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海外投資家による期待(ご祝儀)三連発だった10月相場【フィリップ証券】

市況
2025年11月6日 16時00分

「株価は経済を映す鏡」と言われる。投資家は将来の企業業績、および企業業績を左右する大きな要因である景気動向がどうなるかを予想して株式を売り買いすることがその根拠とされる。では、10/31に5万2411円まで上昇した日経平均株価は、日本経済の先行きを正確に映しているのだろうか?一方で、鏡が曇ったり歪んだりすることもある。株価が景気実態と大きくかけ離れた「バブル」の状況になったとき、およびその反動安に見舞われたときは、株価が景気の先行きをうまく映さないこともあるだろう。

最近の日本株の上昇には、日本株市場の売買シェアの約7割を占めている海外投資家の日本経済および日本企業の先行きへの「期待」が表れている。海外投資家による「ご祝儀相場」と言うこともできるだろう。ご祝儀相場のお祭りの下では、あれこれとネガティブなことを考えて期待に水を差すことは、空気を読めない振る舞いとして実際の相場から疎外されがちだ。国会での本格的な論戦などを経て政策の実現可能性を見定めてから「リアリティ・チェック」を行えばいい、今はまだその時ではない、ということだろう。

相場の「ご祝儀」は、①自民党総裁選で高市新総裁が選出されたこと、②自民党と日本維新の会の連立政権誕生と高市首相の誕生、③トランプ米大統領の来日による日米首脳会談の実現――といった政治的イベントの展開に伴い、10月の間に三連発で、AI半導体・インフラ関連や「高市トレード」などに形を変えて、投資家に気前よく振舞われた。高市氏が「アベノミクス」の正統後継者であり、日本初の女性宰相であるだけでも、海外投資家から見れば日本の変化への大きな期待を抱かせるのに十分なインパクトだ。公明党が連立政権を離脱し、「自維連立政権」が誕生したことは、歴代の政権が手を付けにくかった社会保障改革の聖域に切り込むなど、「改革」への意気込みを感じさせた。そして日米同盟の下、米国の信頼に足るパートナーとなるべく、憲法改正を急ぎ、防衛力を拡充するスタンスへの変化を感じさせた。さらに、日米首脳会談・首脳外交、および日米両政府による「日米間の投資に関する共同ファクトシート」の発出等は、海外投資家に対し、日米が「黄金時代」を築くことへの期待を一挙に高めた。

海外投資家は「期待」という「ご祝儀」だけで日本株を買っているわけではない。米国株は個別で見れば圧倒的な成長力・技術力を誇る企業が存在する一方で、米国経済全体としては、雇用への不安など景気のピークアウト懸念がつきまとっている。それに対し、日本経済は慎重ながらも利上げが検討されているように、景気サイクルから見て景気回復の途上にあり、ピークまでの余力が大きいとみられている。景気サイクルの違いから、リスクヘッジの一環として国際分散投資を強化する目的でも、日本株が選好されている。

■基調的なインフレ率の捕捉指標~最頻値と加重中央値は2%を下回る

日本銀行調査統計局は、毎月の全国消費者物価指数(CPI)の公表に合わせて、「基調的なインフレ率」として、刈込平均値、最頻値、加重中央値、上昇・下落品目比率を公表。「刈込平均値」は品目別価格変動分布の両端の一定割合(上下各10%)を機械的に控除した値。「加重中央値」は価格上昇率の高い順にウエイトを累積して50%近傍にある値。「最頻値」は品目別価格変動分布において最も頻度の高い価格変化率である。

総務省が10/24に発表した9月の全国CPI(生鮮食品を除く)は、電気・ガス代の上昇を受けて前年比2.9%上昇と前月から0.2ポイント上昇した。これに対し、刈込平均値は2.1%上昇だったものの、加重中央値が1.4%上昇、最頻値が1.7%上昇と、2%水準を下回っている。

【タイトル】

参考銘柄

双日<2768>

・2003年にニチメンと日商岩井が統合。自動車、航空・社会インフラ、機械・エネルギー・ヘルスケア、金属・資源・リサイクル、化学、生活・アグリ、リテール・消費者サービスの主要7事業を主に展開。

