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利上げと「年収の壁」引上げ、赤字国債、農業関連【フィリップ証券】

市況
2025年12月24日 15時30分

 日銀は12/19、金融政策決定会合で政策金利を0.5%程度から0.75%へ引き上げた。事前に植田総裁の地ならし的な発言などがあったこともあり、予想通りと受け止められて為替相場は円安ドル高が進んだ。日本経済新聞社のモデルによれば、内閣府が11/17に公表した国内総生産(GDP)速報値を織り込んだ予測を基にして、2025年度の実質成長率は0.9%、26年度は0.8%の見通しとされている。実質GDP成長率が政策金利を上回っている間は経済への波及を通じた株価への影響は限定的と考えられる。

高市首相による台湾を巡る発言を契機とした日中の対立によって中国・香港からの訪日客によるインバウンド消費額が減少し、実質GDP成長率の低下につながるのではないかとの懸念は残る。一方で、自民党と野党の国民民主党が12/18、所得税の非課税枠「年収の壁」を178万円に引き上げると合意したことは、中間層への減税効果が大きいことから経済へのプラスの効果が期待される。さらに、政府・与党は26年度税制改正で直近2年間の消費者物価指数(CPI)の伸びに連動させ、2年ごとに基礎控除と給与所得控除を引き上げるようにするとしたこともあり、物価上昇の影響を除いた実質ベースでの消費拡大に向けて好材料だろう。為替の円安傾向が反転して物価上昇が落ち着けば消費・小売関連銘柄への見直し余地も出てくるだろう。

2026年は、赤字国債の発行を認める特例公債法案を提出する年である。赤字国債の発行期間の期限は5年間とされ、法案が通らなければ赤字国債を発行できない。与党が参院で多数を持たないため高市政権は難しい政局運営を強いられるかもしれない。難局を乗り切るために高市首相が衆院の解散総選挙に打って出る可能性も残る。

最近はドラマ人気もあり中央競馬への注目が高まっている。JRA(日本中央競馬会)が主催する中央競馬は、馬券売上の約1割が国に納められるほか、払戻金などを除いた残額を元にした事業の利益の半分が国庫に納付される。農林水産省は12/11、国に納められたJRAの収益を農業振興にも活用できるよう法整備を検討すると表明。2029年までの構造転換集中期間で2.5兆円程度を農地の大規模化などに振り向けるとし、来年の通常国会への法案提出を目指している。スマート農業の推進や農産物の輸出強化も図り「稼げる農業」を実現する方針だ。競馬人気が高まって馬券の売上が伸びることで、農業の強化に使える金額も増えるという構造ができ上がりつつある。農業関連銘柄も有望だろう。

2022年11月末に生成AI(人工知能)のChatGPTが公開されて以降、株式市場はAI関連銘柄への買いを中心に堅調に推移。3年が経過し、AI相場もハード・インフラから「AIエージェント」などソフトウェア側に移行していく可能性を考えておきたいところだ。

■金に続く銀・プラチナの価格高騰~インフレ再燃ならば銅・原油が後追いも

CMX(COMEX)金先物価格の12/12終値は昨年末比で約64%上昇。同じ貴金属でCMX銀先物は112%上昇、CMXプラチナ先物は94%上昇と、金先物の上昇率を上回った。銀とプラチナは安全資産としての投資需要に加え、景気連動の産業需要が価格を押し上げている。銀は太陽光パネルやAIデータセンター向け、プラチナは自動車触媒や水素エネルギー向けの需要が高まっている。銅についても電力インフラ需要拡大と米国のトランプ関税対応による在庫急増が他地域の供給をひっ迫させている。

他方、原油先物はロシアとウクライナの和平交渉など地政学リスク低下期待から売られているものの、ウクライナ復興需要期待に加え、インフレ時に上昇しやすいことから投資好機の面もあるだろう。

【タイトル】

参考銘柄

SHIFT<3697>

・2005年に東京都渋谷区にて設立。ソフトウェアテスト関連、ソフトウェア開発関連、その他周辺の3サービスを展開。テスト実行を担うテストエンジニアに関して、独自の「CAT検定」適性評価に特色。

