆しがみえるのは、生産用機械工業であり、海外向け中心に堅調に推移し、中部経済産業局による生産用機械工業の判断は「弱含み」から「持ち直しの動き」に上方修正された。



また、日銀金沢支店が発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)によると、全産業の業況判断指数(DI)は前回調査(3月)から5ポイント悪化のプラス5となり、製造業のDIはマイナス2と3期ぶりにマイナスに転じた。さらに先行きDIは全産業、製造業、非製造業ともに悪化を見込む。米関税を巡る日米交渉は合意に至ったものの企業業績やサプライチェーン(供給網)に影響があるため警戒が必要だ。海外景気や為替、国内物価の動向などにも引き続き注意したい。
(参照:日銀金沢支店発表資料「北陸の金融経済月報」、「北陸短観」、国土交通省発表資料、経済産業省及び経済産業省中部経済産業局発表資料、財務省北陸財務局発表資料、内閣府発表資料より今村証券作成)
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※今村証券より提供されたレポートを掲載しています。
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