・10/30発表の2026/3期1H(4‐9月)は、収益が前年同期比0.4%増の1兆2403億円、純利益が同2.2%増の452億円。セグメント別純利益は、航空・社会インフラが防衛関連や航空機関連の増加を受けて82%増の105億円、エネルギー・ヘルスケアが省エネ関連の増加を受けて47%増の75億円。

・通期会社計画は、当期利益が前期比3.9%増の1150億円、年間配当が同15円増配の165円。同社は10/30までにオーストラリア産の希少レアアース(希土類)を初輸入。重希土類を中国以外から輸入するのは日本で初めて。今後、国内需要の3割程度を調達する見通し。同社は2023年、豪ライナスに出資。ライナスが生産するジスプロシウムとテルビウムの最大65%を日本に供給する契約を締結。

小野薬品工業<4528>

・1717年に初代小野市兵衛が現在の大阪市中央区道修町にて薬種仲買人として創業。医療用、一般用医薬品等の製造・販売を行う。研究開発活動に注力。がん新薬「オプジーボ」の拡大に努める。

・10/30発表の2026/3期1H(4-9月)は、売上収益が前年同期比7.0%増の2571億円、一時的要因の影響を除くコア営業利益が同7.2%増の700億円。国内では糖尿病、慢性心不全および慢性腎臓病治療剤「フォシーガ錠」が、海外では消化管間質腫瘍治療剤「キンロック」が堅調に伸びた。

・通期会社計画は、売上収益が前期比0.6%増の4900億円、コア営業利益が同1.2%増の1140億円、年間配当が同横ばいの80円。同社はがん領域を重要な戦略分野と位置づけ、開発パイプラインの充実を図るとともに、免疫、神経、スペシャリティ領域を重点領域に定めた創薬研究に注力。研究開発力の高さから見て、予想PER13倍台、PBR1.1倍近辺の株価は割安水準と見る余地があるだろう。

ナカニシ<7716>

・1930年に歯科治療用ハンドピース製造のため東京都で創業後、1945年に栃木県鹿沼市に移転。歯科事業(歯科医療用機器)、DCI事業(米DCI社)、外科事業(骨切削機器)、機工事業を展開。

・8/8発表の2025/12期1H(1-6月)は、売上高が前年同期比1.6%増の391億円、EBITDA(営業利益に減価償却費、のれん償却額を加算)が同6.0%減の103億円。主なセグメント別EBITDAは、歯科(売上比率60%)が5%減の97億円、DCI(同25%)が22%減の12億円、外科(同7%)が27%増の14億円。

・通期会社計画は、売上高が前期比4.7%増の806億円、EBITDAが同7.5%減の189億円、年間配当が同2円増配の54円。6月に閣議決定された政府の「骨太の方針」にも生涯を通じた歯科検診への具体的取り組み推進が盛り込まれる中、高市首相は「健康医療安全保障」を掲げ、国民皆歯科検診の促進に注力。同社は中期経営計画で、予防歯科分野での競争力ある商品の上市を掲げている。

松竹<9601>

・1902年に大阪朝日新聞が、大谷竹次郎とその兄・白井松次郎の演劇興行界での活躍に関し「松竹の新年」の見出しで記事を掲載したことに始まる。映像関連事業、演劇事業、不動産事業を展開。

・10/15発表の2026/2期1H(3-8月)は、売上高が前年同期比25.4%増の496億円、営業利益が同5.9倍の42億円。セグメント利益は、映像関連事業(売上比率56%)が5.9倍の25億円、演劇事業(同26%)が前年同期の▲9.2億円から4.9億円へ黒字転換。不動産事業(同15%)が6%減の28億円。

・通期会社計画を上方修正。売上高を前期比15.5%増の970億円(従来計画950億円)、営業利益を同2.6倍の43億円(同31億円)とした。演劇事業は、映像関連のライバルである東宝<9602>が公開した映画「国宝」のヒットで歌舞伎への注目が高まる後押しを得た。歌舞伎は、「国宝」効果で新規顧客が増加したことに加え、強力な演目ラインアップ、早期の演目発表、若手役者の台頭も業績に寄与した。

※執筆日 2025年10月31日

フィリップ証券
フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
(公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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