・10/14発表の2025/8通期は、売上高が前年同期比17.3%増の1298億円、営業利益が同48.3%増の156億円。ソフトウェアテスト関連(売上比率65%)は18%増収、粗利益率が3.4ポイント上昇(36.8%)、ソフトウェア開発関連は15%増収、粗利益率が1.1ポイント上昇(26.1%)と堅調に推移。

・2026/8通期会社計画は、売上高が前期比15.5%増の1500億円、のれん償却やM&A諸経費等を含む調整後営業利益が同13.4%増の200億円(年間配当は無配)。「AIエージェント」普及の影響への懸念と信用買い残整理もあり、12月に6月高値から約半値の水準まで下落。AIが生成するソフトの増加はテスト需要の増加につながるほか、信用取引の高値期日の経過も注目点となる。

ラウンドワン<4680>

・1980年設立。ボウリング、アミューズメント、カラオケ、スポッチャ(スポーツをテーマとした時間制施設)等を中心に、地域密着の屋内型複合レジャー施設の運営を行う。2008年に米国に進出した。

・11/7発表の2026/3期1H(4-9月)は、売上高が前年同期比6.9%増の919億円、営業利益が同7.4%増の149億円。地域別売上高では、国内(売上比率54%)が6%増の536億円、米国(同41%)が9%増の375億円。9月末店舗数は、日本が2店減の98店舗、米国が5店増の57店舗となった。

・通期会社計画を下方修正。売上高を前期(国際会計基準への変更前)比6.6%増の1887億円(従来計画1931億円)、営業利益を同14.8%増の301億円(同312億円)とした。米国における出店スケジュール遅延と為替動向を反映。年間配当は同2円増配の18円と従来計画を据え置いた。同社は米国で今後年10-20店舗ずつオープンする計画。日本のコンテンツの発信拠点として成長を見込む。

鎌倉新書<6184>

・1984年設立。仏壇仏具業界向け出版から開始。現在は「葬儀」、「仏壇」、「お墓」ごとにユーザーと取引先をつなぐプラットフォームを運営する「終活事業」、および「終活関連書籍出版事業」を営む。

・12/11発表の2026/1期9M(2-10月)は、売上高が前年同期比23.2%増の60億円、調整後EBITDA(利払前・税引前・償却前利益)が同52.1%増の11億円。主な収入内訳は、お墓が10%増の18億円、葬祭が13%増の10億円、官民協働事業が43%増の7億円。少額保険が新規に7億円を計上。

・通期会社計画は、売上高が前期比21.8%増の86億円、調整後EBITDAが同25.8%増の14.4億円、年間配当が同横ばいの20円。同社は12/18、SOMPOホールディングス<8630>と資本・業務提携契約を締結すると発表。第三者割当増資と自社株買いによりSOMPOの議決権比率が10%となる。SOMPOの顧客へサービスを展開できる点に加え、SOMPO側も出資比率拡大可能性が見込まれる。

クボタ<6326>

・1890年創業、1930年設立。産業機械、建築材料、鋳鉄管、産業用ディーゼルエンジンのメーカー。農機、鋳鉄管ともに国内首位であり、農機は世界でも3位。環境関連製品を国内外で強化中。

・11/7発表の2025/12期9M(1-9月)は、売上高が前年同期比3.2%減の2兆2042億円、営業利益が同22.2%減の2146億円。機械部門は、国内売上高が13.5%増の2661億円、海外売上高が6.8%減の1兆6611億円。北米の建設機械で前年の在庫充足の反動が表れた。水・環境部門は6.8%増収。

・通期会社計画は、売上高が前期比4.5%減の2兆8800億円、営業利益が同30.3%減の2200億円、年間配当が同横ばいの50円。トランプ米政権は12/8、米国内の農家支援のために120億ドルを拠出すると発表。農家の経営を安定させることで一般家庭の食料価格引き下げにもつながると強調。国内では、水道管老朽化対応の鋳鉄管や農業生産性向上につながる農機の販売増が見込まれる。

※執筆日 2025年12月19日

フィリップ証券
フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
(公